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その後、ハナとしっかり相談をしたヨシヤは王都にとうとう一軒家を手に入れたのである。
といっても現金一括払いなんてとてもじゃないが無理な話である。
最初はとりあえず頭金だけでも稼いでから……と思ったのだが、そこはやはり王太子妃と辺境伯に相談しただけのことはあった。
彼らはなんとヨシヤのためにその一軒家をプレゼントしてくれたのである。
もちろんそんな高額プレゼント、贈与税はいくらだよ? などという現実的でありながらこの世界では非現実的な心配をしつつ、権力者からのそれを断るという術を知らない男は受け取るほかなかったのである。
恩を売られたという形になってしまったのではないかと危惧するヨシヤだったが、王太子妃にしろ辺境伯にしろ、どうやら『女神ブロッサムへの寄進』という純粋な気持ちらしい。
規模が違った。
それだけの話である。
とりあえず庶民と偉い人は感覚が違うんだなあなどと思いながらも、家がゲットできてヨシヤたちも満足。
ブロッサムさまの使いであるヨシヤに物(?)を贈れたことであちらも満足というウィンウィンの関係で終わったのである。
ただ、よそさまでそれをやると利用されかねないから気をつけろと一応忠告はされたが。
ならお前らもするなと小さく八木がボヤいていたことをヨシヤは聞かなかったことにした。
なんせ、大人なので!
大人の事情ってやつには首を突っ込まない方がいいってことの方が大半であることを大人だからこそヨシヤは理解しているのだ!
「……いやでもイイトコだなあ」
「さようですね、ヨシヤさま」
広々とした造りの三階建てであった。
日当たりも良く、眺めもいい。
大通りから一本外れたところに位置しているとはいえ、家の前には舗装された道もあり馬車通りも十分だ。
厩と家具もついているではないか。
部屋数も十分であることから、三階に夫婦の部屋、二階に八木の部屋とすることにした。
八木は恐縮していたが、何かあった際にはこの家を守ってもらうことを前提にハナがそう決めたのだ。
さすがにあっちゃんやエイト、その他虫たちをそのまま闊歩させるわけにはいかないので、彼女たちは神域にお留守番組であった。
だが極小サイズ(通常の虫サイズ)の蟻と蜂は数匹ずつ、家の各所で護衛としてしっかり待機済みである!
「どうだいハナ」
「ええ、大丈夫」
家のドア、ギリギリまで。
それが今のハナの限界だ。
たとえそれでも、窓を開ければその視線の先には人々が暮らす風景が広がり、声が聞こえる。
その様子に目を細めて嬉しそうに笑う妻を見て、ヨシヤはとても満足したのであった。




