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12.担任のNGワードあれこれ

いつもお読みいただきありがとうございます。

この作品に登場する残念な人達はプロット段階と比べてこれでもかなり真面な状態になってるんです。実は。

~~ 妹Side ~~


放課後。

私は担任の水元先生に呼ばれて職員室に来ていました。

水元先生は今年25歳で担当は生物です。


「坂本さん。まずは無事に復学してくれて安心しました。

ご両親に不幸があったのに気丈に振る舞っているあなたはとても立派だと思うわ」

「はい、ありがとうございます」

「私も5年前に母を事故で亡くしているからあなたの気持ちはよく分かるの。

あの時は私も何日も泣き明かしてしまったわ。

でも父は涙の一つも見せずに仕事に向かっていって、すごく裏切られた気分になったのを昨日の事のように覚えているわ。もうこの世に自分のそばに居てくれる人は誰も居ないんじゃないかって絶望したものよ。

でも幸い祖母が居てくれたお陰で立ち直れたの。ひとりでも自分を想ってくれる人が居ると思うと元気が出るわよね。

だから忘れないで。私だけは絶対に何があってもあなたの味方ですからね。

困ったことがあったら何でも言ってね」


途中から目を潤ませながら熱弁する水元先生ですが、これどうしましょうか。

まさかあの人から言われていたNGワードが立て続けに2つも出てくるとは思いませんでした。


『いいか。本当の意味で他人の気持ちが理解できるのは神様か超能力者か魔法使いだ。

だからもし仮に「君の気持ちは分かっている」なんて言って近づいてくる奴が居たら注意しなさい。

そいつは分かってて言ってるなら詐欺師だし、分からずに言っているなら自己陶酔甚だしい犯罪予備軍だ。

それと「自分だけ」なんて表現する奴も同じ理由で注意すること。

例えば「自分だけがあなたを助けられるんだ」とかな。

実際問題、そいつだけなんてことは無いし、そいつが本当に助けてくれるかも分からない。

それでいて邪険に扱うと「自分はあなたの為を思って言ったのに裏切るなんて信じられない」って言って手のひらを返したように敵対してくるんだ』

『……まるで見てきたかのように言うんですね』

『ああ、実際見てきたというか俺自身が昔そういう奴に絡まれた経験があってな』


そう言っていたあの人は酷くうんざりした顔をしていました。

普段温厚なあの人がそんな顔をするくらい大変だったんでしょう。

だから私は先生に対してあえてぼかした回答をすることにしました。


「……はい。その時が来たらよろしくお願いします」

「ええ、任せてね。あ、それと先日あなたの親戚と名乗る若い男性が来たのだけど、あの人とは出来るだけ距離を取ったが良いと思うわ」

「は?」


若い男性ってことは間違いなくあの人ですね。

今の状態であの人から離れようと思ったらあの家を出るしかないですし、そうなったら生きていけない気がします。

先生は私をどうしたいのでしょう。

あと『大して知りもしないのに俺、というか保護者の悪口を言って自分の方が良いという人』というのもあの人が例に挙げた要注意人物を判断する項目です。

お陰で今の私は先生の話を聞けば聞くほど、それこそ先生との距離を取りたいと思って若干身を引いてしまいます。

先生はそんな事、気付きもしていないようですが。


「年の近い男性が同じ家に暮らしているって言うだけでも変な噂が立つ可能性はあるし、今はまだ大丈夫かもしれないけど、そのうち本当にあなたが逆らえないのを良い事に人には言えないような事を要求してくることだって考えられるわ」

「いえ、あの人に限ってそんなことは」

「無いって言いきれる?無理でしょ。若い男なんて下心の塊みたいなものなんですから」


そんな決めつけられても困るのですが。

それに以前バスタオル姿の私を見てもあの人は眉根を寄せて難しい顔をしただけですし心配はいらない気がします。

あの人からしてみれば私なんてまだまだ子供なんじゃないでしょうか。

だからこそ、あれほど注意してくるんだと思いますし。

でもここで下手に否定したりあの人を擁護するような発言はしない方が良いのでしたっけ。


「ちなみに、あの人以外におうちに年の近い男性は居るのかしら」

「いえ、居ません」


むしろあの人しか居ませんが。どうやら先生にもその辺りの話はしてないようですね。

まぁ今の先生に何を言っても無駄な気もします。


「そう。それなら警戒すべきはあの人だけね。

あと出来れば落ち着いてからで良いので家庭訪問をさせて欲しいのだけど、坂本さんを引き取った親戚のご両親に話をしておいてもらえないかしら」

「……あの人はなんて言ったんですか?」

「断固拒否されたわ。

『一教師でしかないあなたが我が家に来たとして。そしてもし仮に何か気になることがあったとしても、あなたに出来ることは何もありませんから』ですって。

思い出しただけでも腹が立ってくるわ。何様のつもりよ。

だからあの人では話にならないから、その上のご両親に話を付けたいの」

「はぁ。分かりました。でも期待はしないでくださいね」


あの人の家族には会ったことが無いのですが、実家に居るのでしょうか。

というか実家がどこかも知らないし、あの人の家族構成とかも知りません。

まだまだ知らない事だらけです。家に帰ったら聞いてみようかな。

そして先生は何かブチブチとあの人の悪口を呟いています。

よっぽどさっきの話をされた時の事を根に持っているんですね。


「あの、お話は以上でしょうか。

久しぶりの学校でちょっと疲れたので今日は早めに休みたいんですけど」

「え、ああ。そうね」


先生に断りを入れて職員室を出ました。

それにしてもあの人が先生にあったのって多分1回か2回くらいだと思いますけど、随分嫌われてましたね。

いったいどんな話をしたんでしょうか。


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