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未来の男の娘へ  作者: 回転金魚
あの子と逸れた
5/17

09/02[羊 佳世]校舎 15:43- 1

 校舎を入ったわたしは、二階への階段を駆け上がった。


 別に急ぐわけではないけれど、踊り場にある鏡には怖い逸話がある。

 怖いから、なるたけ目をやらないように一気に上った。



 廊下を歩きながら息を整える。

 今日は部活もすべてないみたいだ。

 学校はしんと静まり返っている。


 先生たちも、もう帰ったの?



 二年生の教室は二階にある。

 一年生のときは三階まで登ってたから、二年生になって少し楽になったなあ。


 階段から数えて、いち、にい。


 この二番目に階段に近い教室が、二年二組。

 毎朝通って、勉強したりお昼を食べたりする教室。


 まだ太陽が高く出ているので、電気をつけなくても教室の中は良く見えた。

 暗い緑色の黒板は毎日、日直さんが拭き掃除してるけどチョークの粉が薄い靄のように白く残っている。


 教室後方の壁には、みんなの鞄を入れるための棚が均等な四角を保っている。


 置き勉してるらしく、机の中に教科書やノートが入れっぱなしの机がパラパラある。



 わたしの机は窓際の、黒板から見て三番目にある。


 日当たりが良くてぽかぽかする、良い席。

 もうすぐ席替えがあるから、この席ともお別れだと思うと少しさみしい。



 入り口から自分の席へ歩く。


 机へ指先が触れる寸前で、床が、というか、教室が激しく揺れた。


 床が近づいてくる。

「えっ!?」


 一瞬、床が斜めになったのかと錯覚したけれど、それは違った。


 激しい揺れにわたしが立っていられなくなっただけだ。

 受身も取れずに、床で側頭部を打った。


 下の階から響く、低く大きな爆発音がわたしの耳を支配する。


 自分の声すらよく聞こえないほど大きな音だった。


 一階で何かが爆発した?


「痛い!」

 机と椅子が二セット、わたしの上に倒れてきた。


 重い!

 運悪く、めいっぱい置き勉している机が、わたしの上へ乗ったみたいだ。



 寮は、寮は大丈夫?

 陽菜ちゃんは?


 なんとか身体を起こそうとするが、机が重くて中々起きれない。


 なんとか抜け出さなきゃ!

 陽菜ちゃんがもっと大変な状況だったらと思うと、胸がぎゅっと苦しくなった。


 早く、早くしないと!



 もがくわたしにダメ押しにもう一脚椅子が倒れて、金属の椅子の足が頭を強く打ち付けた。


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