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「それよりアル。何か用があったんじゃないの?」
「ああ……また、被害が出てしまった。」
「そう……」
最近、ニーゲリム領では子供を狙った事件が起こっている。初めは3週間前。森に近い村で、4歳の女の子が被害に遭ってしまった。どうやら動物に噛み砕かれたようで、骨が所々折れ、血があたりに広まり、現場を見に行ったが、とてもそれが人であるとは思えなかった。森に近かったこともあり、村に迷い込んだ狼による不幸な事故だと思われてたのだが、そうではないことをすぐに知ることになったのだ。
「今回で5人目ね……」
その2日後に2人目の被害者が森からは離れた村で出てしまった。それからは数日置きに、毎回年端もいかない子供が狙われている。ここまで来たら、事故だなんて思えない。
「くそっ……俺にもっと力があったら……」
「アルのせいじゃない。」
「でも……俺は次期領主だ。だから、俺が領内の人達を守らなきゃいけないんだ。それがっ、俺の使命だから。」
「……なら、調べようよ。」
「そりゃ、調べたい。でも、止められてて……」
「誰に止められてるの?おじ様?」
「父上が……そんなことお前がする必要はないって。」
「……なら、私に協力してよ。アルじゃなくて私が調べるなら、おじ様も何も言わないでしょ?」
「確かに、父上はリンに甘いしな……でも、リンを巻き込む訳にはいかない。リンも、俺が守るべき領民なんだから。」
「そうやって……」
肝心な時でアルは私を頼ってくれない。いつも1人でなんとかしようとしてしまう。私だって、アルの力になりたい。アルが昔、私の力となってくれたように。
「巻き込みたくないなら、最初から事件の話なんてしないでよ。私が興味持っちゃうの分かってたでしょ?」
「それは、」
「なら、その責任取って、私に付き合って?ね?」
「……分かった。俺が何言ったってリンは退かないよな。」
「アル……絶対に解決しようね。」
私だって、この件に関しては怒っているんだ。何の罪もない子供を狙うのは絶対に許せない。
そうして、私たちの調査は始まった。