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第三十一話・朝食

 昨日は美味しいごはんをウィルとルゥと三人でお腹いっぱい食べて。その後、お部屋で遊んで。

 ルゥは私のベッドで、私と抱き合って眠った。

 ウィルもどさくさに紛れて混ざろうとしていたけど、敷物を部屋の外に放り出して、そこで寝なさいと指示したら、諦めてそこに立っていた。


 近衛騎士って、ずっと一緒にいる気がするけど、いつ寝てるんだろう。それに休みもなしで騎士の仕事がずっと続いてる。ブラック企業並みに働かせすぎじゃないかとかちょっと不安になる。


 でもウィルのことだから、好きで一緒にいるんですよーって言いそうだよね。私とルゥと遊んだり、ごはんも無理を言って一緒に食べているから、そこまでストレスじゃないのかな。


 朝、メイドさんが起こしに来る前に、ルゥが寝返りしたことで目が覚めてしまって。

 ルゥのふわふわした茶色い髪を撫でながら、ぼんやりと考えごとをしている。


 猫王国で何が起きてるんだろう。

 コノエとヴァイスはどうしてるかな。猫王国で起きていることを調べに行けば、また二人に会えるかな。私をたくさん助けてくれたお礼に、何か恩返しになることをしたいなあ。二人の好きなものはなんだろう。


 でも私が猫王国に行ってしまったら、誰がルゥや孤児院の子供たちの教育をするの? 私は一人しかいないから、両方はできないし。

 もし猫王国に行くことになるとしても、ルゥだけでも、私がいなくても大丈夫なようにしなきゃーー。


 ルゥを見ると、よだれを垂らしながらふわふわの布団に包まれて幸せそうに眠っている。

 きっと生まれて初めての柔らかいベッドだったんだろうな。上で跳ねてはしゃいで、寝転がって感触を確かめながらはしゃいで。


 満面の笑みがこぼれまくり、見ている私まで幸せな気持ちになれた。こんなに可愛い小さな女の子が、孤児院という名の施設に押し込まれて、笑顔も知らずに早死にしていくなんて……そんなの絶対だめ。なんとかしなきゃ。


 魔法で何とかなれば良いのにね。ふふ、私が魔法使いだって! いまだに信じられない。魔法で私を二人にするとか、私と同じ方法で孤児院の子供たちの力になれるような何かを作るとか、できないのかなあ。


 女神様は、イメージさえすれば、何でもできるような言い方をしていたんだけど。

 ルゥのような子供たちが、警戒せず喜んで受け入れる、そう、私の世界で言えば着ぐるみみたいな可愛らしい生き物が、ふわふわ子供たちに愛情いっぱいのお世話をしてあげられたらどうだろう。

 子供達の傷だらけの心を癒してあげられるだろうか。


「ん……ルカ?」


 腕の中のルゥが目を覚まして、私を呼ぶ。ルゥの頭を撫でながら微笑む。


「ルゥ、私はここにいるよ。おはよう」


 ぎゅーっと抱きしめると、ルゥはきゃはは、と嬉しそうな笑い声を漏らした。可愛すぎる!

 ルゥと二人で起き上がって、カーテンを開けて朝日を浴びる。きらきら綺麗な光が部屋に差し込んできた。


 コンコンとノックの音がして、私が返事をすると、メイドさんが元気よく入ってきた。


「おはようございます、ルカ様! それにルゥちゃん。朝のお支度をいたしましょうね」


 メイドさんはルゥのことを可愛いと思ってくれたらしく、とっても好意的だ。ルゥはその好意が分かるから、メイドさんに触られても怒らないし、ちゃんと話に耳を傾けている。


 二人目のメイドさんが来て、私とルゥそれぞれについて、ドレスを着せてくれた。今日は明るい黄色のドレスで、ルゥのドレスも私とお揃いのデザインだ。可愛い! 小さな妹ができたみたい。それとも親子……はさすがにないかな。


 着替えが終わると、鏡台の前に座って髪を結ってもらって、メイクやアクセサリーをつけてもらう。

 本当は朝からお風呂に入るお姫様もいるらしいけど、私は丁重にお断りした。そんな優雅に過ごしていたら毎日時間が足りなくなっちゃうよ!


 ルゥは髪を編んだ後にアップにして、その頭に生花の冠をつけてもらっている。


「ルゥ! 可愛い! お花の妖精さんみたいだよ」


 私が感激して叫ぶと、メイドさんはにやりとして、そうでしょう、そうでしょう、と自分の手腕に自信があるよう。私のこともいつも綺麗にしてくれるけど、自分より、ルゥがやってもらえたことに感激しちゃった。


 私の担当のメイドさんが、


「ルカ様のことも、私たち犬人にはない香りや美しさで、私たちはお世話をさせていただけてとても幸せなんです。こんなに綺麗な方だから、男性みんな釘付けになっていますよ」


 え、そ、そうなの? 言われて恥ずかしくなってうつむく。私は自分がそんなに綺麗とか思ったことなくて。でもドレスやアクセサリー、それに素敵なヘアメイクをしてもらえると、まるで別人だなって思うよね。


