16.お泊り会1日目は仲良し家族(前編)
少しずつブックマークが増えて行ってる。
皆様ありがとうございます。
m(_ _)m
~~ 妹Side ~~
お泊り会1日目。
特に何事もなく学校の授業を終えた私は少し急ぎ足で一度家に戻った。
時刻は4時前なので流石にあの人は帰ってはいないと思うのだけど、結局昨夜も今朝もお泊りの事は言えなかったのでこのタイミングで会うのは気まずい。
「エルちゃん、あの人が家に居るなんてことないよね?」
『少々お待ちを……はい。現在は会社にいらっしゃるようです』
「うん。ありがと」
念のためエルちゃんにも確認を取ってから玄関の扉を開けました。
あの人は、居ないですね。なら今のうちに。
うーん、こうしていると自分の家のはずなのに空き巣に入ったような変な気分。
寝室の戸の前に畳んで置いてあった自分の衣類を回収して、まずは制服から私服へと着替える。
えっと持っていくものは制服と1回分の着替え。あと修学旅行の時にも使ってたお泊りセット。
明日も学校が終わったら一度戻ってこれば良いから勉強道具とかも明日の分だけで十分ね。
後は……あ、そうだ。
冷蔵庫の中に、あったあった。今日はフルーツヨーグルトの日か。
どうも私が小腹が空いた時の為にとプリンやヨーグルトやゼリーなんかを買って来てくれているので、今回はそれをお土産がわりに持っていくことにする。
幸い数も3つあるしね。
よし、これで大丈夫かな。ま、もし何か足りなかったらゆっこに借りれば済むし。
そうして家を出てやり忘れたことに気が付いたのはゆっこの家の前に来てからだった。
「書置き残してこなかったな」
ま、いっか。
どうせあの人もいつも通りぼーっとしてて、書置きなんかあっても気付かないかもしれないし。
むしろ私が居ないことに気が付かないとか?いや流石にそれはないかな。
これもこのところ私をぞんざいに扱っていた罰だと思ってもらおう。
本当だったら昨日の夕飯の時に話していたはずなんだから。
さ、気を取り直してゆっこの家に行きましょう。
ぴんぽーん♪
「はーい」
「来たよ~」
インタホーン越しにゆっこの元気な声が聞こえて来て、まもなく玄関を開けてゆっこと妹の啓子ちゃんが出てきた。
「万里お姉ちゃん、いらっしゃ~い」
「今日はお世話になります」
「どうぞどうぞ。自分の家だと思って寛いでくだされ~」
「ふふっ」
啓子ちゃんのどことなく芝居がかった挨拶にゆっこと顔を合わせて笑いながら私達は家の中へと入った。
家の間取りは3LDK。
ご両親が1部屋使って、残りの2部屋をゆっこと啓子ちゃん、あと長男の和重さんが使ってたんだけど、今年から和重さんが一人暮らしを始めたお陰でゆっこ達は1人1部屋使えるようになったと喜んでいた。
居間の方に顔を出すとゆっこのお母さんの良子さんが夕飯の準備をしているところだった。
「良子おばさん。今日はお世話になります」
「いらっしゃい。相変わらず万里さんはしっかりしてて良いわね。
それに比べてうちの子はやんちゃで。ちょっと見習ってほしいわ」
「はいはい、そういうのは良いから。私達は部屋に行ってるから」
「ええ。後でジュースでも持っていくわ」
ぱたぱたと背中を押されるようにゆっこの部屋に移動する。
「ふぅ。お母ちゃんってば最近口うるさくって。
『もうちょっと女の子らしくしないと良いお嫁さんになれないわよ』とか。
まだ私中学生だっていうのに」
「まあそれだけ気に掛けてもらってるってことなんでしょう」
「そうかもしれないけどね」
私なんてあの人から女の子らしくしろ、なんて言われたことないし。
口を開けば、やれあれに気を付けろだとか、こういう時は注意して本質を見極めろって、転ばぬ先の杖を何本突けば気が済むのか分かったものじゃないわ。
と、折角のお泊り会なんだからあの人の事を考えるのはやめよう。
「さて折角3人居る事だし、これでもしようか」
そう言ってゆっこが出してきたのはボードゲーム。
15x15のマス目の付いた盤面に順番にテトリスみたいなブロックを填めていく陣取り合戦。
填め込むブロックは1~6個の四角形が組み合わさったもので、これを自分のブロックの角だけが接するように填めていく必要があるらしい。
最終的により多くのブロックを填めれた人が勝ちだ。
「ま、口で説明するよりやって見た方が早いよ」
「そうだね。じゃあお手柔らかにお願いします」
「ふっ。だが断る。勝負の世界は非情なのだよ~」
啓子ちゃんの言葉に笑いながらゲームスタート。
こういうのってその人の性格が出るというか3人ともブロックの置き方が全然違くて面白い。
ゆっこは盤の中央に向かって一直線に伸ばしてきて、啓子ちゃんはうねうねと蛇行している。
そんな二人の間を私が縫うようにブロックを置いて行った結果。
「だぁ~負けた~~」
「って、なんでゆっこがビリなのよ」
「ふっふっふ。これが若さの勝利というもの」
いや啓子ちゃん。それは違うんじゃないかな。
たしかに啓子ちゃんが一番若いけど、私達みんな若いから。
「くっ。再戦を要求する!」
「よろしい。掛かってくるが良い」
そうして5回ほど対戦した結果。
私が3勝、ゆっこと啓子ちゃんがそれぞれ1勝ずつという結果になった。
「お姉ちゃん。これはあれだね」
「うん、あれだね」
「ん?」
「「頭の出来が違う」」
姉妹で顔を見合わせたと思ったらそんなことを真顔で言い出した。
確かに前回の中間考査では私の方が良かったけど、ゆっこもそれ程悪く無かったじゃない。
啓子ちゃんも小学6年生の割には賢い方だと思うし。
「よし、次はジェンガで勝負だ」
「えぇ、あれわたし苦手~」
「ふっ。敵の苦手を突くのも戦術の内よ。というか啓子はもっと落ち着いてやれば良いのよ」
「う~それお姉ちゃんがいつもお母ちゃんに言われてることじゃん」
「……つまり似たもの姉妹?」
「そうとも言うね」
「うん、言うかも」
何と言うか息が合っているというか凄く仲良し。
私は兄弟って居た事ないからそういう関係ってちょっと羨ましいな。
このお泊り会の話は構想段階ではこの数倍のボリュームがあってお友達視点とかお友達の家族視点も織り交ぜながら展開したかったのですが、こんな感じになりました。




