27.知らなかったあれこれ
気が付けばGWの作成分が無くなっていました
~~ 妹Side ~~
多少の波乱はありつつも千歳たちは帰っていきました。
時刻は17時。
お兄さんが帰ってくるのは18時過ぎなので、今から買い物に行って準備を始めれば下ごしらえを済ませられるでしょう。
今日の夕飯は肉じゃがです。
余談ですが、お兄さんの頭の中では、カレーとシチューと肉じゃがと豚汁は具と味付けが違うだけで、基本的な作り方は一緒なんだそうです。
まぁ確かに以前作ってるところを見させてもらったのですが、お肉、玉ねぎ、じゃがいも、ニンジンが入るのは同じで、それらを順番に炒めて煮込み始める工程までは同じでした。
そこからシチューだったらブロッコリーとコーンが入って、肉じゃがだと白滝が、豚汁は豆腐とこんにゃくとゴボウが入ります。
で、カレーとシチューは市販のルーで味付け。肉じゃがは醤油、豚汁は味噌で味を調えるんだそうです。
プロの料理人が聞いたら怒り出しそうな適当さ加減です。
ただそれでもちゃんと食べられるし、別の料理と間違えられることもないので良いのでしょう。
「美味い料理が食べたくなったんなら今度外に食べに行くか。流石に毎日は厳しいけどな。
それか万里が料理を覚えて美味しく作ってくれ」
お兄さんは笑ってそう言っていました。
そう言えば私が初めてこの家に来た時は料理どころか栄養ドリンクを飲んでましたっけ。
ということは、この料理も私の為に敢えて作ってくれてるのかもしれないですね。
さて、そんなことを考えながらも無事に買い物を済ませ、野菜の皮をむき終わったところでお兄さんも返ってきました。
「ただいま~」
「おかえりなさい、お兄さん」
「お、野菜の下ごしらえまでしてくれたのか。ありがとうな」
お兄さんの事をお兄さんと呼ぶのもだいぶ慣れてきました。
でもまだお兄さんにお礼を言われるのはちょっと恥ずかしい感じがします。
「さて、後はやっておくから先にお風呂入って来て良いぞ」
「いえ、最後まで手伝いますよ?」
「ん?あ~そうか」
「もしかして私がここに居たら邪魔ですか?」
「いや、そんなことは無いぞ」
私が手伝うっていうと毎回曖昧な返事が返ってくるんです。
で、何となく分かって来たのですが、こういう時は大抵お兄さんが私に気を遣ってる時です。
今日と言う今日はその原因を突き止めたいんですが、うーん。
仕事鞄とスーツの上着を脱いでキッチンに戻って来たお兄さんに変なところは無さそうな……あっ。
「お兄さん。着替えないんですか?」
「あぁ。今日の料理なら油が飛び跳ねる心配も無いしな」
「そう、ですか」
私が手伝いを申し出た時は決まって今みたいに上着だけ脱いで料理をしてる気がします。
でもそれ以前は普通に着替えて料理をしていたと思います。少なくともお風呂から上がった時にはお兄さんは私服でしたし。
そこから考えられることは、私がお風呂に入っている間に着替えてる?
