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第十九話・四騎士団と神殿のお迎え

 馬車に揺られて半日ほど経つ頃。

 御者が、前方に王国の旗を立てた一団が見えます! と声をかけてきた。

 ウィルも扉を開けて確認すると、私の方を向いてにこっと笑って、


「やっと王都からの迎えが来ました! それにしてもすごい人数です、ルカ様のためにあれだけの犬人が動いているんですよ」


 私からは列の先頭しか見えないけど、たしかに旗がずいぶん後ろの方にも出ている。


 なんだか緊張するし、果たしてそんな大人数で迎えに来てもらう必要があるのかなって思いが脳裏をよぎる。この馬車での旅は、襲われたりして怖かったけど、働き者の御者と、ウィルとの三人で楽しかった。


 それがもう終わっちゃうんだと思うと、寂しさと不安が湧き上がってくる。


 馬車が止まり、ウィルが御者と荷物を下ろし始めた。私もそわそわするけど、待っててくださいと言われてしまう。


 馬車の外に出ると、目の前に、旗を掲げた騎乗の騎士二人と、他にも沢山の騎士がいた。その後ろには大型の馬車。


 金銀に彩られたその馬車は、豪奢すぎるくらいゴージャスな作りで。大きさは今まで乗ってきた四人乗りの馬車の倍以上ある。引いている馬は全て白馬で、見事な毛並みに、これまたきらびやかな装備をつけている。


 騎士たちは私を見て瞳をキラキラさせ、中には馬から降りてひざまずく騎士もいた。


「騎士たち、こちらへ! 荷物を運んでください」


 ウィルが声をかけると、二人の騎士が駆け寄ってきて、私に深々と礼をしたあと、荷物運びを始める。


「さ、ルカ様。馬車を乗り換えますよ」


 私はお世話になった御者に慌ててお礼を言った。

 御者は、身に余る光栄です! と私に頭を下げていた。いちいち、うやうやしくされてしまうけど、本当に慣れないよお。


 ウィルにエスコートされて、豪華絢爛な馬車に乗り込む。内装もすごかった。王族専用とかそういうレベルなんじゃないのかな。馬車なのにシャンデリアみたいなのがついてる。窓も飾り窓の細工の細かいこと。

 ビロードのようなにめらかな生地のふかふかな座席。背もたれも柔らかい。

 車内もすごく広くて、十人くらい乗れそう。


「ルカ様、今から出発するんですが、ルカ様にご挨拶したい者たちがいるのですが、一緒に乗車してもよろしいでしょうか?」

「えっ、それはもう、もちろん大丈夫。私が乗せてもらってる身分なんだから許可なんていらないよ」


 私が慌てて言うと、ウィルはにこりと笑って私の手を握った。


「ふふ、謙虚で優しいルカ様。二人での旅がもう終わってしまうことが本当に寂しいです。僕にとって最高の時間でした」


 少し残念そうだが、そこまで悲しそうではないみたい。私の方が内心、残念だよ。たくさんの騎士たちに囲まれているから落ち着かない。これからここに来るみたいだし。

 しょうがない、覚悟を決めて、挨拶しよう!


 私が頷くと、ウィルは扉を開けて仲間を呼び入れた。


 四人の犬人が乗り込んできた。

 一人はウィルと同じ制服で、ただ色が青緑みたいな不思議な色をしている。

 一人はやはり同じ制服だけど、緑色で。もう一人は赤。みんな色違いなんだ。三人とも騎士らしく引き締まった体つきをしている。


 最後の一人はずんぐりむっくりしていて、ちょっとメタボな感じの、顔もおじさんだ。灰色と白が混ざった毛足の長い垂れ耳に、同じ色の尻尾。こぼれそうなほど大きな目に、潰れた顔。これはシーズーだわ! 鼻ぺちゃの犬人を初めて見たけど、分かりやすい。口も受け口だし。このおじさんは、白いローブを着ていて、明らかに騎士らしくない。


 最後にウィルが入ってきて、私の隣でうやうやしくひざまずいて見せた。


 「こちらが、女神ファトゥム様が遣わした、ニンゲンのルカ様です」


 そして私を見てにっこり笑って、お隣に座ってもよろしいでしょうか、と聞いてくる。いつもなら聞く前に座るのに、この人たちの前だからなのかな。


「どうぞ、ウィル。座って」


 私が話した途端、おおっ、と四人がざわめいた。しゃべることすら珍しいのかな……変に緊張するからやめてほしい。


 騎士の制服で、青緑色のものを着た犬人が、私に深々と礼をした。すらりとした長身で、ウィルよりも背が高い。大きな立ち耳は黒くて、尻尾は茶色くて狼のような形。顔立ちを見ると精悍で、とても真面目そう。


「ルカ様、お目にかかれて光栄です。私は碧騎士団の副団長、ベルジアン・タービュレンのセレス・リストと申します。王都の守護者である団長メイローズの代理で参りました」


 わぁ、タービュレン! 見た目はジャーマン・シェパードに似ている犬種で、レアなので実物を見たことがない。とても優秀な使役犬で、家庭犬としても愛情深く明るく、何をしても優秀って図鑑では褒め称えていたような記憶がある。


「碧騎士団は王都の警護と治安維持をしている騎士団なんです。セレスは僕と同級生なんですよ」


 ウィルが紹介してくれる。セレスさんの方が精悍で大人びていて、いつも茶目っ気たっぶりのウィルの方が幼く見えるなあ。


 その隣の緑色の制服の犬人が、今度は自分の番だと私の足元にひざまずく。

 耳や尻尾がセレスさんと似ているけれど、体つきががっしりとしている。顔には剣で切られたような傷跡が、頬に一筋あった。


「私は翠騎士団団長、ジャーマン・シェパードのバルト・ロランと申します。王国全土をまたいで犯罪を行う者を追跡、逮捕しています」


 今度はシェパード! 渋くてすごくカッコいい顔をしているなあと思ったけど、シェパードが人になるとこうなるのね。ロマンスグレーだわ。

 バルトさんは私の隣に座るウィルを睨みつけてから席に座った。仲が悪いのかな?


 騎士三人の中で最後が、赤い制服を着たやや小柄な犬人。茶色い大きな垂れ耳に、スムース、毛足の短い長めの尻尾。先端は白いけど三分のニは黒い。


「僕は緋騎士団の副団長ボクス。貴族じゃないから姓はありません。礼儀作法もわからない。任務中で来れない団長の代割に挨拶に来ました」


 まだあどけなさの残る少年のような子だ。

 ウィルが、初めて緋騎士団を見ましたよ、と呟いた。私が不思議そうにウィルを見ると、慌てて付け加えてくれた。


「緋騎士団は特殊任務をこなす騎士団なんです。その任務は秘密にされているので、団員の存在も隠されていて、こうして会うのが初めてなんです」


 なんかスパイ映画みたい、と思ったけど、言ってもこの場の全員が分からないだろうな。騎士団って言ってもたくさん種類があることだけはよく分かった。


 最後は、一人だけ浮いてる、たぶんシーズーのおじさん。

 騎士三人が席についたら、前に歩み出て私の足元にひざまずいた。


「私は女神様を奉る、王都の大神殿に仕える大司教、シーズーのマゼラと申します。ルカ様のご降臨を、長い間お待ちしておりました。まさか私が生きている間に降臨していただけるとは……感激しております」


 顔を上げるのも遠慮しているようで、うつむいて話してる。こんな年上のおじさんに、こんな風にうやうやしくされたことなんてないから、どうしていいか分からないよ!


 助けを求めてウィルを見ると、


「マゼラ大司教はとても誠実で厳格な方です。女神様が最後にお姿を現した三十年前、実際に女神様とやりとりをした数少ない犬人のうちの一人なんですよ。ルカ様も女神様のことを気にされていましたよね」


 と、助け舟というべきか、そうでないか、とにかく司会者みたいに一応トークを回してくれた。

 私は緊張しながら話す。


「私がこの世界に来たのは一週間くらい前で……女神様に出会って、少しだけ説明されたんです。この世界を導いてほしい、楽しく穏やかに暮らしながら、と言われました」


 一同は女神様の話にどよめく。大司教が興奮気味に、


「女神様はご健在なのですね! お元気そうなご様子でしたか?!」

「は、はい。それはもう美しい姿の方でした。とても明るく穏やかで、お元気そうでしたが、時間がないって言って話を終えて……この世界に来てからはまだお会いできてないんです」


 私の話を聞いて、明らかにみんな安堵している様子だった。そうだよね、三十年、安否がわからなかった女神様の様子が聞けたら安心するよね。


 

なんだか長めになってしまいました。たくさんキャラが出てきますが、また出る時は丁寧に説明するよう心がけるので、読み飛ばしていただいても大丈夫です!

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