第六十七話「パクられた!?」
翌日は上機嫌で登校した。
「雪耶ちゃん、新作のうどん評判いいんだって?」
朝は早速夏美ちゃんから聞かれた。
「うん、まあそれほどでもないけど」
教室でも雪乃亭の新メニューは噂になっていた。
結構実家が商売やっている子は多いからね。
「凄いみたいだね~、北原さんとこの新商品。うちの村の名物になるかもね」
「うちも噂を聞いて、今度食べに行ってみようって」
ふんふん。
鼻高々。天狗の鼻が天まで伸びる勢い。
「みんなも、一度食べに来てよ」
女子たちに宣伝。
「へえ、北原さんとこ、新メニューが山菜うどんなんだってね」
クラスメイトの男子、菅野が聞いてきた。
「そうだよ」
ふふん、と胸を反らす。
「うちのとっておきの新作だからね」
「そっか北原さんのところでも、始めたんだね、山菜うどん」
「ところで……「も」?」
なんだ、その引っかかる言いまわし。
うちが初めての新作メニューなのに、そうじゃないみたいだ。
「あ、知らないんだ。氷倉ホテルでも、やってるんだよ。それを参考にしたんじゃなかったの?」
「は?」
菅野はスマホを持っていた。一応持ち込みは禁止ではあるが……。おおっぴらにやらなければお咎めはない。うちの学校は持ち物検査もないから。
まあ、氷清中学校、風紀はそれほど乱れていないのも一因で、先生たちも生徒にそこまで厳しくはない。
菅野は辺りを伺いながらポケットからこっそり取り出し、画面を操作する。
「お、これこれ。北原さん」
そしてボクに表示された画面をみせる。
氷倉プリンセスホテルとロゴが右上に表示されている明らかにウェブ制作のプロが作ったと思われるスマホサイトがアップされている。
「ほら」
怪訝になりながらも画面をのぞき込む。
「新メニュー、山菜うどん登場!」
いきなりトップ画面に大々的に表示されている。
そしてアニメーションを使った演出が次々に現れる。
一流料理人が厳選した地元で取れた野生の山菜をたっぷり使ったうどん。
栄養のバランスもよく、とってもヘルシー。
キャッチコピーもなんか似ているぞ。
食数限定。大人気メニューにつき、予約はお早めに。
まさか、これは……。
「ぱ……ぱくられた!?」
何から何までメニューから謳い文句までそっくりじゃないか。
しかもうちより二百円も安い。
「ぐ、ぬぬ……」
握りつぶす勢いで、画面を睨む。
「き、北原さん、俺のスマホ、割らないでほしいな……」
「許さんっ」
すぐさま立ち上がり、つかつかと廊下へでる。
隣の二年二組の教室へ向かう。
凍子の奴は取り巻きと話をしていた。
こちらに背を向けている。
「おい、こら。性悪女」
向こうもすぐに気づいた。
「あら、何かしら。野蛮な雌猿さん」
こっちを髪をかきあげつつ、振り向く。
やれやれ、相手してやるかという雰囲気だ。
やってやろうじゃないか。




