表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
59/71

59.幸せになれる距離感

暴走している感がなんとも。

路線復帰できるかな

~~ 妹Side ~~


玲奈さんの話を聞いて、改めて玲奈さんは今もまだお兄さんの事が好きなんだなって思いました。

だって話をしてる間、表情がコロコロ変わってお兄さんとの思い出を嬉しそうに、そしてちょっぴり切なそうに話すのですから。

でもそれならなぜ別れてしまったんでしょう。

確かにお兄さんの血だらけな姿はショックだったかもしれないですけど、それも自分を助ける為ですし別れる理由にはならないと思うんですけど。

それとも今話してくれたこと以上に重大な何かがあったのでしょうか。


「あの玲奈さん。

普通命がけで助けられたら惚れ直す事はあっても嫌いになることはないんじゃないかなって思うんですけど、どうして別れちゃったんですか?

お兄さんの事が嫌いになった訳じゃないですよね?」

「まぁそうね。彼のことは今でも好きよ。

ただ、あのまま付き合っていたら、きっと近い将来お互いが不幸になる未来が待っていたわ。

私って昔から何かと運が悪いというかトラブルに巻き込まれやすい方だしね。

実際に別れた後、あの事件ほどでは無いけど小さなトラブルは何度かあったし。

それで例えば私を庇って彼が死ぬようなことがあったら私は正気で居られる自信は無いわ。

ましてや逆に彼に愛されたまま私が彼の目の前で死ぬようなことがあったら彼は今度こそ廃人になってしまうかもしれない。

そう考えだしたら怖くなったのね」


怖くなった、か。確かに自分に当てはめてみたらよく分かります。

もし私と一緒にいたらお兄さんが不幸になるのだとしたら。

もし私のせいでお兄さんが大怪我を負ったら。

それこそ私の目の前でお兄さんが死んでしまったら……多分私は死ぬまで後悔しながら生きていくことになると思います。

……そっか。

だから玲奈さんは逃げちゃったんですね。

それなら私はどうすれば良いのでしょうか?

私だって両親を事故で亡くしてますし、その原因は分かっていません。

もしかしたら今度は私やお兄さんにその禍が降りかかる可能性はゼロではありません。

人為的なものではない分、予測も回避も難しいでしょう。

なら私もお兄さんから距離をとった方が良いでしょうか。


「あ、ごめんなさいね。

彼と一緒に居るなら知っておいた方がいいと思って話したけど、別に万里さんに彼と距離を取れって言いたい訳じゃないの。

むしろあなたは彼と一緒に居てくれたほうがいいと思うわ」


多分私の不安が顔に出たんでしょう。

玲奈さんは慌てて手を振りながら言いました。


「良いんですか?」

「ええ。先日見た彼はすごく幸せそうだったもの。

きっと彼は明確に守れる対象が出来て精神が安定したんだと思うわ」


守られる対象。

そうですね。確かに私はお兄さんにとって保護対象であって、恋人や対等のパートナーではありません。

それで、ほんとうに良いのでしょうか。

今のままでは結局お兄さんは傷ついたままになってしまいます。

お兄さんはそれで幸せになるんでしょうか。

私としては玲奈さんみたいにお兄さんのことを理解している人こそお兄さんには必要なんじゃないかって思うんですけど。


「玲奈さんはやっぱりお兄さんとよりを戻す気はないんですか?」

「そうね」

「でもお兄さんもまだ玲奈さんの事が好きなままだと思うんです。

玲奈さんが居てくれればお兄さんも喜んでくれると思います」

「ありがとう。でもやっぱり無理よ。

私じゃあきっと彼を過去に引き戻してしまうから。

それはきっと私の為にも彼の為にもならない。

それにきっと一緒に居なくても彼を応援することはできるから」


そういうものなんでしょうか。

私なんかはやっぱり一緒に居たいなって思ってしまうのですが。

大人になると色々あるってことなのかな。

と、その時玲奈さんの携帯電話の着信音が鳴りました。


「ちょっとごめんなさいね」

「はい、どうぞ」


私に一言断りを入れてから玲奈さんが通話ボタンを押すと携帯から元気な明るい声が聞こえてきました。


『ママー♪』

「は~い、ママよ~」


ま、まま!?

