表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

39/104

第三十九話・ガウディ王、再び

 ウィルに迫られどっと疲れた昨日は、結局ベッドから起き上がれず一日が終わってしまった。

 ルゥは美味しそうなマフィンを山盛り焼いてきてくれて、それを食べたり、二人でベッドでごろごろしたりした。ルゥもヒルデのおかげで言葉をどんどん話せるようになってきたし、私がいなくても大丈夫になった。


 毎朝、ルゥと二人でメイドさんたちにドレスアップしてもらってるんだけど、今日はやけに私の方が華やかだ。


 白いドレスは光沢があって、同じ白い糸で刺繍もたくさん入っている。それから透けるような薄紅色の生地も合わせてあって、所々には椿みたいな、たくさんの花びらが重なった花を模した飾りがついている。


 私にはドレスなんて似合わないんじゃないかと思ったんだけど、髪を巻いてからアップにして、大きなサテンのリボンを巻いて、アクセサリーをつけたら、それなりにちゃんと見えるから不思議。


 私は鏡の前でメイドさんにお礼を伝えた。


「いつもこんなに綺麗にしてくれてありがとう。今日はいつも以上に手が混んでるね」


 メイドさんはにこにこ、しっぽもパタパタ揺れている。手は止めることなく器用にしゃべってくれる。


「だって、ルカ様、今日はガウディ王とお茶会なんですよ」

 

 えっ、そうなの? 聞いてないよ? 私がびっくりしてると、メイドさんは、まずい! という顔をして口に手を当てている。


「もしかして秘密だったの?」

「は、はい……ついしゃべっちゃいました。庭園のお散歩としてお連れするようにと言われていたのに、わーどうしよう怒られちゃう」


 あら、サプライズで王様と会う予定があったのね。私としては先に教えてもらえて良かったよ。あの綺麗な王様とサプライズで会ったりしたら、何を話そうとしていたか全部吹っ飛んじゃいそうだもん。


 メイドさんは困った顔をしていたので、私は「じゃあ知らなかったフリするよ!」と助け舟を出した。


 するとメイドさんはほっとしたように笑って、「ルカ様優しいから大好き!」とはしゃいでいる。


 隣で違うメイドさんに髪をアレンジしてもらっているルゥが、


「ルゥも大好き!」


 といきなり便乗してきたので、可愛すぎて、メイドさんたちと一緒に声を出して笑った。




 支度を終えてから、私一人だけを連れてきてと言われているそうで、ルゥと別れて王宮の庭園に向かった。


 ちなみにウィルも来なくていいと突き放した。それでも護衛が、とか言うから、私の視界に入らない、という条件で近衛騎士を続けてもらっている。

 本当は、今日イエーツ宰相に会って、ウィルをちょっとの間護衛騎士から外してもらおうと思っていたんだけどね。


 初めてガウディ王と会った時と同じ、薔薇の庭園に案内された。今日はすでにガウディ王が優雅に椅子に座っていて、手には薔薇の小さな花束を握っている。


「ガウディ王、お久しぶりです」


 私は会釈をしてから、ガウディ王の待つテーブルに近付いた。テーブルの上には色とりどりのお菓子と、サンドイッチ、フルーツが乗ったパンなどが飾られている。それだけじゃなく、白い薔薇がテーブル花として華やかに飾られている。


 まるで結婚式場みたい。しかも、私は白ベースのドレスだし、見ればガウディ王は白いタキシードのようなデザインの服だ。かっちりとしたデザインに、いろんな装飾がついて本当に素敵。映画の中に迷い込んできたんじゃないかって錯覚してしまう。


 美しい金髪をさらさらと風に揺らして、ガウディ王は私に微笑みかけてきた。切れ長の瞳に、端正な顔。世の中の女性のほとんどが見惚れてしまう美しさだと思う。


「ルカ、そなたの活躍をよく耳にするようになった。会いたかったよ」


 会いたかった、なんて言われると、顔が赤くなりそう。椅子を示されたので、私は大人しくそこに座った。執事のような出立の犬人が、椅子を引いたり押したりしてくれる。それから私のためにお茶を入れてくれた。


「ありがとうございます。孤児院の改革も許可してくださり、嬉しかったです」

「私の方こそ感謝しなければ。ルカが行き場のない子供たちを助けてくれると聞いて、本当に喜ばしい気持ちになったからね」


 そう、ガウディ王は孤児院の改革を快諾してくれて、イエーツ宰相を通して後押ししてくれた。資金もマンパワーも快く準備してくれたので、メイローズ団長もすごく動きやすそうにしている。


