おじいちゃんのお通夜
その日は、いとこ達と同じ部屋で、
夜遅くまでテレビを観て過ごしたわ。
啓ちゃんと伸ちゃんは、
「おじいちゃんのお化けが出るかも
しれない」
って、怖がってた。
「啓二、ちょっとおじいちゃんを見
て来いよ」
って、伸ちゃんが言ったらね、
「嫌だ、兄ちゃんが見て来いよ」
って、啓ちゃんが言うの。
「何だ怖いのか?」
「兄ちゃんこそ怖いんだろう?」
とかって、言ってるの。
この二人は本当に笑っちゃうくらい、いつも
ケンカばかりしてるの。
啓ちゃんはその時小三。伸ちゃんは小五。
この二人はママの二番目のお姉さんの子供。
◇◇
節ちゃんと、夏ちゃんは、順子お姉ちゃんの
妹なんだけど、この二人は普段から、とても
おとなしくて優しいの。
節ちゃんは学校は違うけど、私と同い年で
小四。夏ちゃんはまだ幼稚園で四歳だった。
三人はとても仲の良い姉妹。
この三人もママの一番上のお姉さんの子供。
だから、私のママはおじいちゃんの一番下の娘なの。
夏ちゃんはまだ小さいから、おじいちゃんが亡くなった意味が、よく分からないみたいだった。だけど、
「あーあ、おじいちゃん死んじゃった」
って、何度も呟いてたわ。
それが可愛くて、私、こんな時なのに、
つい笑っちゃったの。
節ちゃんは悲しそうに泣いてたわ。
節ちゃんも本当におじいちゃんのことが
大好きだったから。
順子お姉ちゃんから肩を抱かれて、
慰められてた。
◇◇
その日の夜はテレビを観ながら、いつの間
にか私もいとこ達もコタツで寝ちゃったの。
大人達は遅くまでお酒を飲んでた。
時々、大声で泣く声や、笑い声が聞こえて来
たわ。ずっとザワザワしてうるさかった。
時折り、潮騒の音も聞こえて来たの。
[お通夜って、こんなに賑やかなんだ]
って、私、夢うつつの中で思ったわ。
◇◇
私ね、実は、
[おじいちゃんのお化けが出て来てくれない
かな]
って、思いながら寝てたの。
伸ちゃんと啓ちゃんは、お化けを怖がってたけど、実は私、お化けは全然怖くないの。
死ぬことに対する恐怖心はもちろんあるわ。
その日だって、人の亡き骸を初めて見て、
とてもショックだったし、凄く怖かった。
だけど私の中では、お化けはまた別なの。
だってお化けがいるってことは、人間って死
んだらそれで終わりじゃないってことよね?
やっぱり、人間には魂があって、死んでも
何処かで生き続けるってことでしょ?
それに私、前に一度お化けを見たことあるし、免疫が出来てたの。
その話はまた後でするね。
とにかくその日、私はおじいちゃんに、
ちゃんとお別れが言いたかったの。
だから、お化けでも何でもいい、夢の中ででもいいから、おじいちゃんに会いたかった。
だって、私が最後にお見舞いに行った時、
おじいちゃんはもうすでに意識が無くて、
植物状態だったんだから。