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1. 僕はこうして秘密を知った

 転生した4歳児が色々な国を冒険する話です。タイトルの割りには肌色成分控えめです。4歳児なので……。出来るだけ毎日更新予定。お楽しみいただければと思います。


 誤字脱字はお知らせください。感想・評価お待ちしてます!

 本日はもう1話、更新します。明日も2話更新予定。

 目の前にはオッパイ!

 そこは、生まれ変わった俺の目の前に広がる桃源郷。


 さて、ここまでをダイジェストで振り返ってみよう。


 そう、30歳になった俺は生まれて初めて彼女というものが出来た。お相手は俺の課に配属になった新人のかわい子ちゃん。たまたま同郷で、しかも幼稚園が一緒だったという事から話が弾んだ。そんな偶然に運命を感じた俺は、すぐに恋に落ちたよ。ただ彼女の上司という立場もあって、数ヶ月間は部下として接していた。それでも、とうとう想いは募り、俺は思い切って仕事の後、食事に誘い告白をしたんだ。返事はオーケー。その日は一日中浮かれていたな。いや、本当に小躍りしていたよ。


 でも次の日、振られた。

 昨日は勢いに負けて頷いたけど、もう少し仲良くなってからにして欲しいと言われた。絶望だね。ただそれでも、『お友達から』という言葉に希望をもって、前を向いて生きようって思っていたんだ。彼女が道路の反対側で、部長と腕を組んで歩いているのを見るまでは。


 怒髪、天を突くじゃないけど、全ての髪の毛が逆立つような感覚を覚えた。スーパー地球人3くらいにはクラスチェンジしていたはず。髪の毛の色は黒いままだったけど。でも、昨日は本当に彼女いない歴30年にようやくピリオドを打った、これで田舎の両親も安心させられるって思っていたんだ。くそ! 俺が素人童貞だからか? 頭が少しハゲ始めているからか? 腹筋は割れているけど、胸毛と腹毛がボーボーだからか? 色々な感情が渦巻き、俺はまだこちらに気が付いていない二人を睨みつけた。


爆ぜろ!(ファイアボム)


 だが、素人童貞の俺には魔法が使えなかった。純血じゃないんだ。汚れちまったんだ。こんな事なら夜のお店に通うんじゃなかった。くそ! くそ! 俺は拳を握りしめ、とうとう道路を渡り出し、


「てめえらの血は何色だ!」


 確かにそう叫んだ。


 俺が前世で覚えているのはそこまで。あ、何となく俺の血がいっぱい出ていた気がする。うん、俺の血は赤かったよ。ヨカッタ。


 そして、話は戻る。


 オッパイ。

 気がつけば、目の前には大きなオッパイ。たわわなオッパイ。豊潤なオッパイ。そのオッパイに俺は無我夢中にむしゃぶりついていた。いやオッパイがあったからむしゃぶりついたんじゃないぞ。むしゃぶりついている最中だという事に俺は気がついたんだ。あれ? って勿論思ったさ。でも、口が勝手にモグモグと動く。俺の意思じゃ止められない。とても甘い蜜のような母乳が俺の喉を潤した。まさに至福の時間。


 こんな快感は俺の人生の中で初めてだ。暖かくて、安全で。まぁ、今になって思えば、初めて目が開いた瞬間に感じた幸せは、文字通り人生で初めての感覚だろうけど。


 お腹いっぱいになれば眠くなる。眠くなったら寝る。

 乳児時代の俺はずっとそんな感じだった。うっすらと生まれ変わったんだろうとは感じてはいたけど、この頃の事は、幸せだ、暖かい、守られているという薄ぼんやりとした感覚の記憶しか無い。


