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第百七話「再び雪ん娘対決」

 再び対峙する時が来てしまったようだな。

 どうせいつかまたくると思ってた。

 けれど単純な力の差では絶対に勝てない。氷見子でさえ到底及ばないのだから、今凍子とガチでやりあったら結果はみえている。

 あれから随分母さんから修行で鍛えてもらったが、それでも歴然とした差がある。

 成長すればするほど――。

 凍子こいつは雪ん娘の中でも相当の実力がある。

 認めざるを得ない。

 どうすればいい。

 凍子、あるいは雪ん娘、雪女の弱点を攻める。

 つまり自分がされたら駄目なことだ。

 そしてボクには、思い浮かんだ。


「ははは……」


 思わず自分で笑ってしまった。

 なんでこんなことを思いついてしまったのだろうか。

 ボクらしい。

 でも思いついてしまったからには仕方ない。

 今はこれしかない。


「あっちだ!」


 件の旧火口付近の小高い場所を指さす。

 もうもうと湯気が立っている天然の温泉地帯。


「三人とも行って!」

「え? でも……」


 示した先は行く手はもうもうと立ち上る湯気だ。

 なだらかな斜面にそってお湯が湧き出ていている。

 だが、その先は急な斜面。ほぼ崖でそれ以上は行けなくなっている。

 三人を逃してボクが一番後ろで凍子たちを牽制する。


「逃げても無駄よ」


 もちろん凍子たちも追いかけてくる。


「さあ早く!」


 奇襲作戦も、買収作戦も通じない。

 能力だって、まだまだ未熟。

 小屋(あの時)のような一発逆転は狙うべきではない。

 あんなラッキーパンチのような奇跡は起こらない。

 もちろん、すぐに追いつかれた。

 逃げて100メートルも無いうちにまた止まった。


「あなた……何考えてるの」

 

「どうせ無駄な足掻きさ」

「もうあきらめて」


 あいつらには、どうみても無駄な行為にしかみえない。

 背後にもうもうと湯気が立っている。

 背水の陣。 

 あの街はずれに一人住むおばあちゃんから聞いた、温泉鉱脈の場所だ。

 そういえば、母さんもここで時々温泉を楽しんだとか。雪女なのに。


「へへ……」


 余裕の笑みを見せる。

 凍子が目を細めた。

 警戒は解いていない。

 少し離れているのは、以前のように接近されて取っ組み合いになるのを防ぐためだ。

 手をかざしつつ力をためる。

 母さんとの修行でようやく使えるようになった雪ん娘の力。

 祈るように見守っている3人。

 みなさん……

 むつみさん……


「無駄っていったでしょ」


 凍子も力をため始めた。やっぱりすごい力を感じる。

 同じ雪ん娘である、同質の存在のボクだからわかる。凍子あいつは特に能力が高い。

 ボクなんて本当に目ではない。

 でも良かった。


 少し後ずさりする。

 勢いに怯んだそぶりをみせる。

 凍子はそれにつられて、こちらに一歩一歩にじり寄ってくる。

 間合いを詰めすぎず、距離を離しすぎないように。

 さすが前回の経験から学んでいる。

 確実に仕留める気だ。


 そして……ついにもう後ずさりできないところまできた。 


 地面に手を向ける。 

 地面は斜面。積もりに積もった雪。さらにその真下には湖のように温泉をたたえた岩場。


「あ、あなた、何を……!?」


 気がついた。さすがに青ざめた。


「この、やめなさい!」


 慌ててその場を離れようとしたが遅い。

 足下に冷気の衝撃を放つ。

 ずしん、と衝撃の後に、積もりに積もった雪がごごご、と地響きを立て始めた。

 そして新雪でまだしっかり固まっていない。滑り落ちやすくなっている。

 ぎしぎしっと音を立てて。

 雪面がひび割れを起こし、粉々に砕け斜面を滑り落ちる。

 小さな雪崩が起きた。

 よし、三人は大丈夫だ。

 どうっと音を立ってて、一気に足下の雪が崩れる。同時に重力感がなくなって体がふわっと浮かぶ感覚に一瞬襲われた。

 一瞬だけ走馬灯のようなものが見えた。

 遠い昔の記憶。

 父さんと二人で店を切り盛りした。寂しかったけど夏美ちゃんと智則。

 雪耶の記憶も見えた。突然女子になってしまった日の朝と母さんとの再会。

 修行。大学生たちを助けた記憶。

 その直後にざぶん、という音と体が叩きつけられる衝撃が走った。

前回の更新から季節が変わってしまいました。でも少しずつでもやってはいます。エタってはいませんのでよろしくお願いします。

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