鉱石の街③
食料に関してはまだまだあるし、薬草も減ってなければポーションも減ってない。
そんじゃこの世界で初めて果物以外のものを食うか。
一応アンリが料理を作ってくれたことはあったが、例の果物と野草の料理なのでノーカンで。
「よし、飯食いに行くか」
「うん、どこにあるか知ってるの?」
「知らん。でも歩いてりゃ見つかるだろ」
「大丈夫かな······」
アンリはそう言い苦笑いする。
いやーね、俺は重要なことしか覚えないタイプでね。
ゲームとかでもその時必要な物を覚えて、それだけを狙う。
何種類か必要ならそれを繰り返す。
今回の場合は必要な物が鉱石だっただけだ。
ここは現実だが、行動くらいはゲームを真似てもいいだろう。
「心配すんなよ。······おっ、ここかな······」
少し歩くと、外にも席があるオシャレな店を見つけた。
よくあるよな、こういうオシャレなカフェとか。
入ったことはないが。
「うわー、オシャレだねー」
「だな、ここでいいか?」
「うん!」
その返事を聞き、俺達は店に入る。
「いらっしゃいませ。お二人様でよろしいですか?」
「はい」
「こちらのお席へどうぞ」
俺が答えると、店員さんは俺達を席に案内する。
案内された席に座り、机に置かれていたメニューを見る。
「結構種類あるな······アンリ、先選んでくれ」
「わかったよ!うーん、こっちもいいしーあっちもいいしー!あ!これ!」
アンリがそう言って指をさしたのは、ドゥースュレのタルトというものだった。
「ドゥースュレ······?なんだそれは······」
「まさか知らなかったの?私達がいつも食べてる果物だよ!」
そんな名前だったのか······なんとも発音しにくい名前だな。
「へぇ、じゃあ俺もそれにするか」
「ご注文はお決まりでしょうか?」
「このドゥースュレのタルトを二つと······飲み物はどうする?」
「うーん、ココアってある?」
アンリにそう訊かれ、俺はメニューを見る。
結構ドリンクも種類あるな。
コーヒーやらミルクやらコーラやら。
「あるぞ」
「じゃあココア!」
「なら俺はコーヒーかな」
俺達の注文を紙に書いた店員は、少々お待ちくださいと言い、水を置いてカウンターに向かう。
俺は置かれた水を一気に飲み干す。
冷たくていい感じだ。
「で、食い終わったらどうする?」
「食べ終わったら······といっても日も落ちそうだから宿に戻らない?」
「そうだな、特にやることもないし、帰るか」
さすがにタルトだけで腹が脹れるはずもないし、どっかほかの店で弁当でも買うか。
結構大きい街だしあるだろ。
王都といえばいいのか?あの最初の街にもそれっぽいのはあったし。
······にしても、だ。
さすがに村と街の差が開きすぎじゃないか?
街はコンクリートっぽいものでできた建物やら街を囲む壁やらあるが、村には木造の家と畑くらいしかない。
何故ここまで差が開いたのだろうか。
「お待たせしました。ドゥースュレのタルトとココアとコーヒーをお持ち致しました」
「ありがとうございます。そんじゃいただきます」
「いただきまーす!」
早速タルトを食べてみる。
······甘い、美味い、なんだこれは。
甘味はほんの少し抑えられているが、ほとんど気にならないくらいに美味い。
フォークを持つ手が止まらない。
が、どうにかしてその手を止めた。
次にコーヒーを飲む。
うん、温かい、美味い、苦い、でもタルトの甘味で一瞬しか苦味を感じない。
相性いいんじゃないか?これ。
アンリも夢中になって食べてるし······ってもう食い終わったのか······。
俺もさっさと食うか。
······美味い。
というか俺のやつもほとんど食い終わってたのか······恐るべし、ドゥースュレタルト······。
コーヒーも飲み干しておくか。
「ふぅ······またいつか来ようぜ。あのタルト気に入ったぜ」
「うんうん!絶対来ようね!」
アンリはそう言い目を光らせる。
アンリも気に入ったようだな。
「そんじゃ会計済ませて店出るか」
「うん!······でもお腹いっぱいにはならなかったね······」
「ここはガッツリ食うような場所でもないだろ。弁当でも買って、宿で食おうぜ」
「はいはーい!」
アンリの返事を聞き、俺は会計を済ませて店を出た。
ちなみにドゥースュレのタルトは一つ一五〇〇オルだった。
結構高いから次来る時までにどうにかしてそれ用の金貯めとこう······。
ドゥースュレはとにかく甘いです。
ドゥースュレと同じ甘さの砂糖を食べれば糖尿病確定ルートです。
しかしドゥースュレはある効果があるのでそんなことにはなりません




