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賢者の胆石  作者: 佐藤謙羊
第2章
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27 試験に向けて

「ふしゅる、ふしゅる、ふしゅるるる~! まさかフシュの『プチプチ』が、昇進試験に挑むとは……! ふしゅるるる~!」



「はっ? 『プチプチ』……?」



「バカっ! メイルシュトローム様がお付けになられた、シトロンベルさんの愛称だよっ! そのほうが、あの無宿生(ノーラン)のチビなんかより、ずっと親しい感じが出るだろうがっ!」



「そ……そういうことか……! そ……そうですね! まさかメイルシュトローム様のプチプチが、メイルシュトローム様のお気遣いを無視するだなんて……はぐうっ!?」



「ふしゅるるるるーーーーっ!! シトロンベルのことをそう呼んでいいのは、彼女の飼い主となる、このフシュだけですっ……!!」



「ぐっ……ぎぎぎっ……!? お、お許しをっ! ど……どうか、お許しをっ……! がはあっ……! はぁ、はぁ、はぁ……」



「も、申し訳ありません! わ、私からも、よく言ってきかせますので……! で、でもまさか、レッド・ジャイアントの活き剥ぎの試験を、受諾するとは思ってもみませんでした! 我々が苦慮して考えた、どうやっても達成不可能な試験内容を、メイルシュトローム様の偉大なるお力をお借りして、教師陣にねじ込んだのですが……!」



「ふしゅるるる……! それはきっと、名を口にするのも耳にするのも忌まわしい、あの(●●)無宿生(ノーラン)が……! プチプチをそそのかしたからに違いありません……! しゅるしゅる、ふしゅるるる!」



「はい! やっぱりあのセージとかいう子供は、この学園においての危険分子に他なりません! でもレッド・ジャイアント相手では、ひとたまりもないでしょう! ですから……あぐうううっ!?」



