表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
バードバトル  作者: oga
5/5

バードエンド

「いけるっ」

俺はそう思い、再度ジャンプした

相手ものってくる

そして、また空中でバサバサバサっとやりあう

しかし、

「うわっ」

と俺はそのまま後ろにはじき返されてしまった

一発一発のジャブの重さが相手のほうが上だったためだ

俺は思い出した

テリトリーを守るときに発揮されるハトの底力を

よく見ると、キジバトは血走った眼でこちらを見ていた

ダメだ、やられる

身体能力が互角でも、ここまで殺気を込められたらひるむ

俺がこの調子じゃ他のハトたちは……

だが、他を心配している暇など一切なかった

ヒョコリ、ヒョコリ、とキジバトは体を寄せてくる

応じるしかないのか

だが、確実にやられるのは目に見えているではないか

「くっそ」

俺は一旦ベランダから離脱した

作戦失敗だ

俺はそう思い、遠くの止まり木まで非難した


結果は全敗だった

近くの公園でそれぞれのハトたちはただ無言でたたずんでいた

中には激しい攻撃を浴び、精神をやられてしまったハトもいた

「クルッポー、クルッポー」

と言いながらひたすら円を描いている

「あいつは、もう駄目だな」

一羽のハトが言った

長い沈黙

周りを見渡したが、みな満身創痍でとても戦える状態ではないと分かった

「やめにしましょう」

とうとう俺は言った

「このまま続けても、万に一つも勝ち目なんてありませんよ それどころか、死んでしまうものも出てくるかもしれない」

みな、黙り込む

「俺たちは、負けるわけにはいかないんだ」

隊長のハトが言った

「路頭に迷うものを出すわけにはいかないんだ、俺たちは家族なんだ」

その言葉に、俺は何も言えなくなってしまった


翌日、集まったハトはたったの5羽

「負けに行くようなもんだ」

俺は心の中でそう思った

すると、向こう側から一羽のキジバトがやってくるではないか

みな構えるが、

「無駄な争いはやめろ」

と相手のキジバトが言ってきた

おそらく、相手のリーダーにあたるやつだろう

体つきも相当いい

かなり鍛えこんでいると思われる

「俺たちは、引けない」

隊長のハトが言う

「お前たちを殺すのは忍びない 同じ種類の生き物だからな そこで、提案だ

黙って街から出て行けと言っても引かないだろうと思い、俺とお前らのリーダーで一騎打ちを申し込むことにした」

予期せぬ提案だった

ただやりあっても絶対勝てないのに、ここでもし勝てればマンション移住権を手にできるのだ

しかし、俺は気づいてしまった

隊長のハトが負傷していることに

まずい、と思った

もしここで隊長がやられでもしたら、街を出て行ったあいつらは統率を失ってバラバラになってしまう

だが、

「受けよう、願ってもない提案だ」

と隊長は前に出た

「よし、いい度胸だ」

相手のキジバトが褒め、2羽がそこから飛び立とうとする

「まて!」

俺は思わず声を出してしまった

「隊長、俺にやらせてくれ」

ガラでもないが、あのハトたちのことを考えたら、こうするしかないと思った

俺は単独行動を好むが、たった1日あいつらと過ごしただけで、ファミリーっていいな、なんて思ってしまったのだ

俺の体に流れるハトの血を恨んだが、こんな散り際も悪くはないな

なんて思った


「……わかった」

隊長は素直に納得してくれた

おそらく、俺に任せたほうが分があると思ったんだろう

「よし、じゃあ、いくぜっ」

俺は飛び立った

相手も追ってくる


ギュウンと飛翔する

しかし、驚くことに、それよりも先に相手のほうが天井にたどり着いた

体の筋肉が全く違うのだ

加えてキレのある動き

「追って来い!」

俺はそう言い、思いっきり滑空した

「競争なら、負けはしない」

そう相手は言い、グウウンと目にもとまらぬ速さで追ってくる

俺はまともにやりあっても勝てないと知り、ある一つの方法に頼ることにした

限界ギリギリ制御の効かないほどのスピードで滑空する

グウウウン

そして、思いっきり地面に近づく

相手もまだか?まだ上昇しないのか?と焦りを見せる

「このまま突っ込んで死ぬ気か?」

2羽のハトは目にも止まらぬ速さで地面に近づき、あと10メーター、9、8、7、6、と近づいていく

「くっ、馬鹿が」

と相手が上昇しようとした瞬間を俺はねらった

プッ

とフンを発射した

そのフンが相手の顔に命中する

「ぐ、ぐああああああっ」

俺はあと1メーターのところで体をおこし、離脱した

相手のキジバトはその勢いのまま、地面にたたきつけられた


作戦は成功した

キジバトは無残な姿で地面に横たわったまま動かなくなってしまった

俺は止まり木に戻って報告した

「勝ちました」

隊長のハトは、

「よくやった、よくやったぞ!」

と喜び、涙まで見せた

相手には悪いことをしたが、これでドバトたちは住まいを確保され、路頭に迷うことがなくなるだろう


公園で拍手喝さいを浴びた

「すごいよ! ほんとすごい!」

「わしの見込んだとおりじゃったな」

なんて声がし、俺は照れ臭くなった

隊長がやってきて

「次期隊長は君にしたいと思う みなのもの、どうだ?」

「賛成」

「サンセイ」

とみなでバサバサやっている

だが、

「悪い、そんなガラじゃねえんだ またな」

と言って俺は飛び立った

そんな面倒な役割はごめんだ


川に戻ってきた

俺の住まいはここしかない


終わり




おわり

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