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妻が女神になりまして!?~異世界転移から始まる、なんちゃってスローライフ~  作者: 玉響なつめ
第七章 それなんてホラー?

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 ヨシヤは八木と共に神域に戻った。

 酷く憔悴した様子の彼を見て、蟻たちも一気に警戒態勢を強めたが、敵の気配は一切ない。


 一体どうしたことかと八木に詰め寄るものの、八木もよくわからないと首を振るばかりだ。

 どちらかというと命の危険を感じただけかもしれないが。


 ヨシヤはハナの元へ一目散に行くと、彼女の肩を掴んで「どうしよう」と呟いた。


「ど、どうしたの? ヨシヤさん」


「外義が現れた」


「えっ、そ、外義って……あの外義?」


「そう、その外義だよ! 前に話した勇者……あれって外義大亜なんだ!!」


 王太子妃の語った勇者、ダイア・ソトギ。

 それは夫婦にとって、恐怖の象徴だった。


 外義(そとぎ)大亜(だいあ)に二人が出会ったのは、当時彼女が十九か二十歳くらいの頃で、夫婦は子ができないことに嘆きつつもそれを受け入れながら日々を大切に生きていた頃だ。

 といってもほんの五年ほど前のことであるが。


 その頃ハナがパートとして働いていたカフェの客としてやってきた外義大亜は普通の少女だったとハナはいう。

 毎日同じものを買ってどこかへ行く彼女を、ハナはどこかの学生さんだろうと思っていた。

 事実他のパートやアルバイトたちもそのような認識だったし、毎日来ることから次第に挨拶をするようになった。

 そしてそのカフェで、外義大亜もまたアルバイトをするようになったのだ。


 彼女の生い立ちはあまり良いものとは言えず、そのせいで人付き合いも苦手で迷惑をかけるかもしれない……と店長経由でハナたちは説明を受け、ヨシヤも妻からその話を聞いて同情したものである。

 子を儲けながらも愛せない親というのは存在するし、愛したいのに恵まれない夫婦も存在する中で、やはりそんな話を聞くと胸が痛むのだ。


 だがそれは、次第に恐怖へと変わった。


 外義大亜との付き合いは「外義さん」から次第に「大亜ちゃん」くらいまでの親しいものとなり、ヨシヤもハナを迎えに行く関係で挨拶をしたこともある。

 夫婦には子供がいないこと、温かい夫婦関係を見て羨ましいなんて言われて照れたものだが、次第にその発言は怪しくなっていったのだ。


『アタシ、二人の子供で生まれたかったなあ』


『いいなあ、ハナさんの旦那さんになれるって最高ですよね』


『ハナさんはアタシの憧れ』


『ハナさんをお母さんにしたい』


『ハナさんと一緒にいたい』


『ハナさんの横にいるのはアタシがいい』


 等々、過激になっていく発言にハナも周囲も段々と彼女と距離を取り始める。

 だがそれも効果なく、むしろ離れれば離れるほど外義大亜という女は照れているのだと感じてにんまりと笑みを浮かべながらハナとの距離を詰めようとするのだ。


 さすがにそれを危険視した店長が注意をし、二人のシフトがずれるよう調整してくれたことで一度は落ち着いたと思ったものだが、そこで話は終わらなかった。


 なんと、ハナを待ち伏せするようになったのである。

 酷いときはアパートを出る時に家の前に来るようになったのだ。


 ヨシヤも働いている以上、送り迎えが常にできるわけではない。

 特に何かをされたというわけでもないために、警察も動いてくれない。


 とにかく夫婦は困り果てた。

 外義大亜は何かをしてくるわけではなかった。ただハナの姿を見てはにんまりと笑うのだ。


 要するに、ストーカーになったのである。


 何がきっかけだったのかはわからない。

 悪戯電話のようなものはなかったし、姿を見せてハナと視線が合うとにんまり笑う、それだけだ。

 だが十分気持ちが悪い。


 ヨシヤも何かをされたわけではない。

 どちらかというと空気扱いと言った方が良かったかもしれない。


 だが最終的に、外義大亜は逮捕された。

 前科がなかったためにすぐ釈放されたというが、彼女の実家とやらが引き取っていってくれたおかげで夫婦には平穏が戻ったのである。


 そのストレスだった日々を思い出すと、今でもヨシヤは胃が気持ち悪くなるのだ。


「ハナ、いいかいできるだけ外に出ちゃダメだブロッサムが君だとバレている可能性はあるしどうして異世界まできてアイツがいるのかわからないけどとにかく……」


「ヨ、ヨシヤさんおちついて!」


「俺がこの世界にいるってきっとアイツは気づいてるんだ。じゃなきゃわざわざよその国で召喚されたのに、こっちまで来ているのはおかしい」


「……」


 平和な日々だった。

 だがあの外義大亜がハナをもし諦めていなかったなら、盗聴器が残されていたら、あるいはまたストーキングしていたら?


 自分たちが異世界に飛んだ(・・・)から追いかけてきたと考えるのは突拍子もないことだとはヨシヤも思うが、それでも不安は拭えなかったのである。


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