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42.勉強会と尾行

勉強会と言えば途中から脱線するのが世の常ですね。

~~ 妹Side ~~


短くも充実した夏休みもあと数日。

今年の夏休みは河原での水遊びに始まり、両親の、そしてお兄さんのご両親やお祖父さんのお墓参りに、その後のお兄さんの昔話と本当に濃い時間でした。

何より嬉しかったのはお兄さんが私を引き取ってくれた理由が判明した事です。

今までは理由が分からなかったので、義務感で世話を焼いてくれてるだけなのかなとか、お兄さんに限って無いとは思ってたけど何かの取引の結果か、そうでなくても仕方なく私の面倒を見てるだけなんじゃないかという想いが若干ありました。

でもやっぱりお兄さんはお兄さんでした。

難しい打算とか下心とかじゃなく、自分がしてもらった事を他の人にしてあげてるだけ。

無償の愛っていうのかな。

離婚率が50%を超える今の時代、『真実の愛』なんて言ったら笑われてしまうけれど、お兄さんのそれは信じても良いんだなって思いました。


「~~♪」

「なにか良い事でもあった?」


隣で教科書を開いていた千歳から声を掛けられました。

今は皆で恵里香ちゃんの家に集まって勉強会の最中なのです。


「ん~別に?」

「嘘ね。今日朝からずっと機嫌がいいじゃない。

とすると賢護さんがらみかしら?」

「そういえば万里っちの今日の服装可愛い。そのカーディガンもお洒落だし」

「あ、これ?お兄さんが外出するなら着ていきなさいって」


先日夏服を買いに行った時に店長さんから「こういうのがあるとバリエーションを作りやすいですよ」って薦めてもらって買ったうちの1着です。

お兄さんからも暑かったら向こうに付いてから脱げばいいしってかなり強めに薦められたんですよね。

心配性のお兄さんの事だからこういう時って何か意図があったんだと思いますけど何だったんでしょう。


「まぁあれじゃない?可愛い妹を着飾りたい的な」

「いやいや。魅力的な妹の露出を抑えて変な虫がつかないようにってことじゃないかな」

「普通に日焼け対策というのも考えられますよ?最近紫外線も強くなってますし」


うーむ。

あのお兄さんに限って私の事を可愛いとか魅力的とかそういう視点で見ては居ない気もするんですけどねぇ。

恵里香ちゃんの意見が一番的を射ている気もするけど、それだったら川遊びの時にももっと何か言ってそうなものだけど。


「って、みんな宿題の方は終わりそう?」

「目途はついたから今夜続きをやれば終わりそうよ」

「私も。分からないところは無事解決したし」

「私はもう終わってるから」


さすが恵里香ちゃんというか、勉強会開始して30分と掛からずに残っていた(というか、今日の為に残しておいた?)宿題は終えて、後はゆっこの質問に答えたりお茶を淹れたりしてくれていた。

朝から始めた勉強会ももう2時間が経過してみんな集中力が切れてきたし、もうすぐお昼だからみんなでご飯を食べに行って解散かな。

そう思って商店街の方に皆で出てきたのですが、通りの向こうに見慣れた背中が。

あれはお兄さんですね。

お兄さんもお昼を食べに出てきたんでしょうか。なら折角だし一緒に食べるのもありかな。


「お兄……」

「ちょっと待って。万里」

「え?」

「ほらあれ」


よく見れば向かいに居る女性と話をしているみたいです。

そのまま様子を見ているとお兄さんはその女性と一緒に向こうへ歩き始めました。


「知り合い、かな」

「いや、万里っち。そんなこと言ってないで追跡しないと」

「そうね。賢護さんの交友関係を知るチャンスよ」


ゆっこと千歳がまるで浮気現場を尾行する探偵のようなことを言い出し、私と恵里香ちゃんは仕方なくその後をついていく事にした。

お兄さんたちは程なくしてファミレスへと入っていきました。


「私達も入るわよ」

「ええ。気付かれないようにね」

「まぁ良いけど。どうせご飯を食べに出てきたのだし」


私達は外の窓からお兄さんたちが席に着いたのを確認してから店内へと入り、そして無事にお兄さんたちとはパーテーションで区切られた隣の席に座ることが出来た。

これならお互いに顔は見えないけど声は聞こえるはず。

って、いつの間にか私も聞く気満々になってました。

盗み聞きなんて良くは無いんだけどやっぱりちょっと気になりますし。

私達は注文を取りに来たウェイトレスさんに適当に注文を頼みつつ聞き耳を立てました。


『あなたのその様子を見るに上手くやっているようね』

『ええまぁ、何とか』

『あの人は1週間と掛からずに匙を投げると思ってたみたいよ』

『それは残念でしたね。あの子は期待以上に良い子ですから』


あの子ってもしかして私?

ですよね。他に居ないでしょうし。

私とお兄さんの事を知っているという事はあの女性は親戚のどなたかなのでしょうか。

それともお兄さんは色々な人に私の事を相談していた?うーん、それはないかな。

情報漏洩とまではいかなくてもお兄さんがおいそれと他人を巻き込むとは考えずらいですから。

と、注文していた料理が来たみたい。


「お待たせ致しました。『スペシャルステーキバーグ定食』のお客様」

「あ、それは万里ね」

「って私!?」


どどんと置かれたプレートの上には肉厚のステーキとハンバーグと付け合わせ各種。

私こんなの注文したかな。確かメニューを選ぶのも面倒だったから季節限定の料理をお願いしたはずだけど。


【夏場限定 スタミナ定食シリーズ!!】


どうやらこれを頼んだみたいだ。

そのお値段2500円也。

くっ。払えなくは無いけどこれは手痛い出費です。

ほかの皆は普通のランチプレートで私の半分くらいのボリュームです。


「万里さん。大丈夫ですか?」

「頑張る。残すのも勿体ないしね」

「ちなみに食後のデザート付きよ」

「うっ。が、がんばる」


うっぷ。なんとか、食べきりました。

なかなかに厳しい戦いでした。

デザートを皆に手伝って貰わなかったら動けなくなってたかもしれません。

っと、そうだ。お兄さんの方はどうなったんでしょうか。

食べるのに忙しくてすっかり忘れてました。


『それじゃあ先に行くわ。困ったことがあったら遠慮なく言うのよ』

『はい。ありがとうございます』


どうやら向こうも食べ終えて女性の方が先に帰るみたいです。

結局どういう関係だったのかは分からず仕舞いですね。

今日の夕方に恵里香ちゃんの家で一緒にご飯食べるしその時に聞いてみる?

でもどうやって切り出そう。まさか尾行してたんですとは言えないし。

ま、お兄さんの事だから何かあったら私に教えてくれますよね。きっと。

お兄さんがお店を出ていくのを見送ってから私達も出ることにしました。

ってそうだ。会計。


「ご利用ありがとうございました。

料金の方ですが、ご友人の方が先ほど一緒にお支払いになっていきましたよ」

「えっ」


レジに立ったお姉さんからのまさかの発言。

ご友人って間違いなくお兄さんですよね。

え、気付かれていたんですか!?

しかも私だけじゃなく全員分を払ってくれていたみたいです。


「いやぁ、ラッキーだったね」

「そうね。今度お礼を言っておかないと」

「それにしてもいつから気付いてたんでしょう」


うーむ、流石お兄さん。

というか、この後私と恵里香ちゃんはお兄さんと会うのですが、どんな顔をして会えば良いのでしょうか。


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― 新着の感想 ―
[良い点] あんだけ大声出したら気付くわーい! 無邪気な子供たちですね! 店に入る前にからバレてそうなもんですけど!
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