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トラブルはいつも突然に

俺は街から出て近くにあった小さな村に立ち寄った。

来る途中は何も無く、本当にただ静かなだけだった。

一人で旅ってのもいいもんだ。

しかし食料がつきかけたので、適当な村に立ち寄ったという訳だ。

今日は宿に部屋でもとって、明日出ていくか。

そんなことを考えて歩いていると、後ろから声をかけられる。


「ねえねえ君、旅でもしてるの?」


振り返ってみると、そこに居たのは俺と同年代くらいにみえる剣を腰に携えている白髪の女だった。

······この質問は一人旅が終わる可能性があるな······。


「ああそうだ。君は?」


「私はこの村で暮らしているだけよ。ここに来る人なんて珍しいから声をかけてみたの」


まあ普通はそんな感じだよな。

でもなんで剣を持ってるんだ?


「へぇ······あ、一つ訊きたいんだけど、食料とか売ってる場所はあるか?」


「食料?あー······今はちょっと難しいかな······」


「え?どうして?」


「いやー······最近畑の近くに魔物が寄り付いてね······荒らされてはないけど、収穫しようにも出来ないのよね」


魔物ねぇ······こりゃ俺が頼まれるパターン······


「だから私が追い払いにいくの!」


ありゃ?


「じゃあね!そのうち買えるようになると思うから、待っててね!」


そう言って彼女は走っていってしまった。

······大丈夫なのかねぇ······。


「またアンリか······勇者の生まれ変わりとか言ってる変わり者め······」


そんな声がどこからか聞こえた。

······ちょっと待て、まじでやばいんじゃないか?

さっき剣を持っていたが、あれは本物だったのか?

ジークに持たせてもらったが、あれがただの村娘に持てるとは思えない。

······助けてやらねぇと······。

そう思って俺は、彼女を追いかけて走った。


───────────────────────


俺が彼女を追いかけて畑に行くと、猿のような見た目をした魔物の前で座り込んでいる彼女を見つけた。


「う······ぁ······」


彼女が呻き声をあげる。

やっぱりこうなってたか······。

よく見てみれば腕から血が出ている。


「馬鹿野郎が······」


この世界には魔物の恐ろしさを伝える人はいないのか?

俺はジークから聞いたが、戦おうと思える話ではなかった。

だから馬鹿としか言えない。

でも、戦える力だけはあるらしい俺が助けてやらないと、彼女は殺されてしまうかもしれない。

······やってやるか。

俺は決心し、木刀を手に取って魔力を流し、彼女の前に立っている魔物を殴る。


「グギャッ!」


するとその魔物は小さな声をあげ、血も残さず消滅した。

俺は彼女を一度見る。

彼女は何が起こったか理解出来ていないような顔をしている。

それを見た俺は、まだ残っている魔物を見る。

さて、どうしてやろうか······。

周りが森だし、火は駄目だ。

水は畑にどんな影響を及ぼすかわからないし、やっぱりこの木刀で殴った方が早いか······。


「ちょっとの間、こっち見ない方がいいかもしれないぞ」


俺はそう言い、魔物に木刀に魔力を流しながら振る。

それが魔物に当たると、先程と同じように魔物は消滅した。

これは破壊魔法とか言うやつの影響か?

まぁ確実にそうだろうな。

そう考えながら、俺は三体目の魔物を木刀で殴る。

身体が勝手に動いてる。

これはあの自称神が言っていた剣術の適性を上げられたのが理由か······。

とにかくこれなら大丈夫そうだ。

それから俺は、四体目、五体目、六体目と倒していき、全ての魔物を倒すことが出来た。

もちろん何も残さずだ。

俺は彼女に近づいて声をかける。


「大丈夫か?怪我してるが」


「あ······は、はい、大丈夫、です」


「そうか、ちょっと腕の傷見せてくれ」


俺がそう言うと、彼女は怪我をしている場所を俺に見えるようにする。

俺は木刀の先をその傷に当てる。

すると緑色の光を放ち、傷を治した。


「これで大丈夫のはずだ。じゃあ俺は戻るわ」


「あ、あの!」


俺が帰ろうとした時、彼女が呼び止める。


「なんだ?ちょっと疲れたんだけど」


「こ、腰が抜けちゃって立てないの······」


まじかよ······それでよく魔物と戦おうとしてたな······。

俺も人のことは言えないが······。

だって超怖いんだから。


「はぁ······わかったよ······」


俺はため息を吐いて彼女を抱える。


「ちょっ、ちょっとこの体勢は······」


彼女がそう言うが、さっさと帰りたいので無視した。

······いやだってこの方法が一番簡単なんだから仕方ねぇじゃん······。


───────────────────────


俺は彼女、アンリを家に届け、適当な宿に泊まった。

食料は明日買えばいいか。

にしても、あれが魔物か。

確かに怖いが、やろうと思えばやれないこともない······気がする。

というかまだこの世界に来て数日なのに、もうこの世界に染まり始めてる気がする。

魔物との戦いだって、この世界に来る前だと考えられないことだった。

でも今ではそれを考えなければいけない。

酷いもんだ、ただの学生にそんなことを考えさせるこの世界は。

······そういえば、魔王を倒した後、俺はどうなるのだろうか。

そもそも本当に魔王を倒せば平和になるのだろうか。

······そん時になれば考えればいいか。

今考えてもどうせ忘れるだろうし、なった時に考えるのが一番だ。


「ふわぁ······」


欠伸をして俺はベッドに横になる。

さっさと寝よう。

外が暗くなったばかりだが、明日は早めに出たいからな。


「おやすみ」


俺はそう呟き、そのまま眠りについた。

そういえばヒロインとか全く考えてないんですよね。

物語の展開は決まってますが。

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