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15.明日(今日)は帰りませんので

文体が丁寧語じゃなくなっているのは、まぁそういうことです。

~~ 妹Side ~~


学校帰りに本屋に寄って以前読んでいた小説の続巻が出ていたので家でのんびり読んでいたらあの人が帰って来た。

って、もう18時過ぎてたんだ。


「ただい(ゴンッ)」


え、なにか凄い痛そうな音が寝室(わたしのへや)にまで響いてきたんだけど。

気になって居間に行ってみるとあの人が頭をさすりながら入ってくるところだった。


「いやぁ。ぼーっとしてたら壁に頭を当ててしまったよ」

「はぁ」


はっはっはぁと笑いながら頭を掻くあの人。

というか、この家の玄関って余所見したくらいでぶつける様な壁ってあった?

気になって見に行ってみたけど、それらしい壁は無いんだけど、いったい何をどうしたのかしら。

まぁいっか。

怪我をした訳じゃなさそうだし、今はいつもどおりお風呂の準備をして夕飯を作り始めているし。

多分本人が言った通りぼーっと仕事の事でも考えていたのでしょう。

そう思っていたのだけど、今日はやけにぼーっとしている頻度が多いみたい。

料理している最中もお肉を焦がしそうになるし、食事中も箸を咥えたまま止まるし。


「それで明日なんですけど」

「……」

「って聞いてます?」

「……ん?あぁ、すまんすまん。で、なんだっけ」

「いえ、もういいです」


明日からの外泊の件を伝えておこうと思ったんだけど、やっぱり私の話なんて上の空で聞いてないみたい。

多分仕事の事で頭の中がいっぱいなのね。

それなら別に伝えなくても良いかな。

どうせ言ってもまた余計な心配を山のようにされるか、最悪外泊は禁止だっていうだけだし。

エルちゃんには許可は貰ってるし、机の上に書置きを残しておけば問題ないでしょう。


~~ 兄Side ~~


「よし、終わった~」


ここ数日、根を詰めて行っていたシステム改修がようやく完成した。

この後はまだ田中を始めチームメンバーにテスト等をやってもらって報告書をまとめてとやる事は残っているが、俺じゃなきゃ手が出せない部分はもうない。


「主任、お疲れ様でした。

コーヒーを淹れましたので、それを飲んだら家に帰ってください」

「柊さん。それ労ってくれてるのか、邪魔者扱いされてるのか分からないんだけど」

「私は主任のことを心配して言ってるんです!」

「そりゃどうも」


帰れって言ってもまだ15時なんだけど。

ま。まずは淹れてくれたコーヒーでも飲みながら一休みするかな。


……。

……ん、あれ?おかしいな。

さっきは時計の針は15時を指していたはずなのに、いつの間にか19時を過ぎている。


「って、19時!?」


はっと立ち上がった俺の膝からブランケットが落ちた。


「あ、主任。起きられました?」

「……そうか。俺は寝てたのか。

このブランケットは柊さんのかな。掛けてくれてありがとう」

「はい、どういたしまして」


どうやら気が緩んだ拍子に居眠りしてしまっていたようだ。

いや3時間も寝てたんだから爆睡してたと言った方が正しいか。

みんなには済まない事をしたな。


「みんな済まなかったな」

「あ、そういうの良いですから」

「そうです。主任はさっさと帰って妹さんの面倒を見てあげてください」

「それと、今夜は自宅で仕事するのは禁止です。いいですね!」

「お、おう」


何故かメンバー全員から怒られてしまった。

いや、怒られるのは寝てたから当たり前なんだけど、内容がちょっと違うような。

俺はみんなに追い出されるようにして会社を出ると家へと急いで帰った。

家に着くころには時刻は20時を過ぎていた。

しまったなぁ。先に連絡の一つでも入れておくんだった。

今頃万里はお腹を空かせて待っているだろう。


「ただいま~」


玄関を開けて家の中に声を掛けてみるものの、奥の寝室からは反応はない。

もしかして遅くなったから怒っているのかもしれないな。

俺は寝室に続く戸をノックしながら改めて声を掛けることにした。


「ただいま。ごめんな、遅くなって。……?」


部屋の中からは物音ひとつしない。

寝ているという可能性もあるが、そう言えば居間の明かりも点いてなかったな。


「万里。入るぞ」


念のためもう一度声を掛けてから寝室の戸を開けた。

さっと部屋の中を確認するとどうやら万里はいないようだ。

……いない!?

改めて時計を確認すれば20時半。

あの子には特別に用が無ければ20時には帰宅するように伝えてある。

だから家に居ないという事はあの子に何かがあったと考えるべきだ。

強盗が押し入って誘拐していった?

いや、それなら玄関の戸に鍵が掛かっていたのはおかしい。家の中が荒らされた形跡も無いしな。

それにエルが一緒なんだ。事件に巻き込まれたのならいの一番に連絡が来るはず。

って、そうか。エルに連絡を取れば良いじゃないか。


「エル、聞こえるか?」

『はい、感度良好です』

「万里は無事か?今どこに居る?」

『ご安心ください。彼女の周囲に危険は見当たりません。

現在はご友人の水島優子様のお部屋にいらっしゃいます』


友達の部屋?という事は友達と遊んでただけか。

なら安心だな。

外はもう暗くなっているから帰る時に迎えに行けば良いだろう。


「しかし随分遅くまで遊びに行ってるんだな。そちらのお宅のご迷惑になってはいないか」

『それも問題ないと思われます。本日はこちらに泊まるそうなので』

「は?」

『聞いていらっしゃらないのですか?』


いや、聞いて無いけど。

あ、そう言えば昨夜何か俺に言おうとしていたのはそれだったのかもしれないな。

俺が寝不足でぼーっとして話を聞いてなかったせいで言えなかったんだろう。

なら完全に俺のミスだな。


「そちらのご家族はまだ起きているだろうか。出来れば電話で挨拶をしておきたいのだけど」

『はい。それでは電話を中継します』


プップップ……


『もしもし』

「もしもし。夜分遅くにすみません。

私は今日そちらにお邪魔している坂本万里の保護者で高島賢護という者です」

『あらご丁寧にどうも。優子の母の良子です』

『おい優子。冷めない内にお風呂入ってしまいなさい』


電話の向こうから年配の男性の声が聞こえてきた。

恐らく旦那さんだろう。

どうやらなかなか賑やかな家のようだ。


『ごめんなさいね。夫ってば声が大きいもので』

「いえいえ。楽しそうで羨ましい限りです」

『そう言ってもらえると助かるわ』

「それで、今日は万里がそちらに泊めて頂くそうで、何かとご迷惑をおかけすると思いますがよろしくお願いします」

『ええ、大丈夫ですよ。子供は手が掛かるものです。

うちの子もねぇ。元気な盛りが2人も居るものだからいつも大変で。

それに比べて万里さんは落ち着きがあって羨ましいわ』


挨拶だけするつもりが世間話に発展してしまった。

この奥さんもかなりの話好きのようだ。

それから15分程、娘自慢や旦那自慢を聞かされてしまった。


本当はTZMのネタをもう1つ入れようかと思ったのですが微妙にかみ合わせが良く無さそうだったので外しました。

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