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短編

〇〇〇より気持ちいい!

作者: NOMAR

 世の中にはいろいろな性癖がある。変態とも呼ばれたりする。マルキド=サドやマゾッホの人名に纏わるものや、同種族では無い、犬や馬や山羊を対象にするもの。服飾倒錯、死体愛好、数え上げればキリが無い。


 もともとの性質なのか、幼少期にうけたトラウマなのか。変わった性癖を持つ人達がいる。年をとってから青春時代に満たされなかった思いを取り返そうと、中年になってから発症する人もいる。


 誰にも迷惑をかけずに同行の士と出会い、こっそりと楽しんでいるならば、問題は無いのだろうが、中には己の異常さに苦悩する人もいる。


 日々のストレス解消に、見知らぬ他人に全裸を見せて捕まる人もいたりする、それが現代。


 だけど、なぁ。それをカミングアウトされて相談されても、俺にどうしろって言うのよ?

「ねー、どうしたらいいと思う?」


 今、俺の部屋に女がいる。従姉妹なんだが。誰が見ても美人というだろう。雑誌のモデルとか、週刊誌のグラビアと言っても通じるだろう。この見た目から、子供が3人いて、2回離婚しているということを信じる人のほうが少ない。

 いや、昨日、離婚届を出して俺の部屋に転がりこんできたから、バツ3か。子供は旦那の実家に置いてきたから身軽なもんだ。

 これまでの子供も、親権は旦那側だ。


 結婚する。子供ができる。離婚する。を、3回繰り返してきた訳だ。もう、コイツの結婚式に顔を出したくない。

 3回目の離婚のあとで、こいつは両親――旦那の方じゃなくて本人の――と、口ゲンカして、実家を出て俺のアパートに転がりこんできた訳だ。


 結婚しないで独身生活の俺には、結婚したあとの夫婦生活の苦労とか、相手の家族との人間関係の悩みとか、わからんが。

 この従姉妹の場合は、問題が違う。その問題を聞かされて、俺は返事に困っている。


「もう1度、初めから整理していこうか。まずは、3回とも恋愛結婚だよな?」

「そうだよ、つき合って、プロポーズされて結婚」

「3回とも、相手がお前に惚れてて、お前も相手のことが好きなんだよな?」

「そう、結婚するときは、この人しかいないって思うもの」

 それがなんで離婚になる? その答えがイマイチ理解できない。


「相手のことが嫌いになるきっかけが?」

「だから、妊娠したとき」

「それで、なんで、旦那が嫌いになる?」

「それが、わかんない。お腹の赤ちゃんが愛しくなって、そのかわりに旦那が嫌いになるの。触られたくない、話したくない、顔も見たくないってなるの」


 イマイチ理解できない訂正。ぜんぜん理解できない。

 愛情のキャパシティが、1人分しか無いのか?

 男の恋愛はロマン、女の恋愛はリアル、とかいう説を思い出したな。


「妊娠すると、愛情がお腹の子供に向かって、かわりに旦那が嫌いになるんだな?」

「そういうことに、なるのかな? お腹が大きくなるほどに、旦那のことが嫌いになっていくのよ。なんでこの人と結婚したんだろうって思う」

 男の俺には、解らない心理なのか。


「それで、旦那と喧嘩して離婚になるんだな。子供はどうなんだ? 毎回、旦那の家に預けてきてるんだが」

「それがね、子供を愛しいって思うのも、産まれるまでなの。産まれた赤ちゃんを見ると、なんか、可愛くないなって思うの」

「それで、旦那の実家に任せるわけだ」

「んー、なんだろうね。赤ちゃんって夜泣きはするし、うるさいし、手間がかかるし、おっぱい飲ませてるときも、なんか、気持ち悪いし。マンションの5階に住んでたけど、あまりにも赤ちゃんがぎゃあぎゃあうるさくて、思わずベランダから外に捨てそうになって、『あ、私、この子そだてるの無理だ』ってなるの」

 この女、あぶねぇ。いや、母親って多かれ少なかれ、そう思うものなのだろうか? 男で妊娠も出産も経験の無い俺にはわからん。


「そんな私が赤ちゃんのそばにいる方が、怖いじゃない。無事に育ってほしいから、離れたいの」

 カッコウの托卵かよ。


「なんで、旦那のことも、子供のことも、愛せなくなっちゃうのかな? 好きで結婚したはずなのに。赤ちゃんも、産まれるまでは、愛しく思うのに。なんでだろう?」

「いや、俺に聞かれても、答えようがない。お前の親とか、女友達、出産経験のある女の友人に相談したか?」

「できるわけないじゃない。こんなこと話したら、私が頭おかしいって思われるもの」

「俺にはどう思われてもいいわけだ」

「そこはまぁ、腐れ縁だし」


 こういうのは、心理学とか精神分析の専門家に聞いたほうがいいんじゃないのか?

 えーと、旦那と子供を愛せない母親、ねぇ。堕胎を禁止されている宗教圏で、強姦されて妊娠した場合でも、堕胎は禁止。この場合、母親が自分の子を嫌い、里親に預けたりする。

 でも、この従姉妹とはケースが違うよなぁ。


 外国の銀行強盗が拳銃を乱射して、男の睾丸を貫通した弾丸が少女の子宮に命中して、処女懐胎した事件は、その後どうなったんだっけ。


 いかんいかん、思考が横道に逸れた。まずはこの従姉妹が、ちと変わった恋愛感情の持ち主である、ということだ。

「1度目の結婚から離婚で、どう感じた? どう考えた?」

「それは、まぁ。自分が母親としては、まともじゃないってこと。今度こそは、と願ってみても、3回とも変わりは無かった。私は、ずっとこうなのかな?」

「原因がわからんと、次にまた結婚しても同じ結果になるんじゃないか? お前って母親となんかあったりしない? 心理的な原因になるような事件とかあったか?」

「それが、ぜーんぜん思いつかない」


 だろうなぁ。こいつのこと、昔から知ってるけど、こいつの家族に問題とかあるようには見えない。腐れ縁というだけあって、小さい頃から家族ぐるみでつきあいはあるからな。


「いたたた」

「どうした?」

「おっぱいが張って痛い。乳しぼりしてもいい?」

「お前なぁ」

「飲んでみる?」

「いらねぇ」


 胸の張る痛みも想像の埒外だ。俺の視線なぞ気にもしないで、上着を脱いで胸に樹脂の容器をつけて絞り始める。


「手伝ってくれない? 揉んでくれればいいから」

「断る」

 この警戒心の無いところが、男を捕まえるんだろうか。単に俺を男扱いしてないだけか。


「お前が結婚して上手くいくには、相手の男が不妊症でないとダメかもしれんな」

「それはそれで、嫌だなー」

「なんでだ? 子供ができると旦那への愛情が無くなるんだろうが」

「でもねー」

「それに、子供ができても、お前、母親するの無理なんだろ? 子供欲しがってどうすんだ」


「それでもね、気持ちいいのよ」

「? なにが?」

「子供が産まれるのが」

「は?」


「出産の瞬間が、赤ちゃんが産道を通って産まれる瞬間が、すっごい気持ちいいの。ぶっちゃけ言うと、セックスの10倍気持ちいいのよ」

「はぁ」

「だからね、できれば何度も子供を産みたいの。でも自分で育てるのは無理だから、誰か代わりに育ててくれないかなぁ」


 これは、どうすればいいのだろうか。



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