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第九十二話「買い出しあれこれ」

「ま、デビューはともかく、いろんなところに出没してイベントとかに顔をだしてるみたいだから、雪耶ちゃんも目にする機会があるかもよ?」

「ふうん……」

「お、スノーガールズじゃん。北原さん、好きなの?」


 改めて記事を眺めていると、クラスメイト男子の菅野が会話に割り込んできた。

 そしてボクが読んでいた記事も横から覗きこんでくる。


「え? いや、あんまりこういうの知らなくて」

「俺は結構好きだぜ」

「知ってるの?」

「ああ。歌もうまいし動画も頻繁にアップしてるしな。隠れファンは結構いるぜ」


 菅野は自慢のスマホを取り出した。なんと壁紙にしていた。

 3人のフリフリ衣装がまばゆい。

 そして貴重なライブや一緒に撮った写真の数々。

 女子からも、驚嘆の声があがった。

 なんとここに熱心なファンが一人。


「スノーガールズか……」


 とりあえず覚えておこう。

 とはいえ家に帰って店の手伝いをする頃には、すっかり頭から離れていた。

 再び思い出すことになったのは、週末の土曜日。

 学校が休みのその日は朝早くから、父さんと一緒に店の買い出しに行くことになった。


「いってくるよー、雪乃」


 父さんが窓を開けて手を振る。

 店の前まで送りにやってきた母さんも手を振っている。


「修ちゃんも雪耶も、あとは任せて、じっくり回ってきてね」

「いってきまーす」


 ボクも助手席から母さんに手を振った。


「おーし、いくか」


 そして父さんのかけ声と共に発進。エンジン音。

 バックミラーに映っている母さんがすれ違う近所のおじいさんとおばあさんに挨拶しているのが見えた。

 仲良く軽いおしゃべりまでしている。

 日曜日はお昼までお客さんは少ないため、お店はのんびりしている。

 この間をぬって、買い出しにいくのが習慣なのだ。

 そして後のお店は母さんに任せて、父さんと一緒に買い出しの手伝いである。

 店の仕事もすぐに慣れて、今や料理も良し、接客も良し。一人で任せられるまでに至っている。

 母さんは本当に凄い。


「母さんが帰ってきて良かったよね」


 しみじみ父さんに話す。

 いない頃のことが、もうすっかり過去みたい。

 毎晩、写真でしか会えなかった母さんと毎日いることが、もう当たり前だ。

 まあ母さんが雪女でボクが雪ん娘になってしまってさらに厳しい修行の日々があるけどね。

 その後の色々な事件もあったけど……。


「これからももうずっと一緒なんだよね」

「そうだなあ……」


 あれ。父さんの顔がちょっと曇った。

 車内が揺れ父さんはハンドルを大きく切った。

 そうだ。ここらへん、よく皆が酷道なんていうぐらいハンドル操作が難しい箇所だから話しかけちゃだめだったか……。

 軽トラックがくねくね曲がりくねった国道の坂道を下ってゆく。


 駅前にはちょっとした商店街があり、大体のものはそこで仕入れる。

 業務用スーパーなんてのもこの辺りには無く、大抵はずっとつきあいのあるお店ばかりだ。


「おし、行くぞ……」

「久しぶりだなあ、あそこに行くのも。ねえ父さん(おじさん)

「はは、おじさんか」

「自分で言い出した設定でしょ」


 ボクは姪。父さんはおじ。


「困るよ、忘れてたら」

「わかったわかった」


 ハンドルを握るその父さんはどこかのトラック運転手そのもの。実際、大型免許持ってるんだよね。いつ取ったんだか。

 隣の助手席にはボク。

 ガガガガ。

 これまた年季の入ったエンジン音のする軽トラックを運転して、買い出しに向かうのである。

 もう何回繰り返したことか。



 とは言っても街まではさほど遠くわけではない。

 車で二十分ほど運転して、駅前に到着した。

 駅前通りは綺麗に雪かきされて整備されている。駐車スペースに止めて、いざ買い物だ。

 そして、立ち並ぶお店を一通り回るのだ。

 乾物、調味料、お米、などなど。それに洗剤や掃除道具などの雑貨類も買っていく。

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