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49.三流探偵が金をケチられた結果

タイトルが本編の補足になっている件。

~~ 妹Side ~~


10月に入り季節は夏から秋へと移り変わり、北海道では早くも紅葉が見ごろになっているとニュースで言ってました。

北海道かぁ。そう言えばお兄さんのお祖母さんが北海道出身なんでしたっけ。

本場のザンギの食べ比べとかしてみたいですよねぇ。

ちなみにお兄さんも北海道には1度しか行ったことが無いそうです。

それも会社の出張だそうで、あまり自由には動けなかったとか。

私が行くとしたら高校の修学旅行とかでしょうか。つまり約3年後。だいぶ先ですね。

ここ最近は気候も穏やかですが、学校生活も特に目立ったこともなく平和そのもの。

人によっては退屈という人も居ますけど、平和なのは良い事です。

月の終わりごろに体育祭がありますが、特に運動に力を入れている訳でもない私達にはちょっとした気分転換程度のイベントです。

だから今日は学校が終わったら夕飯何が良いかな~なんて考えていた所に突然先生から職員室に呼び出されたので驚きました。


「水元先生。何かご用でしょうか?」

「用があるから呼んだんです」


それもそうですね。ちょっときつい口調なのは気になりますが。

それにしても、2学期に入ってから先生が私を見る目が段々険しくなっているように思えます。

あの事故があった時には私の事を凄く心配してくれていたはずなのですが今はその影は微塵もありません。

いったい何があったのでしょうか。


「坂本さん。私はずっと待っていたんです」

「は?何をでしょうか」


突然何のことでしょうか。

別に先生に何かをするように言われた記憶はありませんし、待ち合わせなんかもしてないですよね?


「あの不幸な事故があってから、あなたがみんなの前では気丈に振る舞っていても、精神的にはかなり辛い状態だったのでしょう。

深い悲しみに苛まれたあなたが安易な快楽に溺れ現実から逃げてしまったのも決してあなたが悪いわけでは無いことはよく分かっています。

もっと早く手を打てていればあなたを救う事も出来たのかもしれませんがもう手遅れなのでしょうね」

「は?」

「ですがそうなる前に、どうして一言私に相談してくれなかったんですか!」


先生は一人興奮気味に捲し立ててくるけど、いったい何のことをいってるのかさっぱり分かりません。

最初の事故のこと以外は誰か他人の話をしているようにしか思えないのですが。

手遅れとか言われても別に病気になった訳でもありませんし。


「あの先生。仰ってることが分からないのですが」

「ええ、ええ。あなたが口止めされているのはよく分かっています。

こちらも色々と手を尽くして調べさせて頂きましたから。

あなたの現在の境遇は将来にとって非常によろしくありません。

それにこのまま放置していたのでは周囲のお友達にも被害が及ぶことでしょう。

警察に通報して保護してもらうという案もありましたが、無暗に警察沙汰にすればそれこそあなたの人生に消えない傷を残しかねないという事で、今はまだ控える事にしました。

その代わりこの手紙を持って行ってください」


先生はそう言って2通の封筒を差し出してきました。

1通は『保護者様へ』となっていますがもう1通は宛名がありません。


「1通はあなたを保護されたご親戚の方に渡してください」

「はい。で、もう1通は?」

「……夏休み以降、あなたを束縛している人宛てです」

「は?」

「調べさせてもらったと言ったでしょう?

正確な時期は分かりませんが、あなたが夏休みの頃から一人暮らしの男性の家に泊り込んでいるのは分かっているんです。

その手紙はその人宛てです。

それを読んで悔い改めないようなら今度こそ法的措置を取ると伝えておいてください。いえ、言わなくてもその手紙に書いてあるので大丈夫です」

「はぁ」

「話は以上です」


終始先生の言っている意味がよく分かりませんでしたが、先生の様子から質問してもまともな回答が返ってくる気がしなかったのでそのまま帰宅することにしました。

家に着いてから改めて考えてみますが、私を保護した親戚の人ってお兄さんですよね?

