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魔法と科学の国②

俺は転生早々、牢に入れられた。

これは別に罪を犯したから入れられたわけではない。

鎧の男に言われたとおり、怪しい人を一時的に入れるための場所だ。

なので、牢と言ってもよくドラマとかで見るボロボロの部屋というわけではない。

······逆に言ってしまえば、綺麗すぎて本当に牢か気になるレベルだ。

ソファーもあるし、巨大なベッドもある。

鉄格子なんてないし、壁と扉がある。

······これ客室と言うやつなんじゃないだろうか。

そんなことを考えながら部屋を見ていると、扉からコンコンという音がした。

······やっぱり牢じゃねぇじゃん。

扉が開かれ、そこからThe王というような服装をした白い髪と髭が目立つ老齢の男が入ってきた。

王と思われる男は、俺が座っているソファーの正面にある机の前にあるソファーに座って言う。


「おぬし、名をなんと申すか」


「俺は一之瀬統哉です」


「そうか、一之瀬殿か。わしはこの国の三六代目の王、名をレックスという」


レックスはそう言い頭を下げる。

それを見て俺も頭を下げる。

レックスは頭をあげて話を続ける。


「一之瀬殿、ここに来るまでに騎士から話は聞いておるじゃろう。この国は魔法と科学の国じゃ」


「まぁそれは聞いてます」


「そうか、なら良い。次の話が本題なんじゃが、近々魔王が再臨するとされておる」


「ちょ、ちょっと待ってください!」


「どうかしたか?」


俺が言うと、レックスはそう訊く。


「その情報って明らかに国家機密レベルのやつじゃないですか!なんで俺にそんな話を······」


「一之瀬殿、おぬしは転生者なのじゃろう?わかっておる。おぬしの話を聞いた時から」


「それは······」


どういう意味ですか、と言う前にレックスは話を続ける。


「簡単じゃ。わしは転生者の子孫。第二三代目、勇者の血を引いた者じゃ」


「そうなんですか······」


ということは一〇〇〇年前に王になったやつは転生者······。

よく見る展開では魔王を倒し英雄となり、姫と結婚して王になる······ってとこかな。

その勇者について気になるところだが、今はどうでもいいや。

どうせ解放されるんだ。

それから何度も話に出てきた博物館にでも行って調べればいい。


「うむ、じゃからその装備を見ればわかる。先程転生してきたばかりなのじゃろう?」


「ええ、確かにそうですが······それが俺にあの話をした理由にはならないと思うんですが」


「いいや、関係ある。何故なら一之瀬殿には復活する魔王を倒してもらわなければならない」


「······は?」


今このおっさんはなんと言った?

魔王を倒してもらわなければならない?

なぜ?馬鹿じゃないのか?

転生したばかりと知っているくせに、なぜ俺に任せようと思うのか。

俺なんて戦いのたの字も知らないような平和な場所で暮らしてきたのに、なぜそんな人間に魔王退治という大役を任せようと思うのか。


「わしは一之瀬殿が来るはずだった五人目の勇者だと信じておる。神という者に何か言われなかったか?」


「そんなこと言われても······」


そこまで言って思いだす。

自称神が言っていた『剣術と魔法の適性は全部上げとく』という言葉を。


「······剣術と魔法の適性を全部上げられたらしいです」


「ほう!それはそれは······下手な神聖防具を貰うより、良いではないか」


四人の勇者の誰かがそのような物を貰ったのだろうか。

こう言われているということは、使いこなせているとは言えなさそうだ。


「ここで一つ、魔法を見せてくれんか?」


「ええっと······例えば?」


「そうじゃのう······最上位神聖魔法のーなんじゃったか、そう、『神聖宮殿』じゃ」


「どんな魔法なんですか?」


「失われた魔法でのぉ、一時的に神聖な結界を張る魔法じゃ。範囲は使用者の実力で変わるのじゃ」


なるほど、その魔法なら俺の魔法適性を調べやすいということか。

よし、やってみるか。


「はぁー······いきます。『神聖宮殿』!」


俺が魔法の名前を言い、手を前に突き出すと、俺の周りに黄金の結界が現れる。

そしてそれは拡がり続け、最終的にこの国全体を囲んだ。


「なんと······ここまでとは······!」


「んー?うわっ、結構維持するの難しいな······。こりゃ特訓しねぇと······」


レックスは驚いているが、俺はそんな暇などない。

発動自体は簡単だが、長時間の維持は無理だ。

どうにか維持しようとするが、努力も虚しく結界は消えてしまった。


「ふむ······これなら心配は要らんようじゃな。たったそれだけの装備ではこれから先、冒険もできんじゃろう。保管庫にある装備をなんでもやろう」


「え?冒険?」


「そうじゃ。飛行機があるとはいえ、燃料が足りんくてのぉ······じゃから飛ばすことが出来んのじゃ」


なんだよそれ······わけわかんねぇよ······。

装備?どうせ鎧だろ?重くて着れねぇよ!

それに一人か······?一人で魔王退治とか、ドラクエの主人公でもあるまいし、無理に決まってんだろ。


「勿論、前金も用意してあるし、できる限りのサポートはすると約束する。頼まれてくれんか?」


「残念ですが、断らさせてくだ······」


「頼まれてくれんか?」


「······断らさせて······」


「頼まれてくれんか?」


······駄目だこりゃ、YESと答えるまで続きそうだ。

というか強引すぎるだろ!こんな学生には荷が重いってわからねぇのか!?

······だがこのままじゃ埒が明かない。

仕方ないが、YESと答えるしかないな······。


「わかりましたよ······」


「引き受けてくれるか!では早速保管庫に行こう!」


レックスはそう言って立つ。

そして部屋の扉に手をかける。


「何をしておるんじゃ、一之瀬殿も来るのじゃ」


「······わかりましたよ······」


俺はそう言って立ち、レックスについて行った

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