 乳児期の中で、強烈な記憶が一つだけあったな。


 1歳を過ぎようとした頃、もう飲んじゃダメって言われた。このオッパイの持ち主はわかっていない。母乳を飲む事だけが目的じゃ無いんだ。俺はオッパイに吸い付いていたいんだ! 死刑宣告かと思ったよ。その強烈な怒りを身体全身で表現すべく、俺は渾身の限り泣き喚いた。オッパイにしがみついた。俺のオッパイ。俺だけのオッパイ。そして無理矢理離されないよう乳首に生えかけの歯を立てた。


 その日はそれで諦めてくれたみたいだけど、次の日、オッパイを飲もうと乳首を咥えたら、そこにはカラシのようなものを塗られていた。苦渋の決断、血涙を流すような思いで、ようやく俺はオッパイを諦めた。その後も触らせてはもらってるけど……


 明確な自意識を持ったのは3歳くらいの事だったと思う。

 オッパイの持ち主は、生まれ変わった俺の母親だった。当たり前か……でも、3歳くらいの時に俺の中の知識としてある「母親」という言葉と、オッパイの持ち主が繋がったんだ。


 そう、こうして俺は始めて「俺」というものを意識した。


 それからの俺は、自分の住む家の事とか、散歩で歩く周辺の事とか少しずつ学んだ。所詮3歳児、見える世界も狭く、非常に限られた情報しかなかった。


「ははうえ、あれは何ですか?」

「あれは、木ですよ」


 俺が最初にぶつかったのは言葉の問題。

 一つ一つ単語から文法から覚えるしかなかった。まぁ、幼児の脳みそは柔軟に出来ているのか、日本で英語を勉強するよりは簡単に吸収できるのには助けられたけどね。


 そうして3歳からの1年間、みっちり言葉を覚えた俺は、ついに秘めた俺の計画を母親に打ち明けた。


「ははうえ! シャルルは働きたいと思います!」

「シャルル、えらいわね。じゃあ、セリアと一緒に薪を納屋まで運んでくれる?」


 紹介が遅れたが、シャルルが生まれ変わった俺の名前。セリアはこの家のメイドさんだ。一人称を名前で呼ぶのは4歳児という事で勘弁して欲しい。脳内ではおっさんだという自覚があるが、脳内にあるインターフェース部分で勝手に変換されてしまう。


 そう、生まれ変わったと説明したが、「俺」の部分と「シャルル」の部分には若干の差異がある。「俺」をベースとした考え方、知識が脳内の「シャルル」を司る部分を通って外界と繋がっているような感じなのだ。なので、より本能に近い部分は俺を通さずに「シャルル」が処理をしてしまう。どんな人間にも表の顔と裏の顔がある。裏の部分が「俺」で表の部分が「シャルル」とでもいえばわかり易いか。


 シャルルインターフェースのせいもあって、母上は俺の言った「働く」という意味を勘違いしたらしい。俺は仕事がしたいんだ。お手伝いをしたい訳じゃない。


「ははうえ、違います! シャルルはお仕事がしたいんです!」

「そうね。シャルルは偉いね。じゃぁ、どんな仕事をしてみる?」

「はい! シャルルは、ぼうえきをしたいと思います!」


 俺の両親は、どうやらこの辺りの領主らしい。ちゃんと確認をした訳ではないが、滅多に顔を見せない父親に対して「領主様」と頭を下げていた人がいた。兄弟もいないみたいなので、俺は後継なんじゃないかと思っている。


 そして、この場所は電気もガスも水道すら無い場所なんだ。水はいつも使用人が井戸から汲んでいた。料理はカマドだったし、冬の暖をとるのも薪を使ったストーブだった。ここが日本じゃ無いって事は、母上や使用人が金髪青い目の白人だった事からは気がついていた。どっかの発展途上国なのかな……東欧のどっかだろうと推測はしていた。


