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第九十五話「来訪!」

 さらにその翌週末、なんとこのスノーガールズのメンバーたちが雪乃亭にやってきた。

 まだお昼には少し早い時間帯だ。

 その日はボクと母さんが客席担当を務めることに。

 まだお客さんは他に誰もいない。

 ドアがからんからんと鳴った。

 ひょっこり顔をだした若い女性。


「すいません、もう開いてますか?」

「あ、大丈夫ですよ」


 にこやかに挨拶する。

 営業中の表札も出してるけど、誰もいないお店に一番で入るのが気が引ける心理があるもの。


 そして誘われるように、後から続くように二人の女性が入ってきた。

 ボクはすぐに気づいた。

(あ、スノーガールズだ!)

 思わず顔と声に出そうになったが、かろうじてこらえる。

 あくまでも


「あ、良さそうな感じのお店じゃん。」


 ポニーテールの女性が店の中を伺う。


「ここにしようよ……」


 髪短めでちょっと幼めだが元気な声の女性。


「もう、朝からくたくた……どこでもいいです」


 そしてその後ろから伺うように、おとなしめのストレートロングの女性。


 いずれも昨日のような着物姿は違って普通の格好だ。

 コートを寒そうに着込み、ボタンをしっかり閉めて、体を縮ませている。マフラー、手袋、耳あてなんかのアイテムも使っている。

 みんな寒さが苦手そう。

 昨日はもしや我慢してたのか。 

 まあ今日は天気予報で最高気温0度以下。しかも雪が容赦なく降ってるから、雪ん娘アイドルとはいえ、昨日のトレードマークの着物で外を動き回るのはかなり辛いだろう。


「お願いします」


 入店しようかどうか、まだ迷っていたので、ボクも様子をみていたが、店に入ることにしたようだ。


 体や手を擦ったりさすったりしながら、店内に入ってきた。

 口を揃えて店の暖かい空気に触れて「あー暖かいね」と、ほっこりしあっている。

 今のボクには暑いくらいなんだけどね。


 えーっと、確か……。

 一昨日見せて貰った写真画像から、思い出す。


 ポニーテールの女性は麻衣さん。スノーガールズのリーダー。一番大人っぽい。

 短めの髪の子は、むつみさん。声優さんみたいな幼いアニメ声だ。

 ストレートロングの子はみなさん。グループで一番年下。

 合い言葉は「雪と氷であなたの体と心を永遠に凍らせちゃうぞ」

 ううん。ボクまでアイドルに詳しくなってしまったぞ。


「いらっしゃいませ」


 中へ案内する。


「奥の方の席空いてますか?」


 他にお客さんがいなかったので、お望みどおり、一番奥まった席に三人を案内する。


「え? あ、こちらへどうぞ」


 そして温かいお茶を出し、とメニュー表を渡す。

 お客さんの状況に応じて、お冷やではなくて暖かいお茶を出してさりげなく喜んでもらう心配り。


「君、昨日みてくれてた子でしょ? この店の子だったんだ」


 なんとボクのことに気づいていた。

 リーダー格の麻衣さんは落ち着いた感じの人だ。


「へえー、ほら、歌ってるときに聞いてくれてた子だよ、みな」


 むつみさんは元気な雰囲気の人。

 

「ありがとう。みんなで話してたんだよ……、昨日可愛い子が見てくれてたって」


 みなさんはおとなしくて控えめな子だ。

 接してみると舞台下からは見えてこなかったそれぞれの性格が伝わってくる。


「え? そうですけど、覚えてたんですか?」

「もちろんだよ。聞いてくれるお客さんは、目に焼き付けてるから」


 両手の親指と人差し指で眼鏡のジェスチャー。


「そうそう」

「まあ、とびきりかわいいかったからってのもあるけどねー」


 しみじみ三人それぞれでボクの方を眺めてくる。


「そうだったんですか。感激です」


 ちょっとぐらっときた。流石、プロ。相手の心をくすぐる能力もある。


「ところで今日はみなさんどうしたんですか?」


 ついつい引き込まれて会話が弾んでしまった。お客さんもいないことだし。


「もちろんお仕事だよ」


 街を散策する企画で、色んなお店を朝から回っていたんだとか。

 で、お仕事の合間に三人仲良く一緒にこの店へ。こういう経緯らしい。

 仲も良いんだな。ドロドロしてる……なんてこともなさそうだし。

 テーブルの上にお茶を並べる。メニューを置く。

 三人ともありがたそうにお茶で喉を潤す。

 飲んで一息つくと、元気を取り戻した。


「どうだった? あたしたちの新曲」


 麻衣さんから、また同じことを聞かれる。反応は気になるのは当然だ。


「良かったですよ、すごくノリが良かったし」


 歌は悪くないが雪ん娘、あんまり関係ない曲と歌詞だったような気がしたけど。辛口批評は控えることにした。

 ボクの何気ない返事に三人とも目を輝かした。


「やっぱりそう思う!? 今回は曲結構いい感じだと思ってたんだ」 


 むつみさんが、ガタッと立ち上がった。


「反応良かったしねえ、いつもよりも多く聞いてくれたし」


 みなさんの方をみる。


「あ、あたしも……凄く嬉しかった」


 コクコク頷いた。

 き、昨日のあれで反応が良かったのか。

 良くない時の反応がどれだけだったか怖くて聞けない。


何度も書いてすいませんが、アイドル関係のネタはこの物語向けにデフォルメしてますので、細かい部分はとりあえずご容赦を。

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― 新着の感想 ―
[気になる点] 合い言葉は「雪も ううん。ボクまでアイドルに詳しくなってしまったぞ。 この部分なんか文章抜けてません?
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