表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

92/104

第九十二話・ルーカス照れる

 その日の夜は、ガウディ王やイエーツ宰相、他にもあまり話した事がない方々から夕食の招待を受けたけれど、丁重にお断りした。ルゥと過ごす約束をしていたからね。


 ルゥのお部屋は広くて快適で、可愛いぬいぐるみやおもちゃもたくさんあった。ヒルデとベークはもう孤児院に居を移しているらしく、一応ルゥの部屋でも二人が過ごせるようなベッドやスペースはあったけれど、基本的にはルゥのためだけのお部屋らしい。


「メイローズがルゥのために用意してくれたの」


「団長が? 良かった。私がいない間もルゥは大事にしてもらえたんだね」


 私が聞くと嬉しそうにうなずいてくれたので、本当に大切にしてくれてたんだなって分かる。ヒルデとベークを残したものの、結局バルトーへ行けば猫王国に拉致されちゃったし、これからまたルゥと離れなきゃいけない訳で、私って無責任なことをしてしまってるのかな、と思うと胸が苦しくなる。


 キザリハのことだってそう。私が面倒みるって言ったのに、こうして犬王国に少し滞在する以上は連れて歩けないと思って、三姉妹にお願いして置いてきちゃったし。今すぐここに呼び寄せることは可能だけれど、まだ早いよね。


「ルカ? 元気ないね。大丈夫? ルゥが元気あげようか?」


「一緒にいるのに考え事ばっかりでごめんね。ルゥはすっかりお話上手になったし、背が伸びたね」


 ルゥのさらさらの頭を撫でると、ルゥは目を細めて嬉しそうに尻尾を振り出した。その姿が、元いた世界に置いてきた大切な家族である犬達と重なって、胸がいっぱいになる。


 そうだよね。この世界に住む不思議な犬人も猫人も、ただ幸せに暮らして欲しいって思って今まで前に進んで来たんだよね。自分が生きるだけで精一杯な時もたくさんあったけれど、女神様のお陰で魔法も使えるし、怪我もすぐ治るし。


「ルカ、もうすぐ遠くに行っちゃうんだよね? ルゥ分かってるよ」


 ルゥの言葉を聞いてハッとする。


「どうして知ってるの?」


「メイローズとヒルデが話してた。ヒルデは離れててもルカのこと何でも分かるって言ってたの」


 そうだったんだ……ヒルデにそんな機能を持たせたつもりはないんだけれど、これも私が作ったからそうなったのかな? 離れてても私の様子が分かるし、それをルゥやメイローズさんに話してくれてたんなら、ルゥが安心できていたのも肯ける。


「大丈夫よ、ルゥ。遠くかもしれないけど、絶対また会えるから」


「いつでも会える?」


「ルゥと私が望めば、きっと会えるよ」


 私はルゥをぎゅっと抱き締めて、その柔らかい抱き心地と、優しい香りをしっかり堪能した。本当はどうなるか全然想像がつかないけれど、こうやって約束すればきっと良い方向に行く気がする。


 二人で好きなものをたくさん食べて、いっぱい話をして、ベッドも一緒に入って、ルゥが眠りに落ちるまでずっと話をした。


 明かりが消えた室内で、ルゥの寝息を感じながら目を閉じる。


 明日、大神殿へ行こう。これ以上遅らせるとどうして良いか分からなくなるから。それに置いてきたコノエが万が一追い付いてしまったら困るから。


 ルゥの耳を撫でながら、私はその柔らかい感触に安心して眠りについた。





「ルゥも一緒に行く!」


「そう……」


 朝から意地でも離れないルゥに、文字通りしがみ付かれて困っていたところへ、ルーカスがやって来た。


「朝から失礼します、ルカ様。大神殿まで俺もお供させて下さい」


 騎士の正装をしているルーカスが、跪いて恭しく私の手を取ってきた。私はちょっとたじろいでしまい、後ろに逃げ気味になりつつ、なんとかうなずいた。


「そ、そんな動作してくれなくても、一緒に行きましょ。ウィルも待ってるから」


 ウィルのことは、私しか知らないルーカスとウィルの友情があるだろうし、ルーカスしか知らない私とウィルの強い結びつきもある。お互いに目を合わせてうなずき合った。


「ルゥもね!!」


 私の足にしがみつくルゥが声を上げた。私は苦笑しながらルゥを抱き上げて、ルーカスのそばに行った。


「馬車だと人目もあるし、どうせ昨日みたいにみんなが待ち構えてるでしょ? だから、私の魔法で行こう」


「そうですね……では、俺達が既に向かった事だけ、伝えてもらいましょう。そこの侍女、頼むぞ」


 ルーカスに話しかけられた侍女は、頬を赤く染めてうなずいた。そっか、ルーカスもすごい美男子だもんね。艶やかな黒髪はさらさらストレートヘアで、それを無造作に束ねている姿も決まってる。アフガンハウンドなだけあって、知的な切れ長の瞳に、彫りの深い顔。まるで彫刻みたいに整ってる。


 ウィルは社交的で人懐っこいけど、ルーカスは人を寄せ付けない冷たい感じがカッコいいんだろうな。


「ルカ様……俺の顔に何かついてますか?」


「はっ、ごめんなさい。ルーカスの顔に見惚れてたの」


「え?! そ、そんな、ルカ様にはウィルがいるのに……」


 ルーカスがいつものポーカーフェイスを崩して、顔を真っ赤にして耳を倒してそっぽを向いている。


 わぁ、正直に答えすぎちゃったみたい。ルゥがぐいっと私の服の裾を引っ張って来て、


「ルカはルゥのだよ! さ、行こ!」


 と笑顔で行ってくれた。うーん、今までで一番可愛くて嬉しい告白だわ。


 すっかり元気も出たので、私はまだ照れてるっぽいルーカスの腕を取り、反対の手はルゥの小さな掌を握り締めて、目を閉じて大神殿を思い浮かべた。


「行くよ」


 ふわっとして、次の瞬間には、目を開けると大神殿の景色が広がっていた。


「うわぁ! すごいすごーい!!」


「これは、少し違和感がありますね……」


 二人はそれぞれの感想を口にしている。無事に運べてほっとして、私は笑顔になった。


「さぁ、マゼラ大司教に準備を手伝ってもらいましょ」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