 この状況に俺はピンときたね。

 俺が生まれ変わった理由を知ったよ。

 俺はこの場所を日本から持ってきた知識をもとに発展させる義務がある! そう! 内政チートだ。ここには無い新たな産業を生み出し、貿易で財を成す。



「ぼうえきって随分、難しい言葉を覚えたわね。意味はわかっているのかしら」

「奥様、まだ4歳ですし、意味は理解していないと思いますよ……」

「ははうえ! シャルルはぼうえきをわかっています! まずは輸出できるものを作るために、新しい産業を興したいと思います!」

「うーん、わかったわ。あの人の子供だものね。4歳でもそれくらいできるかもしれないわ。それじゃ、セリア、シャルルに付き合って頂戴。あ、ちょっとくらい経費がかかってもいいわよ」


「わかりました。それではシャルルぼっちゃま、セリアが秘書になりますので、何なりと申しつけください」

「わかった! セリア、よろしくね」


 こうして俺は4歳にしてメイド秘書を手に入れた。

 と言っても、セリアは14歳。金髪のスレンダーな女の子。でも早熟なのかオッパイは大きい。母上には負けるけどね。たまに抱っこしてくれる時があるので、密かにその大きさを堪能させてもらっている。


 さて、俺はセリアと二人でこの地を変えてやる! 

 玄関の扉を開け、屋敷を飛び出した……さぁ、生まれ変わった俺のサクセスストーリは、ここから始まる!


----- * ----- * ----- * -----


 バタン!


 俺は屋敷に駆け戻った。


「あら、シャルル、もう帰ってきたの?」

「は、は、ははうえ! オ、オニが……オニが歩いていました!」


 ちびるかと思った。俺はちびるかと思った……だが、シャルルはちびっている。だって身体のコントロールはシャルルの方が強いんだよ。俺は大人だから、ちびったりしない!


 屋敷を意気揚々と飛び出した俺とセリアだったが、屋敷の前の道を5分ほど歩いて小川に架かる橋を渡ろうとした時、川の向こうから二人の大柄な男が歩いてきた。その顔は俺が日本で子供もの頃に見たオニと一緒。さすがに赤や青と言った不健康そうな色はしていなかったが、2本の角と口から覗く鋭い牙。それを見て、速攻回れ右。俺はセリアを置いて逃げ出した。


「シャルルぼっちゃま? どうしました?」

「セ、セリア! オニ、オニがいたよね?」


 セリアが無事に帰ってきた。良かった。食べられたりはしなかったんだ。メイドよりは自分の命優先とはいえ、30歳のおっさんとしては若干の罪悪感があった。もし食べられても年に1回はお墓まいりに行こうと思うくらいには……


「奥様、修繕に来ましたー!」

「うーん」

「シャ、シャルル!?」

「ぼっちゃま?」


 そのセリアの後ろからさっきのオニが顔を出した。それを見て、シャルルは限界だったんだろう。意識がブラックアウトした。意識が途切れる瞬間、股間があったかくなった。あー、あれだ、限界だったのはシャルルであって、断じて俺じゃないからな。


----- * ----- * ----- * -----


「シャルル? もう大丈夫?」


 俺が気がついたのはベッドの上だった。寝巻きに着替えられ、下着も新しくなっていた。


「は、ははうえ……うわーん、シャルルは怖い夢を見ました! オニが、オニが……」

「シャルル? オニっていうのはオーガさん達の事かな?」

「お、オーガですか?」

「そう、ツノと鋭い牙を持つオーガ族」

「え? オニは夢じゃなかったのですか?」

「夢じゃないわよ。オーガさん達には納屋の屋根が壊れたので、修理をお願いしていたの」


 ん? ん? どういう事だ? 俺は東欧のどっかの国に生まれ変わったんじゃないのか?


