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妻が女神になりまして!?~異世界転移から始まる、なんちゃってスローライフ~  作者: 玉響なつめ
第四章 ニューアイテム、これで大丈夫!?

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 結論から述べれば、ヨシヤは任務を遂行できなかった。

 神域に戻り泣き崩れる彼を、蟻たちが必死で慰める。

 でもゴブリン玉を周囲に並べるその姿は怪しげな儀式を行う虫モンスターとその生け贄にしか見えないから止めてあげてほしいところである。


 絶妙に匂うそれらも今のヨシヤにはあまり気にならない。

 膝を抱えて泣いているので見えないし、泣きすぎて鼻が詰まっているからだ。

 若干、ニチャッとか聞こえてはいけない音が聞こえるので冷静になってきた彼は顔を上げるに上げられない状況を察知はしているのだ。


「あらまあ」


 そんな中、驚いたような声が聞こえてヨシヤは顔を上げる。

 最愛の妻が、バスケットを片手に歩いてくる姿を見て彼は慌てて立ち上がり、自分をぐるりと囲むそれらに顔をひくつかせながら慌てて袖で涙を拭って妻の元に歩み寄った。


「ハナ……あの、ごめん……門前払いを食らって、その、食い下がれなくてだね……」


「ええ、ええ。大丈夫よ、ヨシヤさん!」


 そう、ヨシヤは勇気を出して門兵の所に行ったのだ。

 そして正式な手続きをして領主様に面会したいと申し出たのだが、一顧だにされないどころか槍を突きつけられてとっとと帰れと乱暴に追い払われたのである。


 ここですごすご逃げ帰ったのかと言われればその通りだが、ヨシヤはきちんと護衛の蟻たちが暴走しないように押しとどめたのだからそこはきちんとしていた。


 だが、食い下がろうにも突きつけられた槍の恐怖は拭えない。

 今まで生きてきた彼の四十年に渡る人生で、実際にあそこまで命の危機を感じたことは……異世界についてすぐの森でオオムカデに出会った時以来だろうか。

 少なくとも、前の人生ではないほどの恐怖を感じたのは事実だ。


 異世界というよくわからない状況で、よくわからないままに妻が女神になったからとその恩恵に預かり蟲使いなるジョブを得て強力な眷属を手にしたとはいえ、ヨシヤ自身は変わらぬ平凡な中年男性である。

 しかも極気弱で、愛妻家なだけの、平和なタイプなのだ。

 だから彼が槍を持った男にすごまれて、怯えるなという方が無理である。


 かといって、そのように気の優しい男だからといって何もできないままに家に帰ったことを悔やまないはずもない。

 元々この偉い神様から与えられたチャンスクエストは、妻のためのものなのだ。

 それを成し遂げられない己がヨシヤにとってはなんとも歯がゆく、自分の無力さを感じずには居られない。


 ヨシヤだって大の男だ。

 成人して、もう二十年以上経つしこれまでだって苦労はあったし会社の嫌いな先輩からのプレッシャーや今でいうパワハラだってあったし、お局さんからぐちぐち言われることだってあったし、クレーマーに出会って胃をやられることだってあった。

 それでも、泣かなかった。ハナと結婚して、暮らして、たくさん嬉し泣きはした。

 彼女が妊娠しづらいと、婦人科でそう診断されて泣いていた時には、一緒に泣いた。


 でも、それだけだ。


 自分が情けなくて泣いたことなんて、ヨシヤにはない。

 自分が情けない時、彼はいつだって笑ってみせた。泣きたいなあなんて言葉を口から出しても、泣かずに飲み込んで自分の実力不足だといつだって前に踏み出すことを諦めない男なのだ。


 でも、今は悔しくなって泣いてしまった。

 そしてそれを妻に見られたことを、申し訳なくてまた泣けてくる。


「ヨシヤさんは頑張ってくれているわ。知らない土地に迷うことなく私と共に生きるためについてきてくれて、それだけでもありがたいのにいつだって頑張ってくれている」


「ハナ……」


「そんなヨシヤさんを責めるなんてこと、私にできるわけがないわ」


「ハナ、愛してる……!」


「私も」


 うふふと照れ笑いする妻に感動するヨシヤだが、彼女がバスケット以外に何かを持っていることに気がついて鼻を啜りながらそれを指さした。


「それ、なんだい?」


「これ? うふふ、これはね……!」


 得意満面でハナが布包みをしゅるりと解くと、そこには一つの仮面が現れた。

 白塗りのそれはどことなく見覚えのある、そう、あちらの世界で特撮ヒーローとして有名なものに似ていて、いや似ているんだけどそれとなく似ていないっていうか、多分似せようと頑張ったんだろうなと努力を感じさせる絶妙な似てないこの出来映えにヨシヤは色々な意味で涙が引っ込んだ。


「ハナ……さん? これは……?」


「これね! ヨシヤさんのために作ってみたの!!」


「お、俺のために……え、ええと……お面、だよね……?」


 どう見ても手作り感満載でお世辞にも上手いかと問われたらかなり疑問符が浮かぶであろう出来映えのソレをハナがにっこりと差し出した。

 本来ならばなんだそれと受け取ることを一旦保留しそうなものであるが、愛妻が彼のためにとこさえたものを、ヨシヤという男が断れるだろうか?


 否!

 彼にとって愛する妻、ハナが彼のために(・・・・・)作ったものは今まで一度だって断ったことはない!


 結婚当初、おかずに失敗して卵焼きで半分埋まった弁当を渡されても!

 夏場なのに熱々のお茶を渡されても!

 ケーキに迷って二人暮らしなのに十八センチのホールケーキを二個買ってきてしまっても!


 可愛い失敗、おっちょこちょい、そんな言葉で全て受け入れてきた男なのだ!

 これが愛のなせる業である。


 ちなみに、ハナは毎度反省して次は失敗しないタイプだ。


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