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るうちゃんが火星で何をするか、想像してみる。
運動神経が良いから、何かスポーツでもするのかもしれない。
今の火星の季節はなんだっけ?
環境整備機が作り出す季節は、地球のそれと変わらないのかな。
日本と同じ秋なら、梨狩りとかに行くのかもしれない。
って、それじゃあ、地球にいるのと変わらないか。
冬だったらすごく楽しいかも。
日本はまだまだ暑いから、そうだったら羨ましいなあ。
夏休み明けてもこんなに暑いなんて夏休みの意味がないよぉ。
……夏休み?
わたしは胸につっかえる物を感じて、陽菜ちゃんに問いかけた。
「ねえ、陽菜ちゃん。
るうちゃんはどうして、九月に旅行に行くことにしたのかな?
どうして夏休みに行かなかったんだろう」
陽菜ちゃんは一瞬、きょとんとした表情を見せた。
「そういえば、そうだね?
なんでわざわざ、学校がはじまる時期と被せたんだろう?」
「それに、どうしてわたしたちに直前まで何も言わなかったのかな」
「それも妙だったよね。
るうちゃんなら、お土産何が良い? とか、訊いてくれそうなのに……」
陽菜ちゃんは、スカートのポケットからケータイを取り出した。
「こんな素っ気ないメール一通だけで行っちゃうなんて……」
わたしもキュロットスカートのポケットへ手を伸ばす。
もしかしたら、るうちゃんからメールがきているかもしれない。
ポケットの中を指で探るが、ケータイは入っていなかった。