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14.退屈は平和の代名詞

~~ 妹Side ~~


学校に通い始めてから1週間が過ぎました。

最初こそ腫れ物を扱うように距離を開けていた人たちは大半が元の距離感に戻っています。

変わったことと言えば、担任の水元先生から心配するような視線を多く投げられるようになった事くらいでしょうか。

あとそれが原因なのか元々仲の良くなかった女子グループからは時々蔑んだ視線を投げられるようになった気がします。今のところ直接何かをしてくることは無いのですが。

まあつまり。あの人が言っていたような心配事はほぼ起きていないのが現状です。

そして今日も仲良し4人組でお昼に食堂に来ています。


かぱっ

「はぁ」


お弁当の蓋を開けた私の口からつい小さくため息が漏れてしまいました。

それを見た恵里香ちゃんから心配そうに声を掛けられました。


「何か嫌いなものでも入ってたんですか?」

「ううん、そうじゃないんだけど。

彩りに欠けると言うか、おかずが昨夜の残りと言うか」


3人が私のお弁当を覗き込んできては「うーん」と悩ましい声を上げていきます。


「まぁ確かに?女の子のお弁当としてはご飯とお肉の比率が多いかしら」

「そうですね。私も時々お弁当を作ってきますけど、ご飯は半分くらいですし、緑野菜とかプチトマトとか入れて彩りは気にしたりしますね」

「え、そうなの?うちはもう、お母ちゃんがお父ちゃんの分と一緒に作ってるから似たようなものだよ。

昨日の残りに冷凍食品がメインだから毎日変わり映えしないしね」


言われてみればゆっこのお弁当はそんな感じです。

それを考えると以前お母さんが作ってくれたお弁当は恵里香ちゃんの言うように女の子用に手を掛けてくれてたんですね。


「あの人にその辺りの女の子の機微を理解してって言っても無理なんだろうなぁ」

「あの人?」

「あ、親戚の人。その人の料理って不味くはないんだけど、大雑把だったり肉料理が中心だったりするんだよね」

「ふぅん」

「まあ料理の上手い下手は仕方ないとは思うけど、それより問題は最近よく私の話に『あぁ』とか『そうか』とかすごい適当に返事を返すの。

挙句の果てにはご飯食べてる最中に突然箸を持つ手を止めるから何かと思ったら『仕事の事でちょっと考え事してた』なんて言い出すのよ」


それでいて食べ終えた後はテキパキと食器を洗ってお茶を出した後は張り切って作業スペースでパソコンを広げるんですよね。

私と話がしたくないならそう言ってくれればいいのに。

あ、なんか思い出すとムカムカしてきました。



~~ 千歳Side ~~


お昼休みに万里がお弁当の蓋を開けると同時にため息をつくものだからどうしたのかなと思ったらお弁当の内容に不満があったらしい。

お弁当作ってもらえているだけありがたいと思ってしまうんだけど。

私の両親は共働きでふたりとも朝早くて夜遅いから一緒に食卓を囲むのなんて週に1、2回で忙しい月なんかは徹夜で帰ってこないなんてことも良くある。

それと万里の話に出てくる親戚の人って、いつも「あの人」って言っているからどうも同じ1人の人を指しているみたいなのよね。


「ねぇ。その親戚の人?って仕事で疲れてるだけじゃないのかしら。

晩御飯だって仕事から帰ってきてから作ってくれるのでしょう?」

「え、でも毎日18時過ぎには帰ってくるんだよ?

朝だって私の方が先に家を出るくらいだし」

「へぇ、それはすごいわね」


私の家とは正反対だった。

朝晩はしっかりと料理を作って一緒に食べるらしい。

私から見ればちょっと羨ましくなる話だけど実際にそうなったら私も面倒に思ってしまうのかも。


「『今日も学校は楽しかったか?』なんて自分から話を振っておいて相槌は適当とか意味わかんないんだよね」

「それはどうなんだろう。もしかしたら話下手なだけかもしれないわよ」


うーん、これは新しい環境でストレスが溜まっているのかもしれない。

恵里香の方を見ると彼女も私と同じように困惑しているようだし、ここはひとつ私達で気分転換をさせてあげるのがいいのかも。


「ねぇ、一つ提案なんだけど、お泊り会しない?」

「「お泊り会?」」


私の提案に3人ともが興味津々に聞き返してくる。


「そう。と言っても全員が誰かの家に泊まるとなると家の人の迷惑になるし、どこかに外泊となるとお金も掛かるし保護者の許可が必要になるだろうからそれは夏休みとかに取っておいて、今回は万里をそれぞれの家に招待するの。

1人くらいなら迷惑にもならないでしょう?寝るところだってちょっと狭いかもしれないけど一緒の布団で寝れば済むし」

「おぉ。良いねそれ。面白そう。えりりんは?」

「はい。私の家は広くないですけど、それでもよろしければ大丈夫です」


よしよし。優子と恵里香は賛成と。

あれ、でも肝心の万里が考え込んでしまった。


「万里。もしかして嫌だったかしら?」

「あ、ううん。私も良いなって思うんだけど、その。外泊とか大丈夫なのかなって思って。

ねえエルちゃん。どうなんだろう?」

『ご友人宅に泊まるのであれば何も問題はありません』


万里の左手に装着されているTZMからもOKが出た。

これで心配は何もないわね。


「よし、決まりね。

流石に今日からだと急すぎるから明日からにしましょう。

順番は提案者のわた……」

「はいはーい。私が1番が良い!」

「じゃあ優子の家が明日、私の所が明後日。恵里香は3日後で良いかしら?」

「ええ。お母さんにも伝えておきますね」

「よし、じゃあ私、お母ちゃんに明日の晩ごはんは豪勢なものになるようにお願いしてみる!」

「って、優子の狙いはそれね」

「あ、ばれた?」


頭に手をやっておどける優子を皆で笑う。

ま、食事が豪勢になるかはともかく、これで少しは万里の気晴らしになると良いのだけど。



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