表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/10

1 アラサー女騎士師団長ババア呼ばわりされる

2作目です。よろしくお願いいたします。

「おいおい。今度の遠征、とうとうテレーズ師団長とこだぜ?」

「はぁーあ。ババアと一緒かよ。無駄に気を遣うんだよな」

「でも一応女だからな。でも、遣う必要のない気を遣うのが、精神的にキツイんだよな」

「ババアは、早く辞めたらいいのにな。って、辞めれる要素がないから無理か? ギャハハ」



 おーい。お前達ー。しっかり本人に聞こえてますからねー。今度の遠征の時、覚えてろよ!!

 特にババアと言った奴、ナタンって名前だっけ? しっかりブラックリスト入りしたからなー!!

もう片方は……。ま、一般的な意見だから許容範囲だな。あれにまで目くじら立てていたら、私が狭量だと思われるか。うん、許そう。


 ババア呼ばわりされている私、テレーズ・リヴィエ。アラサー女子。いや、アラサーですって言うと、20代も入って良い表現なんだよね。本当は31歳ですけど。




 ここ、サレイト王国で、女騎士なんてしているのは私1人だけ。いや、毎年、新人の女の子も入団はするのだ。しかし、1年も経たずに退団する。

 理由は簡単。数少ない女性騎士はモテにモテ、すぐに結婚して辞めていく。そりゃあ自分が男だったら、危険な騎士なんて仕事、しないで欲しいと思うけど……。


 そんなんだから、新人女性騎士は『今年の嫁候補』なんて言われたりするんだよ。お見合い目的じゃないんだからさ、毎年入団時期に、浮かれんなよな!! ほんと勘弁してほしいわ。




 私は、18歳で入団しているから、それなりに立場は上だ。同じ階級の者は4人いるが、これでも団長、副団長に次ぐ師団長だ。あんな下っ端新人の言う事なんて、全く気にならないんだよー。

 ……ウソです。『ババア』は傷つくよ。年月は平等に過ぎるんだから、自分だってジジイになるんだからねって、すごく言いたい!!



 入団して来たばかりのヒヨッコは、半年間の研修中に、ローテーションを組み、各師団で訓練を受ける。そこで資質を見極め、本人の希望調査も出来るだけ反映させながら、各師団に配属されていくのだ。

 第1から第5師団まであるが、私は第4師団の師団長。うちはテイマーを集めた師団だ。あのナタンってガキは、私の可愛いププちゃんに、お灸を据えてもらおうかね。フフフフフ。



 どうやってナタンを懲らしめてやろうか考えていると、第5師団長のダミアンが来た。これまた、ネチっこいのに見つかったな……。

 師団長になるまで知らなかったが、第5は計略と事務担当以外に、裏の仕事も担っている。この国の騎士団は暗部も抱えているのだ。


「随分新人に可愛がられているみたいですねぇ。いただけないなぁ。私以外に意地悪されるなんてぇ」


 そう言って、私の髪をクルクルと自分の指に絡めてくる。まるで、蛇の様な男。あまり関わりたくない奴だ。


「あー。テレーズとダミアンが一緒にいるー。ねえねえ、何の話をしてるのー?」


 パタパタと走って来たのは、第3師団長のエミール。弟みたいで可愛いのだが、あざとい。自分の見せ方を知っているタイプだ。


「エミール! 話はまだ終わっていない」


 そう言って、ドカドカとエミールを追いかけて来たのは、第2師団長のテオドール。曲がった事が大嫌い。融通がきかない堅物だ。


「せっかく4人が集まったから、今度の遠征について打ち合わせでもする?」


 なんだかんだで、私も仕事人間なのだ。時間は有効に使おう。


「ミカエル不在でやるのは、まずいのではないか?」

「僕もそう思うなー」

「私も、後々面倒事になるのは嫌ですねぇ」


 はぁん? みんなミカエルを気にし過ぎじゃない?


「別に、後で報告すればいいじゃない?」

「はぁ!? ダメに決まってるだろ!!」


 ビクッとして後ろを振り向くと、第1師団長のミカエルが立っていた。


「みんな、俺が来たことに気づいていたのに。お前はププがいないと本当にダメなやつだな」



 全師団長が揃ったので、まずは、軽く私の脳内にある、各師団長の紹介を見て欲しい。


 第1師団師団長 ミカエル――すかした奴――前衛担当で剣の騎士

 第2師団師団長 テオドール――真面目堅物――護衛担当で盾の騎士 

 第3師団師団長 エミール――弟キャラ――魔法担当で魔法の騎士

 第4師団師団長 テレーズ――アラサー女子――テイム担当で魔物の騎士

 第5師団師団長 ダミアン――蛇男――計略と事務担当、実は暗部担当で知恵の騎士


 ザックリとこんな感じだ。この体制で魔物や悪人と日々戦い、民の生活を守るのが私達、王国騎士団だ!

 そう、私達は民のあこがれ! みんながウットリ、私達騎士を眺めるのだ!

 ……って、これは嘘……。現実は違うのよ。


 みんな、花形の第1や第3と、王族を護る第2が好きだ。うちは怖がられる事も多いし、第5はほぼ表に出ない。憧れの騎士様は123なのだ。



「で、次が最後の新人遠征だろ? それぞれ目ぼしい新人はいるのか? 取り合いするのも面倒だしな? そろそろ協議を開始するから考えておいてくれ」


 いつもミカエルは、何故かいつの間にかリーダーみたいになる。花形師団だからって仕切らないでよね! みんな同格なんですからね!


「うちは癖が強いですからねぇ。でも、何人かは考えていますよぉ」


 ああ、蛇に睨まれた蛙さんがいる。


「うちも大体決まったかなー」

「私は最後まで見ないと、何とも言えないな」

「テレーズはどうなんだ?」

「それを聞いてどうなるのよ? どうせ他所で余った人材が、いつもうちに来るじゃない?」


 本人の希望調査の前に、気に入った新人がいれば、師団長が直接、口説き落とす場合もある。

 でも大抵123に希望が殺到し、あぶれた者がうちの第4に来る。ちなみに第5は、1度蛇に睨まれると、その新人は9割9分、第5に希望を出す。

 残る1分は逃亡者ね。恐ろしや……。



 **********



 ――そうこうしているうちに、今年最後の、新人訓練の遠征が始まった――


 え? なんですか、この不審人物は!?

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] 31なら日本じゃまだ若い方ですよね。でも陰口を聞くと凹みますよねぇ。それはともかくなかなかに個性豊かなメンツが揃ってるようで、面白いですね。
2021/10/12 21:34 退会済み
管理
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