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48.街中の休憩所です

~~ 兄Side ~~


さて、無事に戦場もとい喫茶マンゴスチンを出てきた俺達だったけど、どうやら本日の苦難はまだ終わっては居なかったようだ。


「うぅ~~」

「大丈夫か?」

「な、なんとか」


お店を出て少ししたところで万里がお腹を抱えて苦しみだしたのだ。

原因は間違いなくさっきのかき氷を慌てて食べたせいだな。

今日はかなり暑かったのに一気に氷で冷やされたら、そりゃあお腹を壊しもする。

午前中はだいぶはしゃいでたから軽い熱中症にもなってるかもしれない。

まぁそれだけなら数時間横になって休めばある程度は回復出来るだろう。

回復しなかったら改めて病院だな。

問題はここから家まで1時間近くかかるって事だ。

こんなに苦しそうな万里を1時間も我慢させるのは忍びない。

とすれば近くのホテルで部屋を借りるのが良いか。

と、思ったんだけど。


【ホテル ワシントン:ご休憩一律4500円】

【ホテル にゃんにゃんパーク:ご休憩3500円~】

【ホテル ハートフル:ご休憩3700円~】

……


って、どれもラブホテルじゃねえか!!

なんで普通のホテルが無いんだよ。


「うっ。おにい、さん?」

「ああ、心配しなくていい。すぐに休めるところに連れて行ってやるからな」


仕方ない。

世間体なんかより万里の安否の方が優先だ。

ラブホテルなんて言ってもちょっと普通のホテルよりベッドが大きいだけだ。

特に疚しい事をする訳でもないし。

それに普通のホテルと違ってカウンターで面倒なやり取りがないと思えば良いだろう。

俺は色々と言い訳を並べつつ手近なところにさっさと入ることにした。

部屋の内装は……よし、奇抜ではない。

特に変なビデオが流れてることも無いっと。

俺は辛そうな万里を抱きかかえるとそっとベッドに横たえた。


「すぐタオルを濡らして持ってくるからな」

「あい」


洗面所にあったタオルを濡らして万里のおでこに乗せてあげると、気持ちよさそうに目を細めた。


「大丈夫か?ほかにして欲しい事はあるか?」

「うん。あ、スカート。このままだと皺になっちゃう。脱がして~」

「あーはいはい」


どうやら体調が悪くなって駄々っ子モードが発動しているようだ。

お陰で俺も完全に『保護者』という意識に切り替わった。

そうなればもう万里の下着姿だろうと裸だろうと見ても眉一つ動くことはない。


「うっ、お兄さんトイレ」

「あいよ」


お腹を壊したのなら下痢のひとつもなるのは仕方ない。

俺は再び万里を抱え上げるとトイレに連れて行った。

と言っても便座に座らせたら俺は外に出てベッドのところまで離れた訳だけど。

保護者であってもトイレの世話はきっとされる方が恥ずかしいからな。

15分後にベッドに戻った万里は結局2時間ほど睡眠をとってある程度回復してくれた。


「もう大丈夫なのか?」

「はい。ご迷惑をお掛けしました」

「胃の辺りとかわき腹がズキズキ痛むとかも無いか?」

「はい、大丈夫です」

「よし。なら後は家に帰って今日はもう安静にしている事」

「わかりました」


素直に頷く万里を連れてホテルを後にした俺達。

サッと周囲を確認しても特に俺達を気にしてる人居ないな。よし。

こういう時は何食わぬ顔で立ち去るのが一番安全だ。

って、あれ?何か違和感が。ってそうか。

今日は朝からずっと万里が腕に抱き着いてたからな。


「万里、ほら」

「えっ?」

「腕。まだ体調も万全じゃないだろうし、しっかり掴まってなさい」

「あ、はい。えへへっ」


体調を崩して俺に迷惑を掛けたと思って遠慮していた万里がうれしそうに俺の手を取った。

よしよし。これで万里にとっても今日はお腹を壊した嫌な一日、ではなく、俺と一緒に出掛けた楽しい記憶になってくれるだろう。


「あの、お兄さん」

「ん?」

「今日はすみませんでした。色々と我儘言ってしまって」

「なに。妹に甘えられるのも兄の醍醐味ってやつだろ」


大人になろうと背伸びをする妹を支えるのも兄の役目だし、危なっかしいところを守るのも兄の務めだ。

まだまだこの役を他の奴に明け渡すのは勿体ない。

って、これは兄というより父親っぽくないか?

というか、そういうことを前にも考えた気がするな。

やばい。まだ老け込むには早すぎるだろっ。

そんなアホな事を考えつつ、途中にあった帽子屋でキャペリンと呼ばれるつばの広い帽子を買ってあげた。

これで多少日差しが強くても熱中症になりにくいだろう。

万里もおニューの帽子を着けて鏡の前でポージングしては笑ってるから喜んでくれたみたいだ。

ま、デートとしてはプレゼントも出来て笑顔で終われたので我ながら100点だろう。


それと後日。

歯の治療を終えたゆっこ達と改めてあの店のかき氷を食べに行くことになった。

あの店員さんと目が合うと笑顔の中に『まさかハーレムプレイかこのクズ野郎』という蔑みの感情が窺えたのできっちり説明しておくことにした。


「へっ、本当に妹様なんですか?

すすすみません。てっきりそういうプレイを楽しんでいるのだとばかり。

今日も妹様とそのご友人の保護者的な付き添いだったんですね。

はい。はい。もちろんメニューは普通のものを用意させて頂きますので、どうぞごゆっくり」


あたふたする店員さんを見送った後、今度こそ普通のかき氷フェアのメニュー表を受け取った俺達はゆっこお勧めのを頼んだんだけど。

……5人居るのに1つしか頼まなかったから変だと思ったけど、出てきたのは山のようなかき氷。

このお店はフードファイト専門なのか?

流石に今度は前回の二の舞を踏まないように、きっちり皆に無理して食べないように注意する俺だった。



~~ ??Side ~~


……

『〇月〇日 16:05 ラブホテルに入る』

『〇月〇日 18:51 ラブホテルを後にする』


「しかも入る前に比べて出てきた時の方が密着度が高いとなればこれは明らかに黒ですね。

出てきた時の恥ずかしそうなのもそれを裏付けている。

あとは現場の証拠写真でもあれば言い逃れも出来ないのですが、ホテルを出た後の後ろ姿。これではちょっと厳しいか。しかしあの男性の周囲に向ける鋭い視線を考えればカメラを向けているところを見られるのは危険でしょう。

ま、これだけ状況証拠が揃っているだけでも十分か」


ぶつぶつと呟きながらメモを取る男性の視線には、仲良さそうに腕を組む兄妹、ではなく、不純異性交遊を続ける少女と連れの男性が映っていた。


「あの様子なら今日はこのままあの男性の部屋に直帰ですね。そちらは定点カメラで確認すれば十分でしょう。

それにしても昨今の性の乱れは嘆かわしい。ま、だからこそ俺みたいな稼業が成り立つのだから業腹か。

後は残りの資料を纏めて調査費を追加で分捕る為に最終報告は来月にするかな」


男はそう言いながらどこかへと去っていった。


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