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「ああああ〜!!」
思わず大声を出してしまう。
「佳世ちゃん!?」
陽菜ちゃんが驚いてこちらを見るのも構わずに、スクールバッグの中を探る。
やっぱりない。
「陽菜ちゃん、わたし、ケータイ忘れてきちゃった!」
「どこに忘れたの?
教室?」
ううん、と小さく唸りながら今日のことを思い起こす。
「机の中に入れたような気がする」
「じゃあ、早く取りに行こうよ」
陽菜ちゃんが踵を返して、校舎へ戻ろうとするのを、わたしは制止した。
「陽菜ちゃんは先に寮に帰ってていいよ。
もしかしたら、机の中にないかもしれないし。
それに、わたしに付き合ってたらドラマの再放送に間に合わなくなっちゃうよ?」
陽菜ちゃんは最近、夕方から放送される十年くらい前のドラマに夢中で毎日楽しみにしている。
わたしのドジのせいで陽菜ちゃんの楽しみを邪魔するのは嫌だ。
陽菜ちゃんは、おろおろと瞳を校舎とわたしとに巡らせた。
十秒ほどそうすると、決心がついたようでこくりと頷いた。
「わかった。
あたし、先に帰る。
佳世ちゃんも早く帰ってきてね!」
陽菜ちゃんがわたしに手を振りながら寮へ向かう。
「うん! またあとでね!」
わたしも大きく手を振ってから、陽菜ちゃんの向かうのと反対方向の、校舎へ向けて歩き出した。