「ふしゅるるるるーーーーっ!! その名を耳にするのも忌まわしいと、いま言ったばかりではないですかーっ!! ふしゅるるるるるるるるーーーーーーっ!!」



「あぐっ……がああああああっ!? めっ……! メイルシュトローム……さ……ま……! がふうっ!?」



 ◆  ◇  ◆  ◇  ◆



 シトロンベルが、賢者(フィロソファー)候補生になるための昇進試験を棄権せず、挑戦すると決めた翌日。



『我が学園のアイドル、シトロンベル! 昇進試験に挑戦!』



『課題はレッド・ジャイアントの活き剥ぎ! この学園始まって以来の、超絶難易度の試験に挑む!』



『無謀ともいえる挑戦は、次期絶対聖母アブソリュート・マドンナのための布石!? シトロンベルは、転んでもタダでは起きない魔性の女だった!?』



『同行者は、ズングリムック君、チャン兄妹。そして、無宿生(ノーラン)のセージ君っ!』



『セージ君が宣言! 「この課題が終わったら、俺、彼女と結婚するんだ……」』



『試験当日は、クエスト中継イベントも同時開催! 賢者(フィロソファー)候補生以外のクエスト中継は、この学園でも初の試み!』



『なにもかもが、初めての「昇進試験」……! 波乱必至の中継を見逃すな!』



 などという虚実入り乱れた見出しが、ふたつの学園新聞に躍っていた。


 それで気付いたのだが、『イエローペーパー学園新聞』は、煽り立ててはいるものの、嘘は書いてはいなかった。

 対する『レッドトップス学園新聞』は、明らかなるデッチあげが含まれている。


 シトロンベルを魔性の女だの、この課題が終わったら俺が結婚するだの……。

 勝手に人の死亡フラグまで立てやがって……。


 でも、まーいっか。


 俺は今まで、死神が立てたフラグですらヘシ折ってきたんだ。

 見ず知らずのヤツが、俺にコソコソと立てられるフラグなんて、お子様ランチの旗くらいのもんだろう。


 それに、そんなことを気にしてるヒマがあったら、これから戦うことになる『レッド・ジャイアント』について対策を立てるのが先だ。


 俺、シトロンベル、リコリヌ、ズングリムック、チャン兄妹……。

 5人と1匹で構成された昇進試験挑戦パーティで、ひとまずそのデカブツの顔を拝みに行くことにする。


 といっても、実物に会うことはできなかった。

 ボス系のモンスターは、ボスのいる部屋に入らないと出現(ポップ)しないからな。


 俺たちは10階の裏ボスのいるという部屋を、安全地帯側から覗き込む。

 そこはがらんとした、だだっ広い空間だった。


 王様の謁見場を模しているのか、レッドカーペットやシャンデリアのような、豪華な調度品っぽい形状に周囲の水晶が削り出されている。


 全長で200(メトル)はありそうな空間の最深部には、ひときわ豪華に飾り立てられた玉座があった。

 距離がかなり離れているので、ちょっと大きめの椅子に錯覚してしまいそうだが、ちょっとどころではない巨人用。


 椅子の脚のところが、こけしみたいにくびれたデザインになっているのだが、その部分がだいたい俺の腰あたりくらいの高さ。

 こりゃ、噂以上のジャイアントっぷりのようだ。


 なお裏ボスの部屋も、普通(ノーマル)ボスと同じように、いちど足を踏み入れると部屋には鉄格子が降りる。

 そしてボスを倒すか、部屋に入った全員が戦闘不能になるまでは出られなくなる。


 唯一違うのは、時間経過によっても鉄格子があがり、ボスを倒さなくても脱出可能になるという点。

 レッド・ジャイアントは不死身らしいから、そうじゃなきゃ困るよな。


 しかし活き剥ぎを達成できたところで、その時間経過があるまでは逃げることはできない。

 そうやらそれも、この課題を難しくしている一因のようだ。



「じゃあ、俺だけがボスフロアに入って、剥ぎ取ったものを鉄格子ごしにシトロンベルに渡してやればいいんじゃないか? 最後は俺が鉄格子を抜ければ達成だ」



 と、提案してみたのだが、



「と……とんでもない! セージちゃんだけ危ない目に遭うだなんて、絶対にダメっ!」



 人間爆弾に志願する息子を止める母親のように、猛反対されてしまった。

 いいアイデアだと思ったのだが、しかしそもそも、レッド・ジャイアントの爪や角は大きく、鉄格子の隙間を通らないらしい。


 やっぱり、まともにやりあう以外の方法はないようだ。

 巨人のお宅訪問を終えた俺たちは、次に教師や図書館などをたずね、デカブツに対しての情報収集をした。


 先生方へのインタビューのほうは、優等生であるシトロンベルやクリスチャンに任せ、残った俺たちは図書館で本と格闘。

 モンスター図鑑を手当たり次第に読みあさった。


 集まった情報を総合すると、大切なのは、いかにターゲットを引きつけるか、という点にあるらしい。


 まずパーティメンバーを、レッド・ジャイアントの気を引く『おとり班』と、レッド・ジャイアントの足の爪を剥ぐ『攻撃班』とに分ける。

 『おとり班』が先行して、レッド・ジャイアントの攻撃を一手に引き受け、その間に『攻撃班』が玉座の足元に忍び寄り、足の爪を攻撃する。


 激しい攻撃が集中することになる『おとり班』は回避に専念。

 『攻撃班』は剥ぎ取りの最中に、レッド・ジャイアントの足攻撃が来ることがあるが、それは比較的かわすのが容易らしい。


 しかしヤツの爪や角は硬く、ミスリル銀相当の武器がないと剥ぎ取りは難しいそうだ。



「なら、この中ではいちばんすばしっこい、俺とリコリヌが『おとり班』だな。お前たちは『攻撃班』になればいい。シトロンベルの剣はミスリル銀だから、彼女を主体として、他のヤツらが援護してやるんだ」



 本来、レッド・ジャイアントを相手にするには、攻撃班もおとり班も数百人規模……。

 安定して『活き剥ぎ』をするためには、おとり班を200人くらい用意したほうがいいらしいが、無い袖は振れない。


 仲間たちは、俺とリコリヌがおとりになるのは危険だと、この提案にも反対してきた。

 が、いい対案も出なかったので、結局しぶしぶ受け入れる。


 だいたい作戦は決まったので、いよいよ実戦に向けての特訓に入った。


 『攻撃班』はシトロンベルをリーダーとし、『天地の塔』にこもってモンスター相手に連係攻撃の練習。

 『おとり班』である俺とリコリヌは、彼らとは別に山にこもって回避の特訓。


 課題の期限いっぱいを使って、俺たちは技に磨きをかけた。


 その間、仔犬だったリコリヌは、すくすくと大きくなり……。

 全長が俺の倍、お座りしてても俺よりも大きい、超大型犬に成長した。

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