「あなたたちがいつも私を変身させてくれて、綺麗にしてくれるからだよ、ありがとう」


 照れながら言うと、メイドさんたち二人はウルウルと涙目になってうなずいてくれた。

 そこに、コンコンとノックの音が聞こえた。


「ルカ様ー、ルゥちゃん、おはようございます。朝ごはんを持って僕が参りましたよ」


 能天気なこの声は、ウィルだ。メイドさん二人が顔を赤くしてドキドキしている。そ、そんなにウィルってカッコいいかなぁ……。


 メイドさんが扉を開けると、朝食を乗せたワゴンを押しながらウィルが入ってきた。


「おはようウィル。もしかして、騎士から給仕に格下げされたのかな? 昨日のセクハラが原因でね!」


 私が嫌味っぽく言うと、ウィルはそんなの気にしないスマイルで、


「親切で好青年な僕が、給仕の代わりに朝食を運んできたんですよ。ほらほら、僕をいじめてないで、美味しいパンを一緒に食べましょう」


 ウィルが朝食のパンをつまんでつまみ食いしてる。ルゥもそれを見て走っていってパンをウィルから奪い取った。痩せっぽちのルゥは、食べ物を見ると必死になってしまう。


 支度が終わった私も、食事を食べるためテーブルに座った。メイドさんたちが果実ジュースを注いでくれる。焼き立てのパンも、ジャムも、すごく美味しいんだ。それにハムや卵焼きも。

 ルゥがドレスを汚さないか冷や冷やしていたら、メイドさんがタオルを使ってエプロン風にしてくれた。良かった、これで安心して食べられる。


「さて、今日は。王様と宰相と大司教と話す時間ができたそうです。そこで、昨日の魔法のこともお話ししようと思いますが、えーっと。メイドさんたち、僕たちだけでのんびり食べるからちょっと席を外してもらえるかな?」 


 ウィルがメイドさんたちにウインクしながら言うと、二人とも顔を赤らめながらうなずいて部屋を出てく。うーん、本当にそんなにウィルってカッコいいかな?


 そこで私はハッと朝考えていたことを思い出し、メイドさん二人に声をかけた。


「ルゥのためにぬいぐるみを用意してほしいんだけど、お願いできるかな?」


 二人とも分かりました、と明るく返事して部屋を後にしてくれた。

 三人だけになった部屋で、ルゥがむしゃむしゃ朝ごはんを頬張っている。ウィルが食べようとするとそれを渡さないように守りながら必死に食べている。


「ルゥ、喉に詰まらせちゃうからそんなにかきこまないで」


 私が心配すると、少し落ち着いたのか、ジュースを飲んでいる。

 ウィルがその隙にクロワッサンを確保して、片手に持ちながら、話し出した。


「あのですね、ルカ様の魔法のことなんですが。昨日僕に使ってくださった癒しの魔法、あれはまだ皆さんには黙っていた方が良いと思うんです」

 

 ウィルの言葉にびっくりして、彼をまじまじと見つめた。ウィルの顔は大真面目だ。


「どうして?」

「だって、怪我をその場ですぐ治せる力ですよ。病気や怪我を治してくださいとパニックや暴動が起きてもおかしくありません。ルカ様がそのためにあちこち連れて行かれたり、いいように使われる姿を、僕は見たくありません」


 ウィルの意思は固いみたいで。


「ルカ様が自分の身を守るために、楽しく暮らすためにこそ使われるべき力です。火の球のやつは皆さんに知れ渡った方が安心ですが、癒しの魔法は……例えば大神殿でルカ様に癒しの魔法を使わせてみんなを癒して、神殿の地位や名声を上げるために利用されないかとか、そういう懸念がありまして」


 なるほど。ウィルなりに先のことを心配してくれてるんだ。


「それなら王様やイエーツ宰相には伝えたらダメなの?」

「うーん、王族や貴族の怪我や病気の治療に利用されないか心配です」

「それなら、ウィルの言う通り、今日のところは黙ってよう。もし伝えるべきだって時が来たら、その時に言おう。それに魔法の種類もまだ全然試してないし、これからもっと増えるかもしれないからね」


 ウィルは良かったとホッとした笑顔で私を見てる。私は魔法の種類をもっと色々考えて試してみなきゃと思ったけど、ウィルの気持ちや自分のことを考えると、魔法なんて使えなくても良いのかなあとも思う。


 でも、自分の身は自分で守れるくらいの強さは無いとダメだよね。コノエに助けられて、ウィルにも助けられて、助けてもらってばっかりの人生じゃダメだ!


 ちょうどルゥがお腹いっぱいになったらしく、女の子と思えない大きなゲップが聞こえてきた。口の周りや手が悲惨な汚れっぷりだけど、タオルエプロンのおかげでドレスは無事だ。


「さ、腹ごしらえも終わったら、そろそろ話し合いの場に行きましょうか」


 ウィルが先に立って私をエスコートしてくれる。その時、話が終わったのを見計らったかのように、メイドさんが入ってきた。


「ルカ様、ご所望のぬいぐるみをお持ちいたしました」


 その手には、可愛いクマのテディベアと、魔法使いの格好ーーとんがり帽子に黒いワンピース、手には茶色い棒を持っているーーをした女の子のぬいぐるみがあった。


 ルゥがわあ! と喜んでそ二つを受け取る。


「ルゥ、これから人に会ってこなきゃいけないんだけど、一緒に来る? 来るとお話しの間退屈だから、もしならお部屋でぬいぐるみたちとメイドさんと遊んでる?」


 ぬいぐるみを持って嬉々としてるルゥに問いかける。ルゥは首をかしげてから、名残惜しそうに部屋を見た。


「ルカといる」


 ぬいぐるみは抱えたまま、私のところに来た。私はルゥと手を繋いで、反対の手はウィルにエスコートしてもらう。


 よし、話し合いが終わったらルゥのぬいぐるみたちに魔法を試してみよう。私の代わりにルゥや子供たちを導くような存在にならないかな? 話し合いの後が楽しみだわ。

ブックマーク、評価★、とっても嬉しいです。頑張るパワーいただきました、ありがとうございます!

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