第八十六話「気になる変化が」
動揺しているボクをなだめつつ。
「ところで……雪耶ちゃん。カラコン入れてるの?」
夏美ちゃんが、不思議そうにボクの顔を覗き込んだ。
「え? 何? からこん?」
「あの目に入れるやつ?」
ボクは昔から視力はいいから無縁である。
「ずいぶん、大胆だなって。学校の先生に注意されちゃうと思って」
知っている。カラコン、マニキュアなどは女子は禁止。
興味が無いボクには無縁の規則だから意識などしていなかった。だから余計夏美ちゃんの指摘が不思議だった。
「ぼ……わたしの目? いや、特には……」
目を抑えて何もないアピールする。
「あ、そうなんだ。じゃあいいんだけど……別に……ちょっと色が銀色っぽく見えて。ううん、綺麗だと思うんだけど」
夏美ちゃんは、なんだか不思議そうにしている。
「なんか人間離れした美しさっぽくて」
智則は夏美ちゃんの指摘に同調して頷く。
「そういえば、雪耶ちゃんの叔母さんもそうだよな。
「ああ、凍子ちゃんも確かそうだしな」
凍子ちゃんって……そっちの方が気になってしまった。
「あんなのと一緒にしないでよ。二人とも」
また始まった、と二人はあきれ顔。さらに智則はフォローする。
「そういう言い方すんなって」
やけに凍子の肩を持つじゃないか、智則も。
その夜、ボクは鏡の前でじっとみつめた。
「本当だ、なってる……」
ここのところ、お風呂に入る度に感じている。
これがボク……とか
やだ、ボク、可愛いとかそういうナルシスト的なことじゃない。
さらに色白になってる気がする。文字通り雪のように白くなってきてる……。
そして……もともと黒いはずの瞳。
鏡で自分をのぞき込む。
「やっぱり……」
黒い瞳の中に銀色が混じり始めている。
夏美ちゃんの言っていたとおりだ。
まだじっとみなければ気付かない程度だけど。
これは……。まあ逆に黒いカラコン入れればなんとかならないかな。
髪の毛も伸びてきてる……。まあそれは切ればいいけど。
ただ、母さんに似ているといえばそうだ。母さんもそうなのだ。
全体的に姿が雪ん娘よりになってきているのかな……。
ボクは……人間ではなく白い世界の住人になってゆくのか?
ちょっと体つきも女の子っぽくなっている。ちょっとおっぱいでかくなったかも。
お尻もなんか。
そりゃこのご時世、無理にスカートを穿いたりさせられることもないけど、なんか想像もしたくない。
体洗おう……。
「あちちちっ」
ひねった瞬間にあつあつがでてきた。
やけどするかと思った。
はあ……。
あれ。給湯器のスイッチまだ入れてないのに。




