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第百十一話「新・スノーガールズ誕生」

 天気予報はなんと大雪。

 窓の外は真冬真っ最中のごとく銀世界。


「うわー、今日も降ってるねえ……」

「本当に春が来るのかよ」


 クラスの男子女子たちも窓に張り付いて外を眺めている。

 雪になれている氷清中の生徒たちも、もうすぐ春というこの時期の大雪に流石に驚いていた。

 ぐったり机の上にうつ伏せになりながら、みんなが騒いでいる様子を聞いていた。


「北原さん、昨日休んでたみたいだけど大丈夫?」

「う、うん、まあ……」


 まだあの時の後遺症が残っているのかのぼせてる感じだ。

 こりゃ本格的にもうお風呂ではなくて水風呂じゃなきゃダメな体になってるか……。


「ゆっきー、これ見てよ。この間話したスノーガールズ」


 岡本さんの声に突っ伏していた机から顔をあげると目の前にスマホの画面があった。


「え? 何?」


 スマホで流れてくる動画をとりあえず見てくれということらしい。

 いつの間にか北原雪耶は熱烈なファンという設定になっていた。


「みてよ。スノーガールズ、ご当地アイドルランキングが急上昇で今2位だって。これは1位もあるかもね」


 上機嫌でこっそりスマホをみせてくれた。またあのご当地アイドルのランキングwebサイトだ。

 その中でもスノーガールズが急上昇!のロゴ入りで紹介されている。

 アップされた最新の動画が何十万回も再生されているというのだ。SNSでも拡散されている。

 こういうのをバズってる、というらしい。


「へえ……、新曲発表してたもんね」

「え? ゆっきーもファンなんだ? 可愛くていいよね、あたしもはまっちゃった」


 岡本さんが喜んでいた。


「この間、ちょっとみただけだけどね……でもスゴいことになってるな」

「本格的に人気に火がついた感じねえ」


 人気にブーストがかかったとか。いろんな場所で曲も聞くことができ、ネット上でもテレビでも色んなメディアでもみるようになったとか。

 歌詞が流れていた。


「なんか綺麗でクールな感じが雪ん娘みたいで大好きっ」


 歌と踊りに磨きがかかった。

 さらに不思議な魅力が加わったという。

 何かこれまで普通の女子が白い衣装を着て歌って踊る感じだったが洗練されたという。


「いやー、しかし良さをわかってくれるゆっきーみたいな仲間がいて嬉しいなあ」

 

 有名になってしまうと古参ファンとしてはそれはそれで悲しい、と岡本さんは嘆くいう。

 地元アイドルながら、あちこちに行くようになって地元でみる機会も減るのではないか、という。

 次の動画はインタビューだった。


「人気急上昇のアイドルグループ」のテロップと一緒に活動の紹介。

 それからコメント。


ーわたしたちは、本当はメンバー4人なんですー

ーいろいろあってここに一緒にいないけどー

ー今回の新曲も、その子がいるんですー


 最後に「ゆきっち」「またね」「いつも一緒だよ」と画面に向かって小さく手を振っていた。


「……」

「どうしたの? ゆっきー」

「いや、別に…」


 岡本さんとのやりとりを交わしていたら横から夏美ちゃんが割って入ってきた。


「あ、最近よく聞くよね。うちのお父さんもお仕事で今度一緒にやるっていってたよ」


 村の広告や動画、ポスターに起用されているのだとか。

 夏美ちゃんも、いつの間にか詳しくなっていた。

 情報が早いな。

 クラスで盛り上がって、そこかしこでスノーガールズ、あたしも知ってる。俺も実は……なんて声が聞こえてきた。

(凄い浸透してるな)

 確かに本格的なヒットの始まりの予感かもしれない。

 心の中であの三人を思い浮かべて祝福した。


 これで全てが終わったと思った。

 だけど違っていた。

 本当の始まりだった。

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― 新着の感想 ―
[一言] 押しきられてデビューしちゃうのかなぁ
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