長いようで短い旅
アンリがついてき始めて三日くらい経った。
アンリは料理もできるし、多分俺より力がある。
······まぁ料理に関しては、例の果物ばっかり食ってるから見る機会なんてほとんどないけどな······。
さて俺達は今、ミラーレに向かっている最中だ。
しかし······
「疲れた、よぉー······」
ずっとこの調子だ。
アンリは確かに力はある。
しかしこうもすぐに休まれては、いくら山ほど果物があったとしても、着くまでになくなってしまうかもしれない。
「おいおい······まださっきの休憩地点から、十分も経ってないぞ······」
「うへぇー······」
アンリは地面に倒れ、尺取虫のようにゆっくり前に進む。
······いやなにやってんのさ。
「はぁ······使えるかどうかわからんが、やってみるか······『ピュインス』」
俺は初級強化魔法『ピュインス』を自分に使った。
この魔法は使った相手の力を少しだけ上げるという地味に使える魔法だ。
もっとも、現在のこの世界では残ってないようだけど。
「おお······!力が強くなった気がする!」
俺はそう言い、果物が大量に積まれている荷台を引いて進む。
すると、いつもと変わらないくらいの感覚で荷台を引くことができた。
「すげぇ······!効果も解くまで効き続けるし、めっちゃいいじゃねぇか!」
俺は歩きながらそう言う。
これなら予想より早くに到着できそうだ。
······と、思っていると、俺が身につけているマントが後ろから引っ張られた。
「······何するんだアンリ」
後ろを見てみると、やはりと言うべきか、アンリが俺のマントを引っ張っていた。
「だって······私の仕事が取られちゃいそうなのに······!」
あー······確かに俺がこれ引っ張ってたら、アンリがいる意味がないよな······。
「そりゃ悪い······お、そういやアンリに使うのにピッタリな魔法があったぜ······」
「何?ちょっと使ってみて?」
「おーけー、『スタナ』」
俺は初級強化魔法『スタナ』を使用する。
この魔法は使用した相手の持久力を上げるというものだ。
解くまでずっと効果は続くという便利さだ。
何故今まで使わなかったのだろう。
「おおー!なんだか今なら世界の果てまで行けそうですよ!」
アンリはそう言って起き上がる。
「おう、頑張れ」
「はいっ!行きますよぉッ!」
アンリはそう言い、荷台を引いて走る。
「ってああー!速すぎる!」
しまった!あいつは持久力がないだけで、力はあるし、足も速い。
あまりのアホさに忘れていたが······このままでは俺が置いていかれる!
「くそっ!『スタナ』!」
俺は自分にもスタナを使用し、アンリを追いかけた。
「待てやぁぁぁぁぁぁぁあ!」
俺は叫びながらアンリを追いかけ続けた。
結局、その日にミラーレに到着してしまったのだった。
短い気がしてなりません




