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41.のんびり夏休み

何とか間に合いました。

~~ 兄Side ~~


墓参りから数日が経過した。

俺も万里も夏休みという事もあって1日の大半を家で過ごしている。

出掛けたのも万里が夏服を買いに行ったのと、お昼は外に食べに行こうと言って近くの定食屋に行ったりしたくらいか。

それ以外は優子たちから借りたらしい対戦ゲームをしたりして過ごした。

ゲームなんてほとんどしたことなかったけど、これまでは万里と一緒に遊ぶこともほとんど無かったし丁度良いかなって思ったんだけど、思いのほか熱中している。


「この『もにょもにょ』ってゲームを作った奴は普段何を考えてるんだろうな」

「えーと、関西の人みたいに常にネタ探しに奔走してるんじゃないかな」

「いや関西人全てが漫才師な訳じゃないからな」


いまやってるのは『もにょもにょサン2号』というオチものパズルゲームだ。

初代『もにょもにょ?』の3作目らしいが、2号と言いつつ1号は無い。

2号のオープニングで色々あって1号計画は闇に葬られたということになっている。

そのオープニングムービーは主人公の背後にナイフを持ったヒロインが現れたところで終わっていた。

その後主人公を見たものは居たのかどうか分からないが本編に主人公は出てこない。主人公なのに。

ネットの掲示板では裏ルートがあるんじゃないかとか、ラスボスの中の人が実は主人公だったんじゃないかとか色々と憶測が飛び交っている。

そしてオチものにありがちな連鎖中の掛け声なんだけど。


「『たくわん1枚』『ねこまんま』『一汁三菜』『懐石料理』『満漢全席』『酒池肉林♪』『酒池肉林♪』…」

「いや、だんだん豪勢な料理にしたかった気持ちは分かるんだけどな?」


なぜかモザイク画像の何かが踊り狂っている。

他にも『いらないものシリーズ』の最後は『向かいのお父さん』という言葉と共にゴミ捨て場にハゲ親父が寝ていたりする。


「『うちの(・・・)お父さん』じゃなくて良かったですね」

「いや、流石にそれだと洒落にならないからじゃないか?」


敵キャラも『孤独な魔法使い』と称してキモいおっさんが出て来たり、『玄関開けたら居る人』と称して宗教の勧誘に来たオバサンだったりと、分からなくはないんだけどもうちょっと他のものでも良かったんじゃないかなって思うネタが満載だ。

そしてなぜかやり続けると、おでんの大根に味が染みるようにジワジワと来るんだ。

お陰で止め時を見失ってついつい夜更かしをしてしまう事もある。

俺は大丈夫なんだが、万里の方が若干生活リズムが狂ったのか今朝は9時になっても起きてこない。


「さすがにボチボチ起こすか」


そう思って寝室の戸を開けてみると、ちょうど万里がベッドから出てくるところだった。

ただまだぼーっとしてて寝ぼけてるっぽいな。


「おはよう、万里」

「あ~おにいしゃん。おはようございまふ」


万里は立ち上がりながらぼへ~っと挨拶をしたかと思うと、俺に寄りかかって来た。

そのまま抱き着くようにして俺の胸に頭をぐりぐりと押し付けてくる。


「これこれ。顔でも洗ってきなさい」

「連れてって~」

「はぁ。仕方ないなぁ」


俺は万里を抱え上げるとそのまま洗面所まで連れていく事にした。

うーん、仲良くなったと言っていいのか時々甘えてくるようになったんだよな。

以前はこんな無防備な姿を見せることはほとんど無かったのに、なにか心境の変化でもあったんだろうか。

顔を洗った後は、流石に意識ははっきりしたみたいだけど、やっぱり以前よりガードが緩いというか、服装とかもラフなんだよな。

今朝はタンクトップにショートパンツだし。

まぁ夏だし特別不埒な訳じゃないから良いんだけど、年ごろの娘が良いのだろうか。

これで外を出歩いたらアホな野郎どもがほいほい付いて来そうじゃないか。

って、待て待て。


「……」

「?どうかしたんですか、お兄さん」

「いや、何でもない」


いつの間にか親ばかお父さんの思考になってた自分に驚いただけだとは言えないな。

まあそれでも一言言っておくか。


「外に出るときは薄いカーディガンとか羽織って行こうな」

「は、はぁ」


今年は夏休みもあと3日だし心配はないか。

って、そうか。


「万里、夏休みの宿題は終わったんだっけ?」

「8割がた終わってますよ。残りは明日、恵里香ちゃんの家に皆で集まって終わらせる予定です」

「あぁ、やっぱり4人も居れば誰か1人は宿題を最終日まで温存してるのか」

「ええ。私達の中だと千歳がそうですね」

「それは意外だな。あの子は結構キッチリしてる方だと思ってたけど」

「はい。キッチリしてるから休みの前半は自分のやりたいことをして、無理のない程度のタイミングで宿題に手を付けるみたいです」


あれだな。好きなものを最後まで取っておくか最初に食べてしまうか。

千歳は後者ってことか。

そこではっと何かを思い出したように万里が手を合わせた。


「あ、そうそう。お兄さん。明日は宿題が終わった後は恵里香ちゃんに料理を教えてもらう約束になってるんです。

それで夕飯を一緒に食べようって誘われてるんですけど、良かったらお兄さんもどうですか?

恵里香ちゃんも先日遊びに連れて行ってもらったお礼にもなるからって言ってましたし」

「そうだな。そう言う事ならお邪魔するか」


恵里香と2人でとなるとあまりよろしくないが、万里も居るし特に問題が起きることも無いだろう。

先日のBBQの時の手際を考えれば恵里香の料理に不安なところは無いし、万里もある程度は出来るから大丈夫だろう。

あとはまぁ、なにかお土産とか差し入れの1つでも持っていけば良いか。




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