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13.学校が終わった後は……

~~ 妹Side ~~


学校を出た私は家に帰る為に最寄り駅のいつものホームへと向かいました。

次の電車が来るまで5分ほど。


ブーッブーッブーッ


ん?携帯に着信です。

誰からでしょうか。って、え?エルちゃんから?


「えっと、もしもし?」

『突然の電話失礼します。マイシスター。

人ごみの中で大声を上げるのも憚られますので直接ではなく電話を介してみました』

「あ、なるほど」


言われてみれば確かに手首に着いているエルちゃんの声を私の耳に届けようと思ったら周囲の人にも聞こえるくらい大声を出さないといけないでしょう。

また周囲の人からも腕に向かって話しかけている姿は違和感を覚えられそうです。

なにせ周りを見渡してみてもTZMなどの腕に着けるタイプの通話装置を着けている人はほとんど居ません。

その点、こうして携帯電話で話すのはごく一般的です。


「それで、何かあった?」

『はい。もしご帰宅されるのであればここではなく、4番ホームになります』

「え、だって……あっ」


そうでした。

ついいつもの感覚で居ましたけど、今はあの人の家に帰るんですよね。

でも、うん。


「エルちゃん。寄り道しても良いかな?」

『遅い時間にならないのであれば問題ありません。あと危険な場所に向かうのでなければ』

「うん、それは大丈夫」


私はエルちゃんに確認を取った後、ちょうど到着した電車にそのまま乗り込みました。

そしてやって来たのはお父さんとお母さんと一緒に暮らしていた家、のあった場所。

今は既に現場検証なども終わっているのか瓦礫すら撤去された荒れ地だけが残っていて、ここに何かがあった事を示すように立ち入り禁止のロープだけが張られていました。


「……」


ここに来たら何かあるかなって思ったのですが、予想に反して特別胸を過ぎるものはありませんでした。

何もなさ過ぎて現実味がないのかもしれません。

先生との会話の事と合わさって折角学校に行けて楽しかった気持ちが沈んでしまった事だけは確かですが。


「……帰りましょう」


自分に言い聞かせるようにつぶやいた後、あの人と暮らすマンションに帰りました。

あの人は……居ないみたいです。

時刻は4時を少し回ったところなので、きっとお仕事ですね。


「エルちゃん。あの人が何時ごろに帰ってくるか分かる?」

『少々お待ちください。……確認しました。18時頃になるそうです』

「そうなんだ。残業とかは無いんだね」


お父さんだったらよく残業で20時とか遅いと22時過ぎて帰宅することもあったので、それに比べるとあの人の仕事ってそれ程忙しくないのかもしれません。

昨日までだって会社に行ってませんでしたし、夜に居間でちょっとパソコンを触ってたくらいしか見てません。


「もしかしてあの人の会社って暇なのかな?」

『……私からは何とも』

「エルちゃん?」


どことなくエルちゃんの声が無愛想な気がしました。

あの人の会社がエルちゃんの開発元だって言ってたし、もしかして怒ってしまったのでしょうか。


『いえ、すみません。私はあの方の会社の業務内容は把握していないのでお答え出来なかっただけです』

「あ、うん。それもそうだよね」


言い直したエルちゃんはいつものエルちゃんの声だったのでさっきのは私の気のせいですね。

幾ら最新の人工知能でも人と同じように喜怒哀楽を感じる訳ではありませんし。

それよりも、あの人が18時に帰宅するっていうことは夕飯は19時過ぎでしょうか。

まだ時間がありますし、ちょっと小腹が空きましたね。

えっと冷蔵庫には、ミルクプリンにカスタードプリンに焼きプリン?

今日はプリン尽くしです。

もしかしてあの人、突然プリンに目覚めたとか?ってそんな訳ないですよね。

うーん、この3つなら焼きプリンでしょうか。

折角なのでお皿に盛り付けたあと、寝室で携帯を弄りながら食べることにしました。

それからネットニュースを見たり、みんなとチャットで会話してたりしたら18時を過ぎていました。

あの人は、まだ帰ってこないしもう一つプリン食べようかな。



~~ 兄Side ~~



時計を確認すれば既に19時を過ぎていた。

エルから連絡が来て18時頃に帰るって伝えてたから、万里がお腹を空かせて待っているかもしれない。


ガチャッ

「ただいま」

「あ、おかえりなさい」


おっ。普通に返事が返って来た。

昨日はまだぎこちなかったから、少しは距離が縮まったんだろうか。


「遅かったですね」

「ああ、ごめんな。帰りがけにトラブっちまって。

それよりお腹空いてるよな。お風呂もまだか。

急いで準備するからもうちょっとだけ我慢してくれ」

「あ、はい」


俺は鞄を置いてスーツの上着だけハンガーにかけた後、まずはお風呂の給湯器を操作してお湯を溜めてから夕飯の準備に取り掛かった。

このバタバタした感じは初めての体験かもしれない。

今まで一人暮らしの時は夜遅くに帰宅したらシャワー浴びてコンビニ弁当かプロテインドリンク飲んで寝るで良かったけど、万里の為を思えばシャワーじゃなくお風呂に入れてあげた方が良いだろうし、出前とかコンビニ弁当よりも手作りご飯の方が良いに決まっている。

ちなみにその万里は今は椅子に座って携帯を弄ってる。

ひと昔前だったら「テレビでも見て待ってて」っていう所だけど、うちにはテレビはない。

ニュース見るだけだったら携帯かパソコンで十分だからな。


「ご飯より先にお風呂が沸くから先入ってしまってくれ。出てくるころにはご飯も出来るから」

「はい、分かりました」


そろそろと動く気配を後ろに感じながら俺は料理に集中する。

今日は祖父が大好きだったザンギ(鶏のから揚げ)だ。何でも祖父の奥さんが北海道の人だったらしくて生前は良く作ってくれたんだと料理する度に自慢していた。

仕込みは朝のうちに済ませてあるし、後は揚げるだけなんだけど、いかんせん油が跳ねるから注意が必要だ。

そして無事に夕飯が出来た頃にあの子もお風呂から出てきた。


「上がりました」

「うん。ご飯も出来てるから一緒に食べよう」

「はい」


ふたりで居間のテーブルを囲んでご飯を食べ始めるも、思ったより万里の箸の進みが遅い?

もしかしてあまり好みの味じゃなかっただろうか。

なら今後は作るのを控えるか、と言いたいところだけどそうすると少ないレパートリーが更に減ってしまうんだよなぁ。


「ところで、学校はどうだった?楽しかったか?」

「はい。久しぶりにゆっこ達、あ、お友達にも会えましたから」

「そうか。それは良かったな。明日以降も学校に通うって考えてて良いか?」

「はい、大丈夫です」


学校の話を振ると表情が明るくなったところを見ると学校に行かせたのは正解だったみたいだ。

きっとこの先幾つか問題は起きるんだろうけど、それを恐れて家に閉じ込めておく訳にもいかないからな。

まあ逆境や苦労が人を成長させるとも言うし、俺は俺に出来る範囲でサポートしてあげるしかないか。



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