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10.変わらない学校

午前中の授業は、何というか拍子抜けするくらい普通に過ぎて行きました。あ、もちろん1週間休んでいた分、内容は進んでいるんですが、分からないのなんて数学の公式くらいでした。

あと教科書とかは朝みんなと挨拶した後に急いで購買で買ってきました。

その費用はもちろんあの人が出してくれてます。

でも中学生の私に気軽に5万円を渡したりして心配にはならないのでしょうか。

洋服の事と言い、あの人はどこか金銭感覚がずれているのかもしれませんね。


キーンコーンカーンコーン♪

「よぉし、お昼だ~」


チャイムと同時に声を上げながら伸びをする金井君。

2年生になったばかりの頃はクラスの皆はそれを見てクスクス笑ってましたけど、今はもう慣れてしまいました。

あれを聞くとチャイム以上にお昼になったんだなって実感します。


「万里っち。ご飯行こ~」

「うん」


声を掛けてくれたゆっこ達と一緒に食堂に向かいます。

うちの学校は高校も付属しているお陰で食堂の広さには定評があります。

なので学食を買わずにお弁当を広げている人もちょくちょく見かけます。

私達で言うとゆっこはお弁当で千歳と恵里香ちゃんは学食です。


「へぇ。万里はお弁当なんだ」

「うん。今日から学校に行くって事で親戚の人が持たせてくれたの」


私の持っている紺のお弁当袋を見て千歳がちょっと驚いたような声を上げました。

他のふたりも私のお弁当に興味津々のようです。

なので早速お弁当の蓋を開けると。


「「お……お?」」


思わず私を含めた皆の口から微妙な声がもれました。

お弁当の中身は7割ご飯で3割おかずです。

おかずは、昨夜のミニハンバーグと朝ごはんに出ていたカブとナスの朝漬け。

ご飯にはゆかりとおかかのフリカケが掛けられてます。

うーん、これ女の子のお弁当としてはどうなんでしょう。

色合い的にも微妙だし、もうちょっとおかずをどうにかして欲しいのですが。


「美味しそう……だね」

「う、うん」

「ま、味は分からないけど作ってもらえるだけ感謝すべきなんでしょうね」

「だよね。はは」

「親戚のおばさんの得意料理なのかもしれないですよ。そのハンバーグ」

「え、あ……どうなんだろう」


恵里香ちゃんの発言に思わず目を逸らしてしまいました。

おばさん、じゃないんですけど。でもあの人から、


『他所の人に若い男性に引き取られたって言ったらそれだけで心配される可能性もあるから、俺の事を聞かれたら【親戚の人】とだけ伝えるようにして、性別や年齢、家族構成なんかは出来ればはぐらかすようにしなさい』


と言われていたので、曖昧に頷いておきます。

私もみんなに余計な心配はかけたくないですからね。

ちなみに味の方は不味くはないです。特別美味しいって訳じゃないから普通でしょうか。

若干ゆっこが食べたそうにしてたけど、これでハンバーグが無くなったらほとんどふりかけご飯です。

おかずの取り換えっこは明日以降に期待してください。

そうして昼休みもいつも通り楽しく過ぎていきました。



~~ 恵里香Side ~~


修学旅行から1週間が経った日の夜。

その日は待ちに待った連絡が携帯に届きました。


『From 万里』


修学旅行の2日目の朝に突然先生に連れられて帰っていった私達の親友からのメール。

万里さんの身に何があったのかは地元に帰った後でニュースで流れていたのである程度は知ることが出来ました。

楽しいはずの修学旅行の思い出は悲しみで塗りつぶされました。

ニュースを見た私達は一度集まることにしました。


「ねぇ。万里っち大丈夫かな。連絡とかしても大丈夫かな?」


いつもは明るい優子さんも見たことない程不安そうでした。


「今すぐはやめておいた方が良いわ。万里も大変だろうし」

「そうですね。せめてその、お葬式が終わった後くらいの方が良いでしょうね」

「そっかぁ。お葬式に私達は行けないのかな」

「先生の話では親戚だけで行うらしいわ」


先生ですら行けないということは私達も無理だという事です。

つまり今すぐ出来ることは万里さんの無事を祈ることくらいです。

せめていつ戻って来ても良いように授業のノートはいつも以上に丁寧に取っておきましょう。

そうして3日前から送り始めたメールは返信が来ることは無く、まだ大変なのだろうか返信出来る状況に無いのか、そして無事なのだろうかと心配になってきた昨夜。ようやく返信が来たんです。

文面はそれ程長くはなくて、心配してくれたことへのお礼と、今日から学校に行くという事が書かれていました。

だから私達はいつもより30分も早く登校して待っていました。


ガラガラッ

『『……来た!!』』


1週間ぶりに登校してきた万里さんは、多少やつれた感じはしますが顔色とかは悪く無さそうでした。

でも挨拶してみればやっぱり空元気で何とか取り繕っているのが分かります。

それも当然ですよね。ご両親を突然亡くしてまだ1週間しか経っていないのですから。

私がもしお母さんに死なれたら1週間経っても寝込んでいるか、最悪後を追ってしまったかもしれません。

だから万里さんが元気になれるように私達でサポートしていきましょう。

と言っても突然あれこれ世話を焼くのも逆に気を遣わせてしまうので、いつも通り明るく元気にです。

その辺りは優子さんの得意分野ですから期待してますよ。

ただ、ちょっと気になるのは親戚の話をするとぎこちなくなるのですが、あまり触れて欲しくない話題なのでしょうか。

私はそっと千歳さんに目配せしつつ振る話題を選ぶようにするのでした。



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