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もう見たくない、とかいってられないので、あたしも人垣をかき分けて窓から外を見た。
空は変わりなく青かった。
佳世ちゃんと見上げたロケット雲は、風に流されてぐにゃぐにゃとした線に変わっていた。
学校には大きな穴が空いていた。
ちょうど二年生用の玄関のすぐ横に、直径三メートルほどの縦長の穴が見える。
幸い火は上がっているように見えないが、廊下が外から丸見えになっている。
ここから見える範囲に人影は見えなかった。
「陽菜ちゃん、羊さんは?」
背後から心配そうに尋ねられた。
振り向くと、あたしのお隣さんである明美ちゃんが不安げに眉を八の字に寄せていた。
たぶん、あたしの隣に佳世ちゃんがいないのを不思議に思ったんだ。
明美ちゃんの顔を見て、あたしは泣きそうになった。
「佳世ちゃんは……学校に忘れ物を……」
震えた情けない声だった。
きっと顔にも、今の心情が表れていると思う。
「ええ、それ大変じゃない!
もしかして羊さん、今ので怪我したかも!」
明美ちゃんの叫び声に、数人の生徒が反応した。
「何?」
「どうしたの?」
みんな口々に尋ねながら集まってくる。
「羊さん、忘れ物を取りに学校に行ったって!」
明美ちゃんは、集まった全員に聞こえるように大声を出した。
「嘘!?」
「うわぁ、運悪ぅ……」
「羊さん、大丈夫かな?」
「死んじゃったりしてないよね?」
「死」、重く暗い現実を思わせるキーワードに、あたしは思わずビクリと震えた。
「ちょっと!!
演技でもないこと言わない!」
明美ちゃんがそのキーワードを出した子を軽く抓った。
「痛いって!」
抓られた子が声を上げる。
「罰として、一緒に羊さん捜索隊の副隊長に任命!」
明美ちゃんは抓っていた右手を離し、彼女を指差した。
副隊長に任命されたその子は、ムッとした顔で明美ちゃんを睨んだ。
「罰にしなくても手伝うし……つーか、それ罰にしたら、羊に失礼でしょ!」
「ぐっ……!
痛いとこ突くなあ……」
明美ちゃんは指を下ろし、集まった子たちを見回した。
「他に手伝ってくれる人は?」
五人が手を挙げてくれた。
集まってくれた中の半数。
危険性を鑑みるに、この人数が手を挙げたことは結構すごいと思う。
「おっ、みんなお人好しだね〜」
手を挙げた五人の顔を見て、明美ちゃんは明るい声で言った。
「じゃあ、このメンバーで行こう!」