鉱石の街②
街を歩いていると、アンリが話しかけてきた。
「気になったんだけど、トウヤはなんで旅をしているの?」
「頼まれたから、それしか言えんな」
だって魔王よ?国家機密よ?
一般人に言えるわけないだろ。
「誰に頼まれたの?」
「それは死んでも言えんな。何十回、何百回死んでも絶対言えん」
王から頼まれましたーとか言えるわけないだろ。
別に言うなと言われてるわけでもないけどさ、何となく秘密があるっていいじゃん?
「むー······」
ちゃんと答えない俺に不満があるのか、アンリは頬を膨らませる。
すまんがな、無理なものは無理なのだ。
「そんなことより······おっ、ここだよここ、ここに俺が欲しい鉱石があるらしい」
この街で最高級の鉱石を取り揃えている店であり、かなり値の張るものしか売っていない。
普通に一〇〇万は超えるものが結構ある。
······あれ?残金結構少なくなってるし、買えなくね?
······とにかく店に入るか。
俺が店に入ると、アンリも店に入る。
「いらっしゃいませ」
店に入ってすぐに目に付いたのは、ガラスのケースに入れられたたくさんの宝石。
なるほど、この店はアクセサリー的な鉱石が多めなのか。
「すみません、ここにベロフォルツという鉱石はありますか?」
俺がそう言うと、店員さんは少し困ったような顔をして言う。
「その鉱石は在庫を切らしております。次の入荷予定も未定となっておりまして······」
なるほど、ないなら仕方ないな。
「そうですか。アンリ、何か気になるやつはないか?」
「いろいろあって悩むよー!あれもいいしー!これもー!······あ」
楽しそうに鉱石を見ていたが、ある鉱石を見つけると、何かを思いだすとかのようにその鉱石を見つめる。
あの鉱石は······
「カロエリュン······?」
俺はその綺麗な赤色をしている鉱石の名前をつぶやく。
「ええ······」
「この鉱石がどうかしたのか?」
「お母さんが、好きだったんです······」
そう言うアンリの顔は、どこか悲しそうだ。
アンリの家庭事情は知らないが、口を挟むのは良くなさそうだ。
「ならそれにするか。この鉱石を貰えますか?」
「カロエリュンですね、こちらは五〇万オルとなります」
俺はそれを聞き、袋からその分の金を出し、店員さんに渡す。
「少々お待ちください」
店員さんはそう言うと、ガラスケースから鉱石を取り出し、それを俺に渡す。
「ありがとうございます。ほら、これでいいか?」
「······うん、ありがとう!」
俺が鉱石を渡すと、アンリは満面の笑顔を俺に向ける。
喜んでくれたならこっちも嬉しいな。
「それじゃあ帰るか。観光でもしようぜ」
「うん!」
そう言い、俺達は店を出る。
さて、どこに行こうか。
この街については鉱石があるとしか聞いてないし、そこら辺ぶらついてみるか。
アンリの事情を知っている人は少ないです。