 ガウディ王はふふっと優しく笑って、優雅に足を組んだ。モデル並みの足の長さ……スタイルもほっそりしてて綺麗だし、文句の付け所がない。


「ルカ、今日はそなたに話があって、ここに来てもらった」


 じっと見つめてくるガウディ王の瞳は、深い茶色で、とても真剣そうだ。私は身が締まるような思いでうなずいた。


「私はね、ずっとこう考えていたのだよ。ーーたった一人でこの世界に来て、何も分からぬまま、ニンゲンだから、ともてはやされ、混乱している幼くか弱く少女ーーその少女を守り、幸せに過ごせるようにするのが王たる務めではないかと。そなたに過度な期待や責を負わせるのではなく、のびのび生きていけるよう助けなくては、とね」


 そうだったんだ。私のことを尊重してくれてると感じたのは、こういう気持ちを持って接してくれていたからだったのね。感激で胸が熱くなる。こんな出来た大人、私の周りにいたかな? きっといなかったよ。私は胸に手を当てて嬉しい気持ちからぎゅっと手を握り締めた。


 ガウディ王は私を見てフワッと優しく笑って、話を続ける。


「そんな少女が、今度は女神ファトゥム様よりご神託を直に受け、唯一の魔法使いになった……物語の中にしかいないはずの、魔法使いにね。そして、犬人同士の諍いを治めたり、臆病で社会に馴染めず苦しんでいる子供たちを助け始めた。私が思っていたか弱い少女は、いつしか周りの者たちのために行動する強さと信念を持ち合わせた、強い女性へと変貌していた。それでもまだ、私はそなたを守らねばと思っているよ」


 私のことを過大評価し過ぎでは……と顔が赤くなるのを感じる。この世界に来て、生きるのにもコノエとヴァイスの力を借りなくてはならなくて、とにかく周りを頼らなければ何も出来なかったから。だから自分ができることを探していて、たまたま出来ることをしただけ、それだけのことなのに。

 でも、こんな風に評価してもらえるのは、正直、すごく嬉しい。なんて素敵な王様なんだろう。この犬人がいるから、犬王国は栄えているんだきっと。そんな凄い人の手を煩わせるわけにはいかないよね。


「ガウディ王、私はもう守っていただかなくても、自分の身は自分で守れるようになりました。貴重な騎士やメイドさんたちを私のために使ってくださりありがとうございました! これからはきちんと自分のことは自分でーー」


 ガウディ王は私の言葉を遮るように、いきなり立ち上がった。ビックリして言葉に詰まる。

 な、何か王の気に触るようなことを言ってしまったんだろうか。そう思ってドキドキしていると、ガウディ王は優雅な足取りでテーブルの向こう側の私のところまで歩いてきた。


 とにかくすらっとして背が高くスタイルも良い。王様から薔薇の香りがしてくる。

 私の顔をじっと見つめている。私は気まずいものの目を離さないまま見つめ返している。すると、王様は口を開いた。


「ルカ。私は、好きでそなたを守りたいと思っているのだ。猫王国には行くべきではない。このまま我が王国で暮らしてゆくべきだ」


 猫王国に行かなきゃって思っていた私の考えを見通したかのように、ガウディ王は言ってきた。それに、守りたいって、どういうことだろう。

 私が不思議そうな顔をしているのを見て、王様は首を横に振った。


「そなたに私の意志を伝えよう。そなたが魔法使いとしてどんなに強くなろうとも、不可能を可能にできるとしても、私は王として、一匹の雄としてそなたを守りたいと思っている。そなたを危険に晒すような真似はせず、これからも我が王国で暮らしてほしい。……もっとはっきりと伝えよう。ルカ、そなたを守りたいという私の気持ちを受け止め、我が妃になってほしい」


 目の前の、気高く美しいガウディ王が、スッと片膝をついてうやうやしく私の手を取った。今までもこのポーズは数人に何回かされたけど、ガウディ王のはーーめまいがしそうなほど美しい所作で、私は頭がクラクラしそうになった。


 王様が着ている白いタキシードのような服と、私の白いドレス、こうして近くで見ると、どちらも同じ刺繍が入っている。そうか、今日この日のために王様が用意してくださったものなのね……まさか、私にプロポーズするために、お揃いのデザインの服を仕立てるなんて。


 そう、プロポーズ。聞き間違いでなければ、妃になってほしい、っておっしゃられたよね。妃って、王の妻ってことだよね? 神殿で聖女になってほしいとか、ウィルから妻になってほしいとか、言われてきたけど、今度は妃、つまり王妃! 


 私はクラクラする頭を押さえながら、微笑むガウディ王の美しすぎる顔を見つめて困惑しまくっていた。

遅くなりました。投稿したつもりが、できていませんでした、申し訳ないです。ブックマークや評価、ありがとうございます。嬉しくてにこにこしながら執筆しています。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