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第六十三話「長い一日の終わり」

 智則からのお見舞い帰り。

 ボクは悔しくてしょうがない。なんども雪の積もった地面を蹴とばした。


「くそっまさか、あの雪女に、同じように扱われるとは……」


 凍子とは引き分け。

 これでも智則と自分は、幼馴染同士でよくわかりあえているちおう自負があったから、凍子と同じように扱われたのは、ショックではあった。

 雪耶はあくまでも転校してきた新参女子という設定。

 このやむを得ず来ているセーラー服にスカートが恨めしい。


「雪耶ちゃん、まだ挽回するチャンスはあるからね」

「もう違うって……」


 智則のことが好き、だなんて噂が立つのは勘弁だ。ただボクは心配しているだけだ。



「おかえりなさい、雪ちゃん」


 帰ると母さんが店の客席に立っていた。

 お客さんがいなくなったテーブルを拭いていた。

 昔使っていたという白と青のストライプ柄のエプロン姿だ。

 聞くと、今日一日、ボクが学校行っている間は、あのエプロン姿で、店番をしてくれていたという。

 学校へ行っている間も、母さんが店番をするようになったので、うまく回せるようになったのも確かだ。

 元々二人で始めたお店だったのだから。

 そのころから店のメニューもシステムもそんなに変わっていないので、十何年ぶりとはいえ、店番もすぐにできるようになった。


「おう、お帰り。ちょうどお客さんが帰ったところだよ」


 父さんもぬっと奥から顔を出す。もうラストオーダーの時間も過ぎたので片付けだ。ちなみに、特別なことがなければ、夜の7時で閉店です。

 夜遅くまでダラダラやっても疲れるだけだから、という理由で――。


「夕食はこれからだから、もう少し待っててね」


 母さんは、テーブルを拭き終えると、箒とちりとりを持ち出した。


 夕食時。

 三人でテーブルを囲んだ。


「ここの看板はあそこの板金屋さんに作ってもらったのよ」

「この入り口のレジカウンターはお隣の町まで買いにいって……」


 食事をしながら今日は母さんが昔の話をしてくれる。


「はは、そういわれても雪耶はわからんだろう。その頃は影も形も無かったんだからな」


 むしろボクの知らなかった、思い出話も聞かせてくれるので嬉しいぐらいだ。

 雪ん娘になってしまったせいで女の子の姿になってしまい、同時に女子としての生活を余儀なくされている。

 とはいえ、家族三人で過ごせるようになったことは、それ以上の喜びではあった。

 夕食の時間が毎日楽しみだった。

 そりゃあ父さんと二人きりの夕食も駄目だったってことではないけれどね。


「今日は何かあったの?」

「うん……いろいろね」


 ようやく大変な一日が終わろうとしている。

 朝の靴箱の手紙、中島先輩の哀愁ある背中、部活、それに智則のお見舞い。


 そうだ、智則に……雪哉からメッセージ送っとかないと。

 食事を終えて自分の部屋に戻ったら、直ちにパソコンを立ち上げる。


(どうしようかなあ……)


 立ち上げたものの文面は思いつかない。

 ふと窓の外を見た。


(あ、また雪が降っきてる)


 一日はこれでようやく終わったが、まだまだ雪の季節は終わりそうもない。


長い一日、終了。

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