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From Dystopia  作者: 結佐
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【第一章・ユートピアにて】第六話(途中)

 時は戻り、倉庫前にて。


「えっと、それで…みなさんもあの、呼ばれた方…なんですよね?」


 ダイアがそう訊ねた。

 このとき、既にダイア以外の三名は行動を開始していた。それは、すなわち、人間観察。ここにいる人間の意図、意味、そして目的は同じだ。しかし、どんな人間が一緒に過去改変という偉業に挑むのかは知っておかなければならない。


 そう、安芸は目を光らせ、他の三人が何か武器を隠し持っていないかどうかを鋭く見極める。


「そうだよ。仕事受けにね。ついでに前金尽きたからもうちょいせびるわ。」


 と、飄々と返すこの男、アルジュナ。このパーカーの男のポケットには、クリスタライザーが入っている。そして安芸はといえば、それを瞬時に見抜いた。


「ああ、仕事として受けたのですか。自分もそうすればよかったかもしれません。」


 と、同時に都葵はそう答える。この男もまた、周囲をすばやく観察していた。どうやら、男なのか女なのか、一目では判断がつきづらい。


「え、じゃあボランティアなのかあんた。やべえな。」


 アルジュナは自分が観察を受けていることなど露知らず、「こいつら俺よりイケてねえか…?死ねばいいのに。」などと思いながらそう言った。

 そうこうしている内に、すでにダイアは扉の近くへと歩み寄っているということは、アルジュナと安芸には気づけるはずもない。

 が、都葵はダイアのことも見ていた。都葵は、ダイアが中性的な見た目をしているが、男だということを見破った。

 そして突如として始まった観察合戦のさなか、さらに安芸が仕掛けた。


「あなた…銃を所持していますね?」


 「あ、俺?」と、指されたアルジュナが言う。

 そして、「あるよ。」と言いながら、ポケットからシュッ!と取り出してみせる。アルジュナの脳内では、「カッコイイ俺!」というイメージとともに、輝くようなエフェクトが見えていた。


 「たたたたたいほです!!!」と、安芸が言う。

 「くそかっこよくね?」と、あっけらかんと言い放つアルジュナに対し、(あったまおかしいんじゃねェかこいつ!!!)と思わざるを得ない安芸。


「そんなことないです!没収しますよ‼!」

「はぁ?これはあれだよ、変な人にもらったんだよ。お医者さんみたいなやつ。」

「全く言い訳になってません!!」


 と、さすがに収拾がつかなくなってきたので、「このような場所で大声で話していては危ないでしょう。せめて中に入ってから相談しては?」と都葵が諌めた。

 「あいつが全部悪いんだよ。」と、アルジュナは悪びれもせずに言うが、その表情は読めない。

 ダイアといえば、(なにやってるんだろうあの人たち)と、不思議そうにその場で立ち尽くして話している彼らを見て思った。

 都葵は諌めながらもその扉へと歩み寄っていき、ダイアとともに中へと入っていく。

 二人を迎えたのは、少し開けた倉庫の中心に鎮座する、今まで見たこともない装置。それは玉座のようにも見えたし、そこに座り機械をいじっているドクター・ブラウンの姿はさながら時を統べる神のようにも思えた。

 倉庫の中には資料が机いっぱいに広がっており、さまざまなコードがあたりに散乱している。しかし、ドクターブラウンが座る機械には、一本のコードすら繋がれていない。


「お、いいね。いこいこ。」

「いーーや——です!!こんな怖い人と狭いところなんて嫌です!!!」

「ほらこいよこいよ。」

「やだーーーー!触んないで!うったえますよおおおお!!」


 と、中に入ろうとするアルジュナに抵抗する安芸であったが、アルジュナの力は強く、そのまま中へと引きずり込まれていく。

 そして、中の様子を見て、二人は一瞬の沈黙を発した。



「やぁ。来てくれたんだね。」


 と、ドクター・ブラウンは四人を見据えてそう口を開く。


「これが、タイムマシンだよ。」


 「へぇ…。」と、ダイアはその言葉によって、さらに視線を装置へと注目させる。これで過去に、未来に行けるのか…。しかし、どうにも外野がうるさいな。と、ダイアは内心で吐き捨てる。

