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身体を丸めてボロボロと泣き続けるあたしの上に影がさした。
誰かあたしの目の前に立っているらしい。
顔を上げてその姿を確認する。
影の主は小さな女の子。
いたずらっぽい笑みを浮かべてこちらを見下ろしている。
小学校一、二年生くらいかな?
あまり長くない髪を高い位置で束ねてツインテールにしている。
あたしに何か用があるのかな?
相手が話し出すのを待つ? それともあたしから何か言う?
迷っている間に、女の子が口を開いた。
「おねーちゃーん!
このしと泣いてるー!!」
「え!」
女の子の舌足らずな叫びに、教会中の視線が集まる。
恥ずかしい!
泣き顔を見られないように、また膝に顔をうずめる。
「本当?」
高く冷たい印象の声の主が、あたしに近づいてくる気配がした。
「大丈夫? どこか痛い?」
肩にあたたかな手がおかれる。
顔を上げると、さっきの女の子に似た女の子が見えた。
髪型は同じツインテールだが、隣の小さな女の子よりも長かった。
吊り目でちょっと気が強そうに見える。
「え……と……、ちょっと、胃腸の調子が……」
嘘をつくことにしたのは、このままおとなしくしていたのでは、せいぜいこの礼拝堂とトイレくらいにしか行けないと思ったからだ。
扉の数を見るに、礼拝堂とトイレ以外にも部屋があるはず。
急病人や怪我人を保護する部屋とか、告解室とか。
脱出経路は一つでも多く確保しておくに越したことはない。