で、私が泊まり込んでいるのって夏休みどころかその前からずっとここです。なので先生が言っていた私を束縛している人っていうのもきっとお兄さんの事なんでしょう。

……私全然束縛されてないですけど。


ピンポーン♪

「え?」


玄関のチャイムが鳴りました。

ふっと思わず玄関の方を見てしまいましたが、私の腰は椅子に座ったままです。

だって以前お兄さんから出なくて良いって言われてますから。


ピンポンピンポーン♪


しつこいですね。

普通2回鳴らして出て来なかったら居ないと判断すると思うのですが。


ピンポーン♪

ドンドンドンドンッ!!

「警察だ!中に居るのは分かってるんだ。開けなさい!」


ええっ!?

なんで警察がこのタイミングで来るんでしょうか。

まさか先生、さっきは警察沙汰にしないって言ってたのにやっぱり呼んだってことですか!?

でも警察なら出ないとまずい……


『マイシスター。出る必要はありません』


腰を上げようとした私をすかさずエルちゃんが止めに入りました。


「でも良いの?」

『はい。大丈夫です。

私の方で警察と警備会社に通報しましたので、もう間もなく担当者が駆けつけるでしょう。

本当に何か問題がある場合はそちらを通じて連絡が来る手筈になっています』


エルちゃんの言葉の通り、警備員さんとかが来たのでしょう。少ししたら外が騒がしくなりました。

それが静まったかと思ったら今度は携帯電話が鳴りました。

えっと、あっ、お兄さんからですね。よかった。


「はいもしもし」

『もしもーし。万里。元気か?俺だ。

今警備会社から連絡を受けたんだけど、警察が家に来てるみたいなんだ。

万里は今家に居るのか?特に変わった事とかはあるかい?』


携帯越しに聞こえてきたお兄さんの声はいつも通りでほっとしました。

さっきからドキドキしっぱなしの心臓も少しは落ち着いた気がします。


「はい、今は家に居ます。変わった事と言ってもチャイムが鳴らされたことくらいです。

あ、言われた通り出なかったんですけど、良かったんですよね?」

『ああ、それで正解だ。良く出るのを我慢したな。

表の警察はすぐに引き上げるから心配しないでくれ』

「はい」


お兄さんの言葉の通り、それからすぐに窓の外にパトカーが去っていくのが見えました。

あ、結局警察が来た原因って何だったんでしょう。

夜にお兄さんに聞いてみようかな。



~~ 先生Side ~~


放課後に呼び出した坂本さんは、結局最後まで本当の事を言ってはくれませんでした。

可哀そうな子。

雇った探偵からの情報によれば、調査を開始した時からあの子はずっと単身赴任用の1DKマンションに通っているそうなのです。

その前については確認が取れていないと。追加料金を払えば調べるそうですが、重要なのは今の状況なのでそこまでする必要は無いでしょう。

親戚のご家族と暮らしているのであれば1DKの筈がありません。せめて2LDKないし3DKのファミリータイプのマンションのはず。

……まさかあの以前保護者だと言ってやってきたあの男。

実際には保護者の息子か甥なのでしょうが、あいつが坂本さんを囲っているのかもしれません。

いいえ、きっとそうに違いありません。

初めて会った私に対して見下したような冷めた視線を忘れてはいません。

なにが『あの子は確かに不幸がありましたが【可哀そうな子】ではありません。そんな憐れむ視線であの子を見ないでください』ですか。

突然ご両親を失った子が可哀そうではないなどと良く言えたものです。

全く汚らわしいケダモノのような男です。

孤児となったことを良い事に、口では言えないようなことをしてあの子を逆らえないようにしているに違いありません。

もしかしたらあの腕の装置も防犯グッズと称してその実ただの監視装置なのかもしれないですね。

それなら確かに私に本当の事を語ることも出来なかったのも頷けます。


さて、あの子の動向ですが、ご親戚の家に行くならよし。

ですがあの男の元に向かったとなるともう猶予はありません。

あの男が手紙を見て自首することはないでしょう。

なら次の行動は坂本さんを監禁するか、坂本さんを連れてどこか私達の手の届かない場所に引っ越すか。

いずれにしてもすぐに警察に連絡して保護してもらう必要がありますね。



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