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シアワセ

作者: しずく

暗闇の中で白い雪が舞いおり、消えていく。

それはとても儚くて。

――私も消えてしまいたいと思う。


街の中はどこもかしこもピンク色で。

バレンタインデーに向けて準備している。



昔からそうだった。

家族仲も悪くないし、友だちもいて、

充分幸せなはずなのに、

心のどこかで自分は不幸だと思っている。

こんな世界はつまらないと思ってしまう。

自分の気持ちがよくわからなくて。

裸足のせいかコンクリートの冷たさが

直に伝わってきて、もういっそここから

飛び下りてしまえばいいんじゃないかなんて

考えてしまう。


「バカだなぁ、私。」


何が嫌なんだろう。何が辛いんだろう。

何で、こんなにも、消えてしまいんだろう――。


その時、荒々しく扉が開けられる音がした。


そこには高校に入ってから全く交流していなかった

私の幼馴染がいた。


「っお前、何やってんだよ!!!」


「...翔...くん。」


「こんな寒い日に屋上で裸足で何考えてんだよ!!!」


「何って...。天体観測?」


「んなわけねーだろ!!!

...嫌なことがあったんなら俺に話せよ!!!」


ああ、君には。きっと君にはわからない。

だって私にもわからないんだもの。


「大体、お前どうしちゃったんだよ!!!

明らかに俺をさけてるだろ!!!」


「だって翔くん人気ものじゃん。

イケメンだし、スポーツできるし。

ファンの子いーっぱいいるんだよ。

私、敵認定されたくないし〜。」


高校に入る前、

2人で笑いあってたときを思い出しながら

私はへたくそな笑顔をつくる。


...あの頃は自然に笑えてたのにな。


「っ!!意味わかんねぇよ!!!

俺たちは幼馴染だろっ」


「ちっちっち。こーれだから、翔くんは。

女の子の気持ち、わかってないんだから。」


「いいから帰るぞっ」



「っ!!!やめてっ!!!」


...やってしまった。反射的に手を払ってしまった。


「...どうしたんだよ。何があったんだ?」


私はただ首をふる。


「俺には言えないのかよ。くそっ

そんなに信用できないのかよ!!」


違うんだ。ただ...ただ本当に...


「わかんないの。自分のことが。」


「は?」


「本当にわからないの。

恵まれた環境で育って、家族には愛されて、

何にも不自由しない生活を送ってるのに...。

それなのに、それなのに、

――消えてしまいたいの。

そんな自分がすごく嫌で、気が付いたらいつも

ここにいるの。」


小さく呼吸をする。


「でも、でも私はここから飛び降りる

勇気なんてない臆病者で...。

またいつもの生活を消えたいってつまんないって

思いながら過ごすの。ずーーっと堂々巡り。

...ねぇ、軽蔑した?」


すると一瞬の間で私の目は何も見えなくなる。

はらはらと闇を舞う白い雪も、街の明かりも。


しばらくして、ようやく翔くんに

抱きしめられているのだと気がついた。


「...翔くん!?」


「消えたいとか言うなよ...。

俺はお前に今までずっと助けられてきたんだ。」


「そんなこと...」


「小さい頃俺はずっと人を避けてた。

だから友だちなんていなかった。

...でもお前は違った。

お前は馬鹿で無邪気なヤツだった。

俺が無視してもずっと俺の傍にいた。

...いつの間にか、お前がいることが

当たり前になってて正直焦った。

高校に入学してからお前は俺を避けるし。

こんなことするし...。」


「...ごめん。」


「なあ。そんなに消えたいんなら俺の

傍にいろよ。そんなこと考えられないくらい

大切にするからっ」


「へっ...えっ、もしかしてそれっ」


「...なんだよ」


「今の告白?」


「あーっ、くっそ」


顔を赤くさせながら、翔くんは頭を

ガシガシかく。


「そうだよっ 悪いかよっ」


...なんだろう、すごく胸がぽかぽかする。


「ふふふっ」


「なんだよ」


「べーつにぃー」


「...で、返事は...」


「えぇー聞こえなーい」


「返事はっ!!!」


「んー、まあ及第点かな。いいよ!」


「お前ってやつは...」


これでも結構嬉しいんだよ。

素直じゃないから、はっきり言えないけど。

君と一緒なら

つまんないと思ってたこの世界も色づいて、

生きてもいいかなあって思っちゃうんだ。


...なーんてね。


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