表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
夢見る未央のモノローグ  作者: 宇目 観月(うめ みづき)
4/9

未央の友達

私ね、友達からは天然てんねんだってよく言われ

るの。


話してて、受け答えが、変な時があるん

だって。


自分ではまともなつもりなんだけど、

何かズレてるんだって。


それでね、私が何か言うと、みんなから

よく笑われたりするの。


でも、みんな悪気があって笑ってる訳じゃないみたい。だから、あまり気にしないようにしてるの。


私、ぼんやり考え事してることが多いからかもしれない。



私、頭の中で色々と空想するのが好きなの。


もともと読書するのが好きで、自分の気に入った本を読んで、物語を自分に当てはめて考えてみるの。


そして、このお話もっとこうだったら良かったのにとか、もっとああだったら楽しいのにとか、勝手に想像するの。


それで頭の中でね、自分の新しい物語を色々と作っちゃうの。


それが凄く楽しくて、一人で夢中になって空想しながら下校してるうちに、一度知らない町まで行っちゃって、道に迷ったことがあるくらいなの。


こんな感じだから、友達と話してて、反応はんのうおそかったりとか、トンチンカンな答えをすることが多いみたい。


「未央って、いつもボーッとして、夢でも見てるみたい」


ってよく言われる。


「未央にはつき合ってられない」


「未央の面倒めんどうなんか見てらんない」


とかって言って、離れていった友達も何人かいるわ。



だけど、美波みなみ彩芽あやめとだけは保育園の頃からずっと友達よ。


小さい頃から一緒に浜辺で遊んだり、お泊り会をしたり、町のお祭りや、地区のハロウィン集会に参加したり、二人とはたくさん遊んだの。


親同士も仲が良いし、この二人といると私、

一番自分らしくいられるような気がする。



◇◇



美波はとても明るくて元気な子なの。


黒い瞳がいつも、いたずらそうにキラキラ輝いてるの。眉毛が濃いから、顔全体がキリッとして見えるのよ。


背丈はクラスの真ん中くらいだけど、運動神経が抜群なの。スタイルが良くて、特にあしの筋肉が凄く発達してるの。


活動的だから、髪はいつもポニーテールにしてるわ。


とにかく足がちょう速くて、男子だって美波には適わない。


去年の運動会のリレーの時なんか、美波の

一走前の男子が転んじゃってね、先頭から

半周近く離されたの。


でもアンカーの美波にバトンが渡った途端、アッという間に大逆転よ。



美波の足には、まるで神様がくれた見えない翼が生えてるみたいなの。


きっと将来は、オリンピック選手ね。


成績も良くて可愛いからクラスの人気者よ。

美波に憧れてる女子はたくさんいるわ。


イジメっ子からも、私と彩芽を守ってくれ

るの。



彩芽はね、とっても性格が優しくて、

大人しい子なの。


あの子は私にて、夢見がちなの。


美少女アニメが大好きで、いつもノートに

キラキラ衣装の絵ばかりいてるの。


将来はデザイナーになりたいんだって。


彩芽はやせがたで背が高いの。

背の高さも体型も、私とよく似てるわ。


私はいつもショートカットにしてるけど、

彩芽は腰まで届きそうなくらい髪が長いの。


自分で三つ編みにしたり、ストレートにしたり、アップにしたりして楽しんでるみたい。


目は切れ長で、博多はかた人形にんぎょうみたいな和風わふう美人びじん

なの。



美波は大きな声で早口でしゃべるけど、

彩芽は小さな声でゆっくりしゃべるのよ。


だから、私と凄くペースが合うの。


彩芽と私が二人でいるとね、


「あんた達、天然同士だからいいコンビ

よね」


ってよく言われる。



二人でいると、美波が時々やって来て

かき回すのよ。


保育園の頃からそうだった。



◇◇



美波は保育園の時、男の子とばかり遊んでてね、いつも外でサッカーばっかりしてたの。


だから、足が速くなったのね。


普通の女の子みたいに、お絵書きとか、折り紙とか、おママゴトなんかは、ほとんどしないの。


それでも時々、思いついたように

私と彩芽のところにやって来て、


「ピンポーンこんにちはー、宅急便でーす」


とかって言ってるの。


だから私たちも、途中でそれまでの遊びを止めてね、美波に合わせて、


「どうも、ご苦労さまです。暑いのに大変ですね」


とか言うの。


「いいえ奥さん、これも私の仕事ですから。

お荷物ここでよろしいですか? こちらに印鑑

かサインをお願いします」


とか言って、汗をタオルでぬぐう振りをする

のよ。


それが、宅急便屋さんによく似てるの。


みんな爆笑してたわ。



美波はいつも男役ばかりなの。

脚本も演出も全て美波なの。

 