玲奈さんもさっきまでとは打って変わって猫なで声になってます。

え、あ、あぁ。そういうことなんですね。

そうですよね。

玲奈さん綺麗ですし、4年もあれば彼氏の10や20出来るだろうし、結婚だってしててもおかしくないですよね。

確かにそれならお兄さんとよりを戻すってことは無理ですよね。

楽しそうに話す玲奈さんは完全にお母さんモードになっていて、さっきまでとはまた違った魅力があります。

女は結婚と出産を切っ掛けに生まれ変わったかのように性格が変わるって以前雑誌で読んだことがありますが、玲奈さんの変化っぷりを見ると間違ってはいなさそうです。


「じゃあママ、もう少ししたら帰るから美護(みもり)ちゃんも良い子で待っててね~」

『は~い』


5分程話し込んだ後、玲奈さんは電話を切りました。


「お子さんがいらっしゃったんですね」

「子供の成長って早いわよね~。

ついこの間幼稚園に通うようになったばかりなのに、携帯電話の扱い方とかマスターしてるのよ。

それともうちの子が天才なだけなのかしらね~」

「あははっ。みもりちゃんって言うんですね。今おいくつなんですか?」

「4歳よ」

「じゃあ可愛い盛りですね!」

「そうなのよ~。もう今朝もね!……っといけない。あの子が待ってるから帰らないと。

今日は私の話ばかりでごめんなさいね。次は最近の彼の話も聞かせてくれると嬉しいわ」

「あ、はい。是非」


玲奈さんは私に微笑みかけて帰っていきました。

それにしても子供かぁ。

私はまだ子供どころか結婚も恋愛もまだですから、まだまだずっと先の話ですね。

でもゆくゆくは私も好きな人の子供を産んでお母さんになるんでしょうね。



~~ 兄Side ~~


その日の俺は自然公園へと散歩に来ていた。

今日は天気も良いし冬にしては気温も高めなので絶好の散歩日和だ。

俺以外にも公園には家族連れやお年寄りをよく見かけた。

今度万里を連れて遊びに来るのも良いかもしれないな。あ、でも最近の若い子はカラオケとかボーリングとかの方が好きだろうか。

ま、誘ってみて嫌そうだったら考えよう。


ぽんっ

「ん?」


足に何かが当たったと思ったらボールだった。

どうやら近くで遊んでた子供のものみたいだな。

3、4歳くらいの小さな女の子がこっちにトテトテと走ってくるのが見えた。


「おじちゃ~ん。ボール取って~」

「おじ、ちゃん……」


ま、まぁあれくらいの子供から見たら俺なんておじちゃんか。

俺は気を取り直してボールを拾うと女の子のところまで持って行ってあげた。


「はい、どうぞ」

「ありがとう、おじちゃん」


嬉しそうにボールを受け取る女の子。

ふと周りを見ればこの子の保護者であろう老夫婦がこっちを見てニコニコしている以外に近くに子供はいない。

どうやらこの子ひとりで遊んでたみたいだな。

よし、それなら。


「おじょうちゃん、お名前は?」

「わたし、みもり~」

「よし、じゃあみもりちゃん。良かったら一緒に遊ぼうか」

「いいの~?やった~!!」


素直に喜ぶ子供を見ると思わずほっこりしてしまうな。

老夫婦の方に軽く会釈を送ると、向こうも嬉しそうに会釈を返してくれた。

そうして俺はみもりちゃんと陽が傾きだす頃まで一緒に遊ぶのだった。


「じゃあね、おじちゃん。またあそんでね~」

「あ、ああ」


いかん。

子供の無尽蔵の体力を甘く見ていたかもしれない。

ボール遊びに始まって肩車にお馬さんと色々やったお陰でもう体力の限界だ。

俺はベンチに腰掛けながらじっくりと足腰を解すことにした。

うーん。明日は筋肉痛だな、これは。

しかし、みもりちゃんか。

連絡先を交換してまた遊ぶ約束をしてしまったが、最近の子供はあの年で携帯電話を使いこなしてしまうのか。

あ、そうだ。これなら幼児向けの防犯グッズももう少し改良を加えても良いかもしれない。

それなら今度サンプルが出来たら試しに使ってみてもらうのもいいな。

まぁその場合はご両親の許可を取ってからになるだろうけど。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