「ははうえ……ニッポンって知ってます?」

「にっぽん? 何かしら?」

「アメリカって知ってます? ユナイテッド・ステイツ・オブ・アメリカです」

「知らないわ。なーに? 夢の話?」

「シャルルのお家がある国は何て名前なのでしょうか?」

「ここはダビド王国という名前よ? シャルル、国って解るの?」

「わかりました。シャルルはもう一回、夢を見てきます」

「え、え? シャルル? まぁ、もう寝ちゃったの? 寝ぼけたのかしら……」


 俺はぎゅっと目を閉じ、寝たふりをした。

 考えなければならない事がある。


 日本はともかく、アメリカを知らないって事があるのだろうか……現代として考えれば、俺がこれまで接した両親や使用人のレベルから見ても、考えにくい。たとえ、電気も無いような地であっても、それなりの文明レベルがあるように見える。


 それに、ダビド王国というのは聞いた事が無い。もちろん、俺が知らないだけって事もあるんだが……そもそも、そう、認めてしまおう。地球上のどこを探してもツノと牙を持つオーガ族という民族は存在しない。生まれてこのかた、屋敷の周辺くらいの世界でしか生きてきていないため、知らなかったが、どうやらこの地には、俺の知っている人類以外の存在がいるらしい。


「そうか、ここは違う世界なんだ……」


 薄眼を開け、周りに誰もいない事を確認すると、俺はそう呟いた。そう思うと、胸の奥がツンと熱くなり、何かが込み上げて来た。


「う、う、うえーん、は、ははうえー、ははうえー」


 シャルルの心が俺のコントロールを離れ、母上の名前を連呼する。おいおい、俺、おっさんなんだけどなぁ……そう思うんだが、こうなってしまうと制御不能だ。


「シャルル? どうしたの? 怖い夢を見たの?」


 母上が入ってきて、俺を抱きしめてくれた。俺は母上のオッパイに顔を埋める。もう出るはずもない母乳の匂いをなぜか感じて、心の底から安心感が湧き上がってくるのが解る。顔を擦り付けるようにして俺は母上に甘えた。


「もう、シャルル! オッパイはダメでしょ。もうお兄さんなんだから」

「は、ははうえ……ぐすん……ごべんなざい……シャルルは怖くて……怖くて……」


 さらに力を込めて俺は母上に抱きついた。


「もう仕方ないわね。もう少ししたらお父様も帰ってくるし、今日は一緒に寝ましょうか?」

「はい!」


 父上が帰ってくると、母上が取られてしまうが、今日は渡さない! このオッパイは俺のものだ!


----- * ----- * ----- * -----


 母上を独占できたので、俺は満足してゆっくり眠りについたんだが、夜中にお腹が空いて目が覚めた。


「あれ、ははうえ?」


 一緒に眠っていたはずの母上が横にはいなかった。

 ランプの明かりが灯る廊下を歩くと父上の書斎から話声が聞こえた。


「ちちうえ? ははうえ?」


 親の子作り中だったらどうしよう! おっさんな俺はそう思ったが、不安が強かったシャルルの心が声を出してしまった。


「あら、シャルル? 起きちゃったの? こっちにいらっしゃい」

「はい……あ、ちちうえ、おかえりなさい」

「シャルルか、少しは大きくなったかな?」


 父上が俺を抱き上げてくれた。

 俺は父親似なのか、母上や使用人とは違い父と同じ黒眼黒髪だった。


「ふむ……オーガを見てオニが出たと騒いだそうだな」

「はい、シャルルはびっくりしました」

「ニッポンとかアメリカとか、聞き馴れぬ国の名前を言ったとか?」


 ぎくっ。なんかまずかったのか? 誤魔化さないと……


「ちちうえ、シャルルは怖い夢を見ました」

「そうか……」


 父上は俺を抱き下ろし、母上にこう言った。


「マリア、シャルルと男同士の話をしたい。少し、席を外してくれるか」

「あらあら、あなた、どんな話をするのかしら?」


 母上はそう言いながら微笑むと、書斎を出て行った。


「シャルル、お父様との話が終わったら、ベッドに戻りなさいね」

「はい、ははうえ」


 俺は父上からどんな話をされるのかドキドキしながら母上を見送った。


「さて、シャルル」


 父上は俺の方を見ながら、こう言った。


「消費税は今、何%になった?」


 僕はこうして父の秘密を知った。

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