お父さん役もよくやってくれたわ。


「ガチャ、ただいま!」


って美波が玄関を開けて、入ってくる振りをするの。 


「よっ、こらしょ」


とか言って、後ろ向きに座って靴を脱ぐ真似をするの。


私たちはあわてて駆け寄って行って、


「パパ、お帰りなさい」


って言うのよ。


そしたら美波が、左肩を少しクイッ、クイッて動かしながらリビングに入って来る振りをするの。


そしたら、私たちはね、


「パパ、ご飯にする? お風呂にする?」


って言わなきゃいけないの。


「あー疲れた。今日はお風呂が先だ」


とか美波が言って、ネクタイをゆるめて、

上着を脱ぐ真似をするの。


それが、美波のパパの仕草しぐさにそっくりでね、肩をクイッてらすところなんか本当によく似てるのよ。


それを、五歳くらいの小さな女の子が演じるから、可笑しくて可笑しくて、みんな大笑いなの。


保育園の先生達も爆笑してたわ。



美波と彩芽とは、同じ保育園から同じ小学校

に入学して、一年生の時から四年生の時まで

ずっと同じクラスだったの。


私、本当に運が良かった。


小学校に上がると、保育園と違って勉強も難しくなるし、先生達も厳しくなるでしょ?


友達も増えるし、人間関係も複雑になるわ。

イジメなんかもあるし、二人がいなかったら私、小学校での生活に耐えられなかったかもしれない。



◇◇



私ってね、パパに似て目が異常に大きいの。


ママの目は普通の大きさだから

きっと、パパの遺伝いでんね。


普通の人の一・五倍くらいはあるかも

しれない。


みんな私のこと美人だって言うけど、私は自分のこと、全然美人だなんて思ってないの。


美人って言うなら、私より美波や彩芽の方がよっぽど美人だと思うわ。


だって私は目が大き過ぎて、ギョロギョロしてる感じがするし、鼻は小さ過ぎるし、顔中うぶ毛だらけだし、ひたいの所に小さな血管がいくつもけて見えるところもいや


いつも鏡を見てガッカリするの。


夏になると、小さな虫が目に飛び込んで来て

よく充血するの。


前歯が抜け変わった時なんか、笑うと化け物みたいな顔になったのよ。


自分でも、鏡を見て怖いと思ったの。


色は白いけど、肌が弱くて直ぐかぶれるし、

運動したり気持ちが動揺したりした時なんか

直ぐに顔が耳たぶまで真っ赤になるの。


足の裏には、よくイボができるし、去年できた時は、本当に歩けないくらい痛かった。


病院にかよって、なおるまでに一カ月くらい

かかったわ。


だから、みんなが言うほど、私、自分自身の容姿ようしに自信が持てないの。



だけど、私ってイジメの標的ひょうてきにされやすいみたい。


何でか分からないけど、よく仲間外れにされたりするし、陰で、私の悪口を言ってる子もかなりいるみたい。


[やっぱり、天然だからかな?]


って思ってたけど、そうでもないみたい。



四年生の時、美波から言われたの。


「未央は綺麗だから、みんな焼きモチ焼いてるんだよ。今まで気づいてなかったの?」


って。


私、そんなこと一度も考えたことなかった

からビックリしたわ。


「男子だって未央のこと好きな子結構いるんだよ。よく翔太しょうたが未央のことからかったりごうが未央に消しゴム投げつけたりするでしょ? あの二人は未央のことが好きなんだと思う。好きなら好きってこくればいいのにね。まったく、あいつら男らしくないよね」


って美波が言ったの。



私、美波からそう言われて、耳たぶまで顔が真っ赤になっちゃった。


面倒くさい時もあるけど、あの二人はイケメンだし面白いから、私、翔太のことも、剛のことも、そんなに嫌いじゃなかったの。


スポーツも出来て、成績も良いし、

優しくしてくれる時もあったのよ。



◇◇



美波が教えてくれたこと、私、家に帰って

よく考えてみたの。


私、本が好きだし、世界童話全集とか大人が

読むような恋愛小説とか、結構読んでたから

人の気持ちが分かっているつもりでいたの。


だけど美波に言われて、私、頭でっかちで、

何も分かっていなかったことに気づいたの。


私って、本当に鈍感だなって思った。


でも美波って凄い。

観察力かんさつりょくあるし、本当に頭良いなって思う。



それからは私、もっと、現実をしっかり見つめて、客観きゃっかんてきに自分のこと見なきゃいけないって思った。


そしてこういう結論けつろんたっしたの。


[私は自分が綺麗だなんて思わない。でも、他人は私のことを綺麗だと思ってる。私という存在そんざいは、他人に嫉妬しっとの感情を起こさせる。

だから、気をつけなければならない]

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