第百話・ルカと犬猫人の世界
まず、マトヴェイとファトゥム様の話。
私の目を盗んで、ファトゥム様はさっさとマトヴェイに会いに行ってるみたい。最近では、
「ねぇ、ルカ。私も体を普通のサイズにしてもらえない?」
とせがんで来るので、ちょっと意地悪を言ってあげた。
「良いけど、何のために大きくなりたいんですか?」
私が聞くと、ちょっと挙動不審になりながら愛想笑いをしてどこかへ消えて行く。
マトヴェイはもうデブ猫人と呼べなくなった。神殿の再建作業により引き締まった体と、ファトゥム様と会える事で満たされる心、両方の働きで、若々しい猫人へと変貌した。
しかも、再建したら神殿で祭司長を務めている。女神の信者を増やして、愛するファトゥム様と会える時間を増やすんだって。邪な目的で祭司をするってどうなのよ。
それから、ファルザームの話。
私の相談役になったファルザームは、なんと再建した神殿の大司祭になった。
理由は、女神ルカが信頼する猫人だから、だって。華美な司祭服を、肉体労働で鍛え上げた肉体で着こなし、鋭い目付きでバリバリ仕事をこなしている。
ロマンスグレーの渋いイケメン猫人は、ついには、
「そんな目で私を見るのならば、神の世界へ連れて行けば良いだろう」
とまで言ってくる。私はそんな目で見てないのに! ファルザームの方が私と話すのがすごく楽しそうに見えるけど。
だいたい、女神無しでズーアスがやっていけるようにしたい男が、神の世界に行っちゃったら意味ないでしょう? それを言ったら、
「亡き妻に笑われそうだな。昔、恋は私を盲目にすると指摘されたが、再び盲目になる時が来るとはな」
って思わせぶり!! 私は聞こえないフリをしてやり過ごしたけどね。いつまでこんな関係でいるんだろう。
それから、私の大切なルゥの話。
ルゥは、ズーアスの住人で初めて、女神の遣いになった。ニンゲンじゃないけど、私がルゥのことを選んで力を分け与えたの。
ルゥは自分と同じ境遇の子供達をたくさん助けてくれた。それはファトゥム様でもできなかったことだから、ファトゥム様も私も感激して、その場で、女神の遣いにしよう! って任命したんだ。
ルゥはすごくモテるみたいなんだけど、いつもメイローズ団長と一緒にいるんだよね。男といるよりずっと楽しいんだって。
あっという間に美少女に成長したルゥに、私はしょっちゅう会いに行ってる。ルゥの次の目標は、自分のような境遇の子供たちと一緒に町を作ることらしい。
ヒルデとベークも変わらずルゥをサポートしてる。二人がボロくなるとルゥが魔法で新しい体を作り与えていて、私よりずっと女神の遣いって感じだよ。
それから、ヴァイスの話。あ、コノエの弟だよ。
化物から国を守る防衛の拠点、北の砦で騎士になったヴァイス。コノエに似て精悍な美少年に成長したよ。
コノエに、会いに行こうって誘っても必ず断られるから、私だけで会いに行ったの。
そしたら、涙を堪えながら、私との再会を喜んでくれた。騎士としての実績も積み上げて、砦で1.2を争う剣の使い手なんだって。
それから、すごくモテるって自慢された。子供が欲しいって言ってくる女性が絶えないって。
「でもオレはずっと前から決めてたんだ。女なら、ルカがいいって。だから、オレも神の世界に連れて行って!」
何度か強引についてこようとしてきたけど、コノエが激怒してズーアスに置いてきてた。
そしたら今度は懲りずに、会いに行った私と既成事実を作ろうと頑張ってる。すっかり大人の男性だよね、もう。
そうなると、今までは頑なについてこなかったコノエが、毎回一緒に来て私を守ろうとヴァイスと戦ってる。
まぁ、一番強いのは女神の私なんだけど。コノエがオッケーしない限り神の世界には連れて行かないから、そこは、ね。
マゼラ大司教は、女神ルカを信奉してくれて、たくさんの力を送ってくれてる。感謝の気持ちから、彼が幸福に暮らせますようにと加護を送ったよ。
それまでモテなかった大司教だけど、若くて可愛いシーズーの女性と知り合えたんだって。
すごく幸せそうにしてるし、律儀に私にお礼を言ってくれた。結婚式にはぜひいらしてください、って言われたけど、女神が結婚式に顔を出していいものなのかなぁ。
ガウディ王の話。
会うと相変わらず飄々としてる。
私が女神になってしまったので、婚約者のアフガンハウンドの女性と結婚したよ。
でも会うたびに口説いてくる。
「私は立場上、神の世界には行けないけれど、いつもルカの事を想っているよ」
って。もうすぐ政権交代で、ラブラドール・レトリバーのアンダンテが国王になるらしい。
そうなったら、神の世界に私も行く! って言い出しそうでドキドキしてる。もう妻もいる身だから、絶対連れて行かないけどね!
そしてイエーツ宰相の話。
彼がいないと犬王国は回らない。だから神の世界には、行けない、ってめちゃくちゃ怒りながら嘆いていたよ。
初めて好きになったのが私で、それ以降、何回もお見合いしたけど全部ダメなんだって。
神の世界に行って私と結ばれたい、と何度言われたかしら。宰相を辞められたら考えてもいいけれど。
でも私には分かってる。イエーツ宰相は素敵な女性と巡り合って、子供もできるの。
その子供が女神ルカが大好きで、私と結ばれるために神の世界に行こうと冒険の旅に出るのよね。
時間の感覚、現在と未来をいつでも好きなように覗ける私は、そんな未来も見えてしまった。イエーツジュニアが私を口説きにくる日は、そう遠くないみたい。
ちょっと楽しみで、自然と笑顔になった。
コーセイの話。
王なんて退屈な役目は投げ捨てて、楽しそうな神の世界に行きたい! といつも言ってる。
やる気のない王に代わって、三姉妹とメルロー宰相が頑張って国を動かしているわ。
「ルカ、毎日君が恋しいよ。早く結ばれるために神の世界に連れて行ってよ」
王の次は神に等しい存在になれるかな、なーんてコーセイの野望まみれの心の声も聞こえてくる。
私はコーセイは連れて行くつもりはないの。彼はズーアスで上手くやってる姿がよく似合うわ。
たくさんの王妃と側室に囲まれて、なんと、子供は三十人も生まれるみたい。兄弟同士が争うことのないよう、祝福してあげないとね。
コーセイの近衛騎士、サフィアの話。
ついに自分より腕の立つ男を見つけるんだけど……それが、北の砦にコーセイと共に視察に行った際に出会う、ヴァイスなの。
コノエの弟って聞いて激しく納得してたわ。猫人の中でも群を抜いて美女なサフィアは、あの手この手でヴァイスに迫るんだけど、やっぱり相手にされなくて。
結局、ひょんなことからコーセイと結ばれて、コーセイの子供を授かるの。
私はその子が、猫人の中で最も強く、そして美しく、かつモテるように祝福を授けておいたよ。コーセイとサフィアにはその内容は秘密だけどね!
私はウィル、コノエ、ルーカス、キザリハとそれぞれの人生を送ってる。
女神の力は限りなく無限に物事をコントロールできる。でも悠久の時を生き続ければ、いずれ飽きてしまうんだろうな。
そうなる前にファルザームと、女神のいらないズーアスを完成させたい。
完成したその暁には。
またニンゲンとして再び生まれ変わりたい。そして、なんの力もなくても、ズーアスで楽しく穏やかに暮らしたい。
ついに完結しました。
ここまで読んで下さり、本当にありがとうございます!
あまりの眠気に、後書きを途中でアップしていました。毎日連載で大変でしたが、頂いた感想、ブクマの数を見て元気をもらい、書き続ける事ができました。
ここまでお付き合い頂き、本当にありがとうございました!