 一度目を奪われていた都葵は、安芸の姿を見る。安芸は中性的な見た目を利用し、女性に間違われるような振る舞いをしているのだと、看破した。

 遅れて入ってきたアルジュナはドクター・ブラウンの姿を見るや否や、「お、いたいた依頼人さん。もうちょい前金出ない?」とのたまう。

 引きずられている構図の安芸は、こいつ厚かましい野郎だな。と内心思わざるを得ない。

 この男も前金といっているのだから、自分と同じく多額の金額をもらっているのに間違いはないのだが…。


 「結構きれいなんですね…。」と、装置を見てダイアが呟く。

 その横でドクター・ブラウンは「前金は…そうだね、じゃあ、はい。」とさして考えた様子もなく金の入った袋をアルジュナへと差し出しているところだ。

 「へへ、どもども。」と、アルジュナはドクター・ブラウンが差し出した袋を受け取る。重量はなかなかであり、この男が金をまだ持っていたということにも驚く。

 そんな自由すぎる一幕を目にしながらも、都葵は倉庫の中を見回している。

 まるで未来博物館に集まった学生たちのような勢いで倉庫内を見て回る一行。アルジュナは機械に近寄りほー、ほーと梟のようにいちいち唸りながら眺めていた。

 そんなアルジュナを横目に、都葵は「まだ準備中ですか?」とドクターブラウンに尋ねる。


「ううん、今は君たちを転送物に設定しているところだよ。」


 と、そういうドクター・ブラウンはタイムマシンの唯一の席に座り、カタカタとタイムマシンの唯一いじれそうなキーを操作していた。その姿は堂に入っており、なるほど彼は科学者だったか、と、その姿を見れば納得することだろう。

 「あー、あれか。タイムマシンってやつか。」と、アルジュナが独り言をつぶやいている横では、安芸が気になったことがあるらしく、ドクター・ブラウンへと語りかけていた。


「ええっと…結局その…その転送される時代は体に無害なんでしょうか。」

「荒廃する前だからね。体に影響はない。むしろ影響は無いと思う。」


 カタカタ、と打刻音を響かせながらも、目と腕は機械に集中しつつ、耳と口で安芸の質問へと答えるドクター・ブラウンはなかなかに器用だ。

 答えが得られた安芸は「成るほど…。」と呟きながらそこらの机に散らばっていた資料に目を通す。それは都葵がドクター・ブラウンに見せられた資料であり、長々と文章が綴られている難しそうなものだが、一応安芸も学がないわけではない。内容をそれとなく噛み砕きながら読んでいた。


 「きれいな世界でしょ、害なくて当然じゃないかなー…。」と、ダイアは安芸の質問に返すように、辺りを調べつつ言う。

 アルジュナはもらった金袋の中身を数えながら、硬貨を指で弾いて遊んでいる。それを尻目にカタカタと打刻していたドクター・ブラウンは設定とやらを終えたようであり、顔を上げるとタイムマシンの座席から降りて四人に向き直る。


「さて、いいかな…。」

「あ、そろそろか。ドクターさんライター持ってない?むしろ俺にくれない?」


 そう、口を開いた矢先、アルジュナが尋ねる。


「ライターか。もってないなぁ…」

「そっか。」


 と、アルジュナは残念そうなそぶりも見せず、そう答える。ドクター・ブラウンは内心「自由な人だなぁ…。」と呟くと、資料を見ている安芸に気がついた。


「僕たちが行く時代の基本的な情報を…あれ、君何を読んでいるんだい?」

「あっ、その、難しくて分かんなかったです…。」


 若干しどろもどろになりながら、まずかったかな、と思い安芸はそう答え、「あの…あの装置って平気なんでしょうか?タイムパラドックスとか私そういうの聞いたことあります。」と質問した。

 その様子を見ていた都葵はドクター・ブラウンに代わり、聞いたことを伝えようとしたようであり、「パラドックス・キャンセラーというものが搭載されているらしいですよ。」と、腕を組みながらそう溢した。


「自分の先祖を殺すか、人類が消滅しない限り、我々が死ぬことはないそうです。でしたよね?」

「それって現代の技術で作れるものなんですか…?」

「あぁ、そうだよ。それと…勝手に読んじゃだめだよ…とはいっても、これはタイムパラドックスの内容についてだけどね。書かれたのはだいぶ前らしい。」


 そう諌めるドクターに対し、安芸は「すみません…。」と、しょんぼりした所作で答えるが、内心は「ぶちまけてる方がわりーーーんだよっ!」と思わざるを得ない。


「で、だ。これが2112年の情報だよ。」


 と、ドクターは、そのぶちまけられている書類の中から紙を一枚選び出し、四人に渡した。

 その紙には旧時代の基本的な情報が書き記されており、



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