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33.お兄さんにはがっかりです

何とか1日おきに投稿出来てるのが奇跡ですね。

~~ 兄Side ~~


集合場所から水着売り場に向かう道中、俺は前を行く万里たちの一歩後ろを歩いていた。

こうして見ると三者三様ならぬ四者四様でみんな性格とかもバラバラなようだ。

それでいて仲が良いのだからお互いに不足しているものを補い合っているのかもしれない。

と、流石に4人で並んで歩くと道を塞いでしまうので、そのうちの一人、風見恵里香さんが一歩下がって俺の隣に来た。

このメンバーの中では癒し系担当って呼ばれてたけど、こういう時に一番に気を遣う子でもあるんだろう。


「あの、高島さん。今回はお誘い頂きありがとうございます」

「いやいや。俺の方こそ万里と仲良くしてくれてるみたいで嬉しいよ。

いつかお礼が出来れば良いなと考えていたから早々にその機会が来てよかった」

「お礼、ですか?」

「ああ。あの子がこんなに早く立ち直れたのは、間違いなく君たち3人が居てくれたからだ。

俺一人だったら多分今でも暗い顔をして家に引きこもっていただろう」


俺では衣食住の体の健康は維持できても心のケアは出来ないからな。

彼女達が居なければ学校に行っても誰もが万里を腫れ物を扱うようにするだろうし笑顔を引き出す事は無かっただろう。

それが今ではちゃんと事故の悲しみを乗り越えてああして笑っていられるんだ。

良かったな。



~~ 恵里香Side ~~


私は皆より後ろに下がって隣を歩く高島さんとお話をしてみることにしました。

万里さんの親戚という話でしたが、ぱっと見似ているようには思えません。

まぁ親戚と言っても従兄よりももっと遠い血縁だという話なので血のつながりで言えば他人と言っても過言ではないでしょう。

お母さんも良く「血のつながりと家族であることはそんなに関係ないのよ」って言ってました。

そもそも夫婦の段階で血のつながりは皆無ですからね。

なら家族たらしめるのは何かと言えば……何でしょう。

少なくとも今、万里さんを優しい眼差しで見守っている高島さんは間違いなく万里さんの事を大切に思っているのが少し話しただけでも分かります。

ただ子の視線は兄というよりむしろ……


「そう言えば、風見さん達は万里とはいつからの仲なんだい?」

「えっと、3人とも中学に入ってからです。

4月のオリエンテーションで一緒になってそのまま仲良くなった感じです」

「そうだったのか。てっきりもっと前からなのかと思ってたよ」

「良く言われます」


高島さんは言葉だけなら驚いている風ですが、表情はどこまでも穏やかで、今は万里さんだけでなく私達にも分け隔てなく向けられているのが何というか安心します。


「そうだ。私も聞きたい事があったんですけど、良いですか?」

「答えられることなら」

「以前家にお邪魔させて頂いた時にお手洗いをお借りしたのですが、すごく綺麗で驚きました。

確か掃除は高島さんがされているという事ですが、トイレ掃除とかって嫌じゃないんですか?」

「ああ、そこか」


ちょっぴり目を細めて笑顔になる高島さん。

あ、この感じは知ってます。

お母さんが「よくやったね」って褒めて抱きしめてくれる前の表情です。

流石に高島さんが抱きしめてくることはなさそうですが。


「風見さんは、神社やお寺のトイレを誰が掃除してるか知ってるかい?」

「え?いえ。そういうのはやっぱり小僧さんとか新人の仕事でしょうか」

「それが違うらしいんだ。

実はそこの一番偉い人がやってるらしいんだよ。

どこでもそうだとは言えないだろうけど、昔ながらの所は特にね。

何故かって言うと、やっぱりトイレは不浄の場所だから、そこを清めるのはとても大事な仕事で下っ端には任せられないんだ。

トイレが汚れていれば悪いことが集まってくるけど綺麗なら寄り付かないって。

そんな話を子供の頃に祖父に教えられてね。以来トイレはピカピカに磨く事になった訳だ。

特に今は万里も居るし、やっぱり女の子はトイレが臭うのはいやだろう?」

「それは、はい。そうですね」


臭いの事もそうですけど、この人の場合、悪いことが集まらない事の方が大事なんじゃないでしょうか。

そこだけ気持ち強めに話してましたし。

万里さんもあの不幸な事故があった訳ですから、これ以上何かが寄り付かないように、なんて考えてるのかもしれません。


「さて、着いたな」


ぽつりと呟いた言葉に視線を前に戻せば確かに水着売り場に到着していました。



~~ 妹Side ~~


「さて、着いたな」


そう呟いたお兄さんはなぜか足を止めて私達を見送る姿勢を見せました。


「お兄さん?」

「俺は適当に時間を潰してるからゆっくり選んできなさい」


と、完全に観戦モードですね。

ですがそうはいきません。

ここに来る途中、こうなることを見越してゆっこと千歳とは作戦を立ててました。

恵里香ちゃんも自然とお兄さんの気を逸らすことに一役買ってくれてグッジョブです。


「ゆっこ」

「はいさ」

「千歳」

「はいはい、仕方ないわね」

「確保~」


私の掛け声で両サイドからお兄さんの腕を抑えるふたり。

お兄さんも抵抗らしい抵抗は無く成すがままです。

というか、よく分かってないっぽい。


「これはなんだ?」

「折角水着を買うんですから男性の意見もあった方が良いだろうということで、その役をお兄さんに抜擢しました!」

「うーん、俺で良いのか?というか、恥ずかしくはないのか?」

「まぁそうですけど、どうせ明日見せる訳ですし」

「そうそう。それに私達の水着姿を見て顔を赤くするおにいさんを見てみたいという万里っちの希望っすよ」

「ただ、それで欲情してケダモノになるようなら色々考えないといけないけど」

「た、高島さんはそんな人じゃないと思いますけど」

「まあそうだとは思うけどね」


でもやっぱり、自分の水着姿を見て少しは照れて欲しいと思う乙女心な訳ですよ。

それに朝のウィンドウショッピングの続きでお兄さんの好みも知れるかもしれないし。


「という訳で行きますよ」

「はいはい。仕方ないなぁ」


観念して付いて来るお兄さん。

では私達はお兄さんを悩殺する水着を探してきましょう。

逃げないでくださいね。あ、恵里香ちゃんが一緒に居てくれるの?ありがとう。

そうして。

私達はそれぞれ自分に似合いそうな水着を見つけてフィッティングルームで順番に試着してお兄さんに披露していったのですが。


「……お兄さんにはがっかりです」

「えぇ?」

「ふにゃち〇野郎ですね」

「いや酷くないか?」

「そうね。実はただのゲイだったというオチじゃないかしら」

「だからそんなオチはないから」


私達3人の水着姿を見ても顔色ひとつ変えないお兄さんでした。

そこに最後に着替えてきた恵里香ちゃんが恥ずかしそうに出てきたのですが。


「どう、ですか?」

「うん、良いんじゃないか?良く似合ってるよ」


ええっ!

私達の時には「うん、良いと思うぞ」と軽い感じだったのに、恵里香ちゃんの時だけ満面の笑顔で頷いてます。

ちなみにその恵里香ちゃんですが、若草色のタンキニにパレオと麦わら帽子を纏って清楚系のお嬢様って感じですごく可愛いです。

いや、うん。確かにすごく可愛いです。

それでいて女の武器はしっかりとアピールされています。

これは確かに完全敗北は否めません。

が、そこに恵里香ちゃんが爆弾を投下しました。


「ふぅ。高島さんに選んでもらって良かったです」

「…………ナンダッテ?」


お兄さんに選んでもらった?

確かに恵里香ちゃんはずっとお兄さんと一緒に行動してましたから、水着を選ぶときも隣に居たんだろうけど。

そんなことはどうでもいいんです。


ガシッ、ガシッ、ガシッ

「お兄さん?」

「な、なにかな。3人して」


私達3人に捕まれて若干後ずさるお兄さん。

でも逃がしてあげません。


「私達の水着も選んでください」

「え、いや。さっきので十分良かったと思うぞ?」

「え・ら・ん・で・く・だ・さ・い」

「は、はい」


その後私達はお兄さんを引っ張りまわし、改めて水着を選び直すのでした。

お陰で予定よりだいぶ遅くなってしまいましたが後悔はしていません。


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