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51.手紙の内容よりも注意すること

何とか間に合いました。

~~ 兄Side ~~


万里から渡された2通の手紙。

宛先だけで何となく内容は理解出来るけど一応ちゃんと読んでおくか。

まず『保護者宛て』と書かれた方だけど、うーん、長い。

便箋4枚あるんだけど、要約すると。


『お嬢さんの私生活について確認とお伝えしたいことがありますので一度学校までお越しください』


だそうだ。

ちなみに残りの内容は愚痴と言えば良いのか不平不満と、このままでは万里が大変なことになるぞという半ば脅迫じみた内容だった。

そう言えば先日「今すぐ連絡しないと大変なことになりますよ」って言いながら連絡した人の個人情報を悪用する犯罪が流行っているとニュースでやっていたな。

この妙に癖のある字はあの先生のものだろうけど、案外あの人そっち方面の仕事が向いてるのかもな。

そしてもう1通。

こっちは文章は短いな。それでも便箋2枚だけど。内容は、


『その子から手を引け。さもなくば警察に通報するぞ』


要約するとそういう事らしい。

完全に犯罪者扱いだ。

あと手紙の他に写真が数枚同封されていた。

1つは朝、万里がこのマンションを出てすぐの所を撮影されたようだ。

しかし写真のアングルから考えてかなり上、例えば木の上とか塀に登って撮影したように見える。

実際そんな怪しい奴が居たら万里も気が付くだろうから、恐らく隠しカメラの類だな。

もう撤去されている可能性もあるけど念のため明日の朝確認しておくか。

残りの写真は万里が隣の男性と腕を組んだり繋いだりしているところを撮られている。

ただいずれも後ろ姿なのとそれなりに距離があるのか間に何人も人が居て男性側は良く見えない。

ぱっと見ただけでは俺だと断定するのは難しいな。

一通り確認を終えたところで万里が恐る恐る聞いてきた。


「あの、お兄さん。それで、どうでした?」

「うん、まぁ簡単に言うと保護者と面談がしたいから今度学校に来てくださいだとさ。

今週はちょっと厳しいから来週の火曜日の放課後に伺うと伝えておいてもらえるか?」

「はい、わかりました」

「あと手紙の内容から察するに、今日の警察沙汰も先生か先生の手の者が通報したとみて間違いないだろう」

「やっぱり……」


やっぱりってことは万里も薄々気付いていたんだな。

そしてそれはつまり今日ただ手紙を渡されただけじゃなく色々と言われたって事だろう。


「万里、この手紙を渡されたのってどこでだ?」

「職員室、ですけど」

「そうかぁ」


頭を抱える俺を不思議そうに見つめる万里。

いやまあそれが普通か。

俺から言わせれば職員室なんていう人通りの多いところで話をしてほしくなかったなって思ってしまう。

職員室だと教師以外にも何かの用事でやってきた生徒がいる可能性は高いし、もし仮にその生徒が噂好きで断片的に聞こえてきた話から自由な妄想で話を膨らませたりして周囲に言いふらしていたりすると目も当てられない。

せめて準備室なんかの小部屋であれば誰かが聞き耳を立てている心配もなかったんだけど。

ま、この先生に期待する方が無理か。


「しかし不思議なのは、ちょっと調べれば俺の身元くらいは分かるはずなんだよ。

そこから俺が万里の保護者だって事も簡単に結びつくと思うんだ。

そうしたら万里が若い男性の保護者と2人暮らしなのは大丈夫なのか?って話にはなっても、間違っても保護者の元を離れて身元不明の男性の家に泊り込んでるとかいう話にはならないはずなんだ」

「あ、そう言えば先生。探偵に調べさせたとか言ってたような」

「どこの3流探偵だよ。昔マンガでやってた居眠り探偵だってもうちょっとマシな調査するだろうに」


この中途半端な写真もそのヘボ探偵の仕業か。

せめて俺の顔がちゃんと写っているのが1枚でもあればあの先生も気付きそうなものなのに。


「家の方は2度と警察に間違って通報されないように俺の方で手を打っておくよ。

問題は学校の方だな」

「今度は何が起きるんですか?」


俺の言葉に万里は興味半分、疑い半分って感じの目をしている。

まあそれでいい。

俺の話を鵜呑みにする必要は無いし、変に警戒して逆に悪いものを呼び寄せるなんてこともあるからな。

そんなこともあるかもしれない。あったらどうしようか。と事前の心構えが多少出来ているだけで実際に問題が起きた時の反応速度は段違いだからな。


「一番程度が軽くてありそうなのは噂話だ。

職員室で話してた内容を小耳にはさんで他の人に話した結果、尾ひれがついて、そうだな『不純異性交遊をしている』とか『パパ活してる』とかな。

それが更に曲解されると『1万円でやらせてくれる』になるかもしれないし、もしかすると一緒にいる恵里香達もそのお仲間と言われるかもしれない」

「うわぁ、それは嫌ですね」

「だろう?それに噂話で止まれば良いんだけどな。

問題はその噂を信じて実際に金を持ってくる男子が居た場合だ。

中学生でそんなにお金が動くとは考えにくいけど、例えば兄弟が高校生や大学生でそっちに話が広がって、帰り道で声を掛けられる危険性はある。最悪車に連れ込まれたり人気のない場所に連れ去られる可能性もあるな。

まぁそこまで行くと誘拐なんだが、頭のねじが外れた奴らは無視してやるだろう」

「そ、その場合はどうすればいいんですか?」

「万里の場合はエルが居るからな。単純に拒絶し続ければいい。その間に警備会社の人が駆けつけてくれる」

「は、はい!」


誘拐と聞いて若干万里の顔が青くなっている。

それだけ真剣に聞いているという事だから良い事だ。

これで実際に起きた時も頭が真っ白になって動けない、なんてことは無いだろう。


「エル、分かっているな?」

『勿論です。危険な状態を察知した場合、ただちに警備会社に連携します。

ご友人方についても警戒を強化しますか?』

「ああ、そうしてやってくれ。期間は最低1か月。噂が流れているようなら3か月は様子を見てくれ」

『かしこまりました』


俺とエルのやり取りを聞いて不安そうにしている万里の頭に手を置いて安心させるように2,3回撫でる。


「まぁ色々言ったけど、最悪のケースになる可能性なんて1,2%で、噂話すら立たない可能性の方がずっと高いから大丈夫だ」

「はい」

「俺は職業柄、常に最悪の場合を考えるのが癖付いてるだけなんだ」


俺の立てた予測なんてものはほとんどが空振りだし、それで良いと思っている。

ただそれでも本当にごく僅か当たることがあるからな。

世界中の誰もが気にしてなくても俺一人くらいは馬鹿みたいに警戒しておきたい。

それで悲しみが回避できるなら笑いものにされても安いものだ。



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