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あれから、驚きの展開が神域では繰り広げられた。
まず、コカトリスたちはキラキラとした輝きの中で一晩経ったら元気になった。
幸いな事であるが、彼らは何と命の恩人であるヨシヤとハナ、そしてアーピス様に忠誠を誓ったのである。なんてこった。
とはいえ、ヨシヤのジョブは蟲使いである。
そのため、契約は不可能だ。
かといって、感謝の気持ちで尽くしたいと願い出てくれている(であろう)彼らを突き放すのはこのお人好し夫婦に出来るはずもない。
というわけで、コカトリスたちはアーピス様のお世話係になったのである!
アーピス様の不思議な効果とハナの神域効果、双方の影響を受けたからなのかコカトリスたちはその翼を手のように動かし、ブラッシングやら水くみやらを始めたのだ。
なんと器用なことであろうか。
ハナがなんとはなしに家に戻ったかと思うとコカトリスたちサイズのメイド服を作り出し着せて楽しそうにしていた。
ヨシヤは後で知ったことではあるが、なんとこのコカトリスたち、全部メスだったのだ。
かくしてこの神域にメイド服を着たコカトリス――通称『メイド鳥』部隊が誕生したのである!
「え、ええと……じゃあ、ええと……彼女(?)たちが暮らす鶏小屋? この場合コカトリス小屋? もハナ、作ってあげる……?」
「でもアーピス様が普段からあそこに寝っ転がっているから、彼女たちも遠慮しちゃうんじゃないかしら……まあ、この神域なら寒かったり雨風に晒される心配もないから」
「あ、うん。そうだね」
一件落着である。
そしてハシビロコウの卵であるが、こちらもメイド鳥部隊が面倒を見てくれることになった。
一応、鳥類仲間ということで。
ハシビロコウの生態についてはそもそも詳しくない夫婦だが、ここは神域であるし天敵はいないのだ。食物は多くあるし、生命力に関しては女神の加護といいかアーピス様もいるしきっとなんとかなるだろう精神での育成である。
要するに、行き当たりばったりだ!
天敵はいないにしろ、万が一なにか侵入しようものなら蟻と蜂がまず黙っていないし、コカトリスたちだっている。
(よくよく考えたら物騒な神域になってないかな?)
そんな考えがヨシヤの脳裏を掠めたが、彼はそれに気がつかないことにした。
気がついてはいるのだ。でも気がついたことを認めてしまうとなんとなくいけないような気がしたのだ。
ヨシヤは、穏やかな人生を送りたい平凡な男なのである!
「よし、ハシビロコウがいつ生まれてもいいように魚でも釣ってこよう」
適当に遊んでいるサボリ部隊の蟻を何匹か連れて、ヨシヤは湖へと向かう。
蟻には必ずいるという、二割のサボる蟻たち……それは余剰戦力と呼ばれるものらしい。
でもおかげでヨシヤが独りぼっちになることはこの世界に来てから、一度もない。
ちなみに、あっちゃん率いる蟻たちにとっての余剰戦力っていうのはどうやら交代で休日をもらった蟻たちのようなので、ヨシヤが知るサボリ蟻の話とは違うのかもしれないと彼は思う。
虫嫌いのヨシヤはなんとなくそんなことをテレビが言っていた気がするレベルでしか知らないし、ここは異世界なのだ。
深く考えるだけ無駄である。
「まあ、そうだよな」
神域が賑やかで、愛する妻がいて、自分の夢が叶っていっている。
それが大事である。
若干違うところもあるし、なんとなく彼が思い描いていたものから斜め上に発展している気がするが、そこんとこは些末なことだとヨシヤは考えている。
そういう意味で、ヨシヤは懐が深い男であった。