なんで……って何でも何もキッチンから居間は丸見えですし、私に着替えを見せない為ですね。
「お兄さん。寝室、自由に入って良いですから着替えて来てください」
「……良いのか?」
「はい」
良いのかって事は私の予想は当たりだったという事ですね。
お兄さんは着替えを持って寝室に入るとササっと着替えて戻ってきました。
「今後は私に気兼ねなく寝室に出入りして良いですからね」
「ふむ。分かった。しかしそうなると万里には今後ハプニングが起きても怒らないで欲しい」
また出てきました。お兄さんの危険予報。
まぁ千歳の件もありましたし、以前ほど胡散臭いとは思ってはいませんが。
「それで、今度は何が起きるんですか?」
「よくあるアレだ。着替えの最中にばったり部屋に入ってしまって『キャー、エッチ、変態、スケベ!』的なやつ。
もちろん部屋に入る時はノックはするけど、確実に防げるかと言われたら怪しい。
だからいざそれが起きてもげんこつ1回くらいで許してくれ」
あ、確かにそれはありがちですね。
むしろ今まで起きなかったのは運が良かった、もとい、それだけお兄さんが気を遣っていたってことなんでしょう。
「分かりました。今更お兄さんが故意にノゾキをするとは思っていませんし」
「ありがとう。さ、お腹空いただろう。ちゃっちゃと夕飯作ってしまおう」
「はい」
そうして私達は一緒にキッチンに立って料理を作った後、一緒に盛り付けて一緒に食べました。
するといつもより美味しく感じるのが不思議です。味付けとかはそんなに変わってないと思うんですけど。
夕飯を食べ終えた後はお風呂、なのですが、これも普段私が先に頂いてますけどゆっこの家だとお父さんが先に入るんですよね。
「お兄さん。今日はお兄さんが先にお風呂入りますか?」
「ん、良いのか?」
「もちろんです」
ふぅむ、ここにも何かあるんでしょうか。段々聞きたい事が増えてきました。
と言ってもお風呂自体は何事もなくお互いに入り終え、その後で届いた荷物をお兄さんは寝室に持ってきました。
荷物の正体は折り畳み式のマットレスと毛布でした。
時刻は21時を過ぎたところなのでまだ寝るには早いですが、使用感というか、実際にマットレスを敷いてどうなるかをやってみました。
結果、それだけで部屋の中はいっぱいです。
「ま、寝るとき以外は畳んで置けば邪魔にならないだろう」
「そう、ですね。あ、別に片付けなくて良いですよ」
一旦片付けようとするお兄さんを制止する。
私としては今日はここからが本題なんです。
「お兄さん、今日はこの後何かやることあるんですか?」
「まぁちょいちょい、な」
「その『ちょいちょい』の内容が知りたいです」
「ん、どうしたんだ?」
「お兄さんの寝床の件もそうでしたけど、私の知らないところでお兄さんが気を遣ったり手を回していたりしてくれてますよね?
私の為を思ってやってくれてるんだと思いますけど、そういうのを全部教えてください」
「そうは言ってもどこから言ったものか」
「ならお兄さんは私が学校に行った後や眠っている間は何をしてますか?」
そうやって聞くとどんどん出てきました。
まず私が学校に行った後は、朝食の食器を洗い、部屋とトイレの掃除をし洗濯を済ませてから会社に行くそうです。
夜は私が寝室に向かった後で夕食の食器を洗い、お風呂掃除をして翌日分のお米を研いでいる、と。
以前はそれに加えて夕飯の買い出しとかも含まれてたんですよね。
「普段私が先にお風呂を頂いてますけど、あれは何か意味があったんですか?」
「あれか。『お父さんが入った後のお風呂なんて嫌!』って言われるシーンがドラマとかであるだろ?」
「あぁ、時々聞きますね。でもお兄さんは特に不潔な印象はないので大丈夫だと思いますよ」
「それは良かった。そんなことを万里に言われたら立ち直れないからな」
クラスの女子の中にはお父さんが嫌いって言う子は何人か居ます。
確かにその子たちの話を纏めると「臭い、汚い、うるさい」なんだそうです。
言いたいことは分かるけど、幸い私はまだ体験したことがありません。
あ、そう言えば。
「私、お兄さんがトイレに行ってるの見た事ないかも。もしかしてそれもですか?」
「あー、まぁ。極力な。朝は万里が起きる前に済ませてるし、夜も寝静まった後に行けば十分だから」
やっぱりそうでした。
私が使った直後、とかだとちょっと気になりますけど、それ以外なら全然気にしなくていいのに。
あとはあれですね。
「お兄さん。これからは夜はちゃんと寝てくださいね」
「ん、あ、あぁ」
言葉を濁すお兄さん。その理由はもう知ってます。
「夢でうなされる私をなだめる為に起きてくれてたのかもしれませんけど」
「あ、やっぱり気付かれてたか」
頭を掻きつつ嘆息するお兄さん。
どうやら遅かれ早かれ私に気付かれるのは想定内だったみたいですね。
「はい。気付いてからは悪夢を見る頻度も極端に減りましたし。
それに今後はすぐ隣にお兄さんが寝ているのが分かっているので安心して寝れますし悪夢も見なくなると思うんです」
悪夢を見る原因は両親を亡くした悲しみと不安だと思います。
勿論悲しみが完全に癒えた訳ではありませんが、お兄さんが居てくれれば不安はありません。
きっとこれから先、何があってもお兄さんが私を守ってくれると信じてますから。
まぁ、ちょっと心配症が過ぎるのが玉に瑕ですけど。